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二百十七話目 続々々・文化祭1日目の日


5月12日の更新です。


本日も宜しくお願い致します。





 突然男物の真っ赤な軍服の様な衣装を身にまとってステージ上に登場したのは我が妹様と、クラスメイトのアース・キンチョナーくんでした。


 突然ステージ上に現れた凛々しい妹様の姿に、思わず兄弟揃ってフルスターリが座っていた場所を凝視しますが、そこには当たり前ながら妹様の姿は無く、1人分ポッカリと空いた席が残されているだけ。


 触れると、冷たくなった椅子が時間の経過を物語っていました。


「なっ!いっ、いつのまに!?」


「フルスターリ、腕を上げたわね…」


 僕が呆然としていると、同じく呆然としているプロクス兄さんと、僕達を欺いたフルスターリに感動した様にウットリと頬に両手をあてるルーメン姉さんの声が耳に入ります。


 カグツチ君があわあわしているプロクス兄さんを見て噴き出している声も聞こえ、うん。なんだろ、ちょっと落ち着いたかもしれない。


 まさか、僕の感知能力をかいくぐって移動出来る様になるなんて思わなかったからビックリしちゃったけど、彼女も成長しているんだなと思うと、感慨深いものも感じられますね?


《わぁっ!》


 空の席をしみじみと見つめていると、一際大きな歓声が上がりました。


 歓声につられる様に僕が顔をステージ上に戻すと、フルスターリの放った炎を纏った短剣が、対面に立っているアース君に向けて凄い勢いで投げられた瞬間で、このままではものの数秒でアース君は丸焼けになってしまうでしょう。


「あっ!危ない!!」


 思わず燃えるアース君を想像して声が漏れた僕でしたが、アース君は狼狽える事なくサッと水の壁を作り出して短剣の炎を消し威力を削ぐと、自分が持っていた短剣を使ってフルスターリが投げた短剣を彼女へ向けて撃ち返します。


《キンッ》


《おぉ!》


 甲高い金属音をたてながらアース君が撃ち返した短剣を、フルスターリはまるで踊る様な流れる動作で指先で挟む形で受け止めると、更に客席からは歓声が飛び交いました。


 そんな、会場が割れんばかりの歓声に対しても臆する事無く、微笑みながら一礼して返した様は何とも頼もしく見え、遂この間まで僕の後をついてきては泣いていた彼女が、これ程までに成長しているとは…と感動すら覚えます。


 ステージ上では観客に答えた2人が更にお互いを相手に攻防戦を繰り広げ、炎や水の柱や壁が出来上がっている様です。


 そして、派手な魔法が巻き起こるその度に客席から歓声が上がっている様子でしたが、視界がぐにゃりと霞んでいる僕にはよく見えなくなっていました。


 あ~。


 どうやらブリーズ達がいなくなってから僕の涙腺はバカになってしまったらしくて、意識していなくても、気がつくとこうしてポロポロ出て来るんですから、嫌になるったらありません。


『シエロ、今ね?フルスターリちゃんとアース君が炎と水を使って虹を作ってるよ?とっても綺麗だから、涙を拭いて見てあげてね?』


 フロルが僕の頭を包むように優しく涙を拭いながら慰めてくれますが、今優しくされたら余計に涙が…。




 結局、僕はフルスターリの演武を半分も見る事が出来ませんでした。


 ううう。いつまでもこんな風にめそめそしていたら兄さんや姉さんに心配させてしまうから、早く泣き止まなきゃいけないのに、フロルの優しさが身にしみてしまったのか、涙が止まりません。



《続いては、我がショーが誇る人・間・大・砲だー!Hey!そこのあんたも、嫌な奴を大砲に詰め込んで飛ばしてみないかーい!?》


《ドカーン!》


「あぁああああああーー!」


《べちょ、ズルズルズル》


《あぁ……》


 ……あっ、涙止まった。



――――――


「あ~。面白かった~!」


 灯りはあったもののどことなく薄暗かったテント内から外へ出ると、丁度てっぺん辺りまで登った太陽の光で目がチカチカさせられます。


 因みに、テントから出て来るなり大きく伸びをしながら叫びだしたのはプロクス兄さんで、その隣を歩いていたカグツチ君が主の奇行にビクッとしたのは此処だけの話しです。


 え?僕?……内緒。


「それでは兄様、姉様、カグツチ君。僕はそろそろ自分のクラスに戻ります。この後も文化祭をお楽しみ頂ければと思います」


 テントから出て時計台を見れば、後10分くらいで僕の休み時間はお終いの時間になっていました。


 ふむ。フルスターリのクラスのショーは1回30分くらいなんだね?


