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二百十九話目 続・文化祭2日目の日


5月14日の更新です。


本日も宜しくお願い致します。




《ありがとうございます。それでは此方の魔法薬(ポーション)は、そちらのお客様の物とさせて頂きます》


《パチパチパチパチパチパチ》


 拍手と共に勝利を勝ち取ったのは、意外にも冒険者風の男の人でした。



 勝ったのに泣きそうな顔の冒険者風の男性と、負けたはずなのに晴れやかな笑顔で相手に拍手を送っている貴族っぽい初老の男性の姿が印象的で、冒険者風の男性からはなんとも言えない悲哀さを醸し出していますね。


 最終的に金貨8枚と白銀貨6枚(86万円)をレア物とは言え使えばなくなるポーションに注ぎ込んだ彼の情熱に敬意を評し、彼の人生がこれから幸せになる事を願わんばかりです。


《それでは3品目!此方は――》


――――――


「白金貨1枚と金貨7枚!」


《ザワッ》


「マジかよ?」


「すげぇ…」


 今日1番のどよめきが会場全体に響き渡りました。


 そのどよめきを引き出したのは、さっき冒険者風の男性と争っていた貴族っぽい初老の男性です。


 ある程度の出品物の目録は会場に入る際にお配りしていましたが、彼は最初から此方が本命だった、ポーションは遊びだと言わんばかりにサクサク値段をつり上げていきます。


 値段をコールする時も、先程冒険者風の男性と張り合っていた時の様な笑顔ではなく無表情で進めていきましたし、絶対あれは遊びだったんだと誰もが思えたはずです。


《他にいらっしゃいませんか?………いらっしゃいませんね?それでは此方の【真・魔導袋EX】は、あちらのお客様の物とさせて頂きます!!》


《カンカンッ!》


《わぁ!》


 遂に最後まで争っていた商人風の男性が手を下ろし、他に誰もコールする人がいなくなった事を確認したルマンドさんは木槌を叩いて競りの終了を告げました。


 すると、一際大きな歓声があがり万雷の拍手が会場全体を包み込み、目当ての品を競り落とした初老の男性はその歓声に応える様に軽く手を挙げて、どこか誇らしげな表情を浮かべています。


 オークションが始まって約1時間半が経ち、漸く折り返し地点まで来た所で今日の目玉商品その1として僕が出品した、【真・魔導袋EX】は白銀貨5枚(5万円)からスタートしました。


 いつも使っている魔導袋(大)が標準的なホルスタイン種の牛――こっちならピッカウかな?――が3~4頭くらい。しかも死んでいなければ入りません。


 因みにこれは、改良型でこの程度。以前は馬1頭か、牛1頭しか入りませんでした。



 それに対して真・魔導袋EXは同じモノが50頭。しかも生きた状態のまま運べ、材木なら2~30m高さの木がそのままで200本は入るかな?


 うん。生き物でなければ意外と入りますね。


 これは最初、【僕の箱庭】をもう少し簡単に作れないかな~?と思って考えた品だったんですが、内容量はともかくショルダーバックタイプにした事で従来の巾着袋タイプよりも持ち運びがしやすくなりました。


 それと、流石に出品したこれは人や生きた魔物が入れない様にブロックをかけてありますから、兵の輸送や、不意打ちでの魔物の奇襲を避けられる仕様にしてあります。


 人が入る様にも作れますが、正しく使ってくれる人達ばかりじゃありませんからね?


 本当は野宿する時用の簡易な部屋を作りたかったんですが、人が中に入れる様にしたいと伝えると、ちょっと怖い顔をしたコローレに止められちゃいました。


 何でも


《「オーバーテクノロジーですよ!」》


 って事らしい。


 そんな言葉をどこで覚えたんだかは知らないけど、コローレの正体を知った場所が女神の寝所だったんだから、色々向こうの世界の言葉を知っていたって不思議はないのかな?


 まぁ、向こうの世界の青い狸にしか見えない猫型ロボットのアイテムを知ってる裕翔さん達には人数分渡す許可を貰えた事だし、元からそこまで改良型魔導袋を世に広めるつもりもなかったから良いんですけどね……。


 しかし、性能をガクッと落とした魔導袋でも白金貨1枚と金貨7枚(170万円)か…。


 うん。コローレの言う事聞いといて正解だったかもしれない。 こんな学園の1行事で、もし仮にでも国家予算越える金額が飛び出たりなんかしたら、洒落にならないもんな。



 僕はそんな事を考えながら、鳴り止まない拍手の中で落札証明書を部員の1人から受け取っている初老の男性を見つめていました。


 服装は貴族っぽいけど、誰なんだろうね?まぁ、詮索するのは得意じゃないからやらないけどさ。



《それでは次にご紹介致しますのは、今回お目見えの方だけにご紹介させて頂きますサプライズ!我が学園が誇るアイドル、シエロ・コルトの生肖像画ーー!!》



「はぁ!?ってうわわ!!??」


 ルマンドさんが高らかに放った言葉に、思わずもたれ掛かっていたバルコニーの手すりからズルッと滑り落ちそうになった僕は、慌てて手すりを掴む。


 バルコニーの柵は130cmくらいの高さで、僕は柵の下から10cmくらいのところにある足場?みたいな横棒に足を引っ掛けて居たんです。


 あっ、危なかった…。危うく転落死……まではいかないけど怪我するところだった…。


 って言うか誰だよ!そんなもん出品したやつーーー!!



《それでは銀貨2枚からスタートです!》


「銀貨5枚!」


「私は銀貨8枚だそう!!」


「私は白銀貨2枚出しますわ!!!」


 オークションを止める間もなく競りがスタートしてしまいましたが、何でさっきより白熱してんですかねぇ?皆表情が全然違うよ!?


 鬼気迫る様な表情を浮かべた面々が次々に手を挙げては値段をつり上げていきますが、なんでそこまでして僕の肖像画なんかを欲しがるんだか訳が分かりません。


 あっ、バルコニーの真下でマイケル君が僕へ向けてサムズアップしてる。


 良い笑顔なところ悪いけど、君は後でお仕置きだからね?


「金貨6枚!」


 はぁ?金貨!?


 あ~、もう勝手にやってくれ!!



――――――


《以上を持ちまして、第1回ルナー学園祭オークションは終了とさせて頂きます。ご来場ありがとうございました。品物を落札されたお客様につきましては、お出口右側に御座います部屋にて、お引き渡しとなりますので――》


 ふぅ。一部イラついた場面もあったけど、思ったより全体的に盛り上がってくれたみたいで良かった…。


 でも僕が目玉商品として出品した真・魔導袋EXよりも、サプライズ商品として出品した眼鏡型肖像画撮影機(カメラ)よりも、僕のブロマイドが出た時の方が盛り上がるって何なのさ!?


 まっまぁ?あれで盛り上がってくれたおかげで?その後出された新人達の微笑ましい魔道具達も完売したし?売れ残りも無かった訳だし?結果としては万々歳だよ?


 オマケに会場を後にするお客様達の表情は明るいし、オークションで何も落札する事が出来なかった様な人達も楽しんでくれたんだな~?って嬉しくなったよ?


 これだけ盛況なら、来年もし文化祭が開催される事になってもオークションは許可されるだろうな~とか。


 来年のこの場所にたぶん僕はいないけれど、後輩達に置き土産が残せたかな?とか思えるくらい満足した結果になったけどさ~?


 何か心がモヤッとするよね?


 えっ?僕だけ?ガーン。


 はぁ、まぁいいか…。



 今回のオークションで僕達が手にした金額は白金貨8枚と金貨5枚、そして白銀貨3枚の853万円と言う大金でした。


 今回出品したのが大小混ぜて35品。時間の関係上予備で持ってきていた15品は今回日の目を見ることなくお預けになったけど、腐る物じゃないから最悪師匠やルドルフの家で引き取ってもらう事も出来ます。


 まぁ35品もあってこの値段では、魔道具を扱う本物のプロからしたらはした金と言われるかも知れない様な金額ですが、僕が地中から取り出したり、フロルに頼んで育ててもらったりと、反則すれすれながらほぼ材料費をかけずにやってきた僕達からしたら、何年分の予算だよ!?って感じな訳で…。


 大体1つあたりの値段は24~25万円くらいの値がつきました。


 勿論ピンきりあったのでキッチリ割った額がそのままって事ではないけど、タダ同然の物がこんな大金に化けたんだからやっぱり顔が緩んじゃうのも仕方ないよね!?



 さて、と…。僕だけいつまでもバルコニー(こんなところ)で油売ってる訳には行きませんね?


 僕は、バルコニーから降りると、お客様の間を縫うように移動しながら、商品の引き渡し場所になっている小部屋へと急ぎました。


 そう言えばマイケル君とスミスさんが引き渡し場所へは来なくても良いとか言ってた様な気がしますが、いくらなんでもそんな事言う訳ないよね?


 僕、部長だし。


《ガチャ》


「遅くなりまし…」


「きぃやぁあーーー!本物よーー!!」


「!!?!!??」




 追伸。


 僕に、白金貨20枚の値段がつきました…。





非売品なのに売れそうになるシエロ君11歳(笑)


本日もここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。


私事で申し訳ありませんが、明日5月15日はお休みさせて頂きます。


明後日16日は通常通り更新させて頂きますので、宜しくお願い致します。



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