 と、思い出しニヤニヤしながら僕が時間だと彼らに告げると、


「おや?もう時間かい?そう言えばシエロのクラスはどんな催し物を?」


 兄さんも時計台を見上げて時間を確認しながら、僕のクラスのイベント内容を訊ねて来ます。


「僕達のクラスはカフェをやっております。とは言っても、僕は裏で調理をしていますので、接客はまた別の方がやっていますがね?」


 隠す必要も無いので素直に僕が答えると、今度はルーメン姉さんがいつもの様に後ろから抱きつきながら目をキラキラと輝かせました。


 むっ、胸が…!?


 姉さんの嘘みたいな胸がむにゅりと僕の後頭部の形に歪み、僕の後頭部は余りの圧迫感にむにゅむにゅと悲鳴を上げています……と言うか、僕自身も悲鳴を上げそうになるのを堪えています。


 むにゅむにゅは悲鳴じゃないって?そんなことはどうでもいいんだよ!それより、胸が当たってるんだよぉ…!!


「まぁ!ではそこに行けばシエロの作った物がいただけるの?」


「はっ、はい。でっ、でも僕は今回和菓子と言う異国のお菓子を担当していますので、姉様がお気に召す物かは分かりませんが…」


 僕の目が白黒しているのなんてお構いなしな姉さんは、僕を挟みながら続けて来ます。


 姉さんの攻撃にもメゲず、なんとか僕も耐えながら答えましたが、絶対顔は茹で蛸並みに赤くなってる気がします。


 だって顔あっついもん!


 今日は天気が良いって言っても風があるから、さっきまではスッゴく快適だったんだよ!?


 明らかに僕の体温が上がった原因は姉さんでしょ!??



「ワガシ?まぁ、聞いた事は無いけれど、素敵な響きのお菓子なのね?しかも異国のお菓子なのでしょう?お兄様、私達もシエロのカフェにお邪魔しませんか?」


「そうだね?丁度喉も渇いたところだったし、行ってみようか?シエロ、案内してくれるだろ?」


「えっ?あっ、はい。喜んで」


 おっぱ…ゴホン。


 姉さんの遥なる聖域の頂きにクラクラしている内に、いつの間にか僕のクラスに行く事になっていた様です。


「それではご案内しますね?こちらです」


 まぁ、せっかく来てくれるって言ってくれてる兄姉達の願いを断る理由も特に無く、僕は早速【カフェ・木もれ日】に案内する事にしました。



 流石に姉さんに挟まれながら歩くのは人の視線に絶えられそうも無いので、離れてもらいましたがね?



――――――


「いらっしゃいま…「きゃー!猫さんなのに森の一族なのね!?可愛い~♪」シエロのお姉さん…?」


 裏口から中に戻った僕の耳に、姉さんの悲鳴が聞こえました。


 あ~、声的にブロンデが姉さんの餌食になったかな?


 広いとは言ってもここは僕達がいつも授業を受けている教室ですから、端と端くらいに離れている僕の所にも、姉さんがキャーキャー言っている声がよく聞こえてきますね?


 ブロンデには悪いけど、頑張れ!骨くらいは拾ってやるからな?


 僕は心の中でブロンデに合掌しながら、注文が入った【団子の盛り合わせ・シエロスペシャル】を受け取り口から向こう側で待っているコローレに手渡したのでした。





お持ち帰り一歩手前までエルフコスプレをしたブロンデを気に入ったルーメン暴走!どうなるブロンデ!!


彼に明日はあるのか…!



本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。


因みに、ブロンデはコローレに回収されたので無事でした(笑)

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