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二百十五話目 続・文化祭1日目の日


5月10日の更新です。


本日も宜しくお願い致します。




「世にも奇妙なお化け屋敷は如何?面白楽し怖いよぉ~?」


「合コンやってま~す!」



 賑やかな声があちらこちらから掛かり、文化祭の賑わいを感じさせます。


 修羅場を乗り切った僕は、帰ってきた浅葱君と交代で1時間の休憩タイム中。


 そんな訳で、せっかくだからと屋台で買ったフランクフルト片手に教室棟内の散策をしていました。



 ………。どっかで合コン喫茶採用されてる!??



 ちょっと見てみたい欲求と戦いながら、僕は廊下を進んで行きます。


 え?探してみれば良いのにって?


 嫌だよ!僕が行ったら絶対女の子側の席を進められるもん!!


 それだけは断固拒否だよ!?


「シエロ~!」


 ん?今誰かに呼ばれた?


 しかしキョロキョロして辺りを見回してみるも、声の主を特定する事は出来ませんでした。


 あれ?気のせいだったかな?


 周りは人が多くてザワザワしているし、空耳だったのかもしれません。


「シエロ~!」


「シエロちゃん!」


「こっちだよ~!!」


 あっ、違う。やっぱり呼ばれてるな…。


 でも何処から…。


 声の発生源を探そうともう一度辺りを見回してみますが、やはり声の主の姿は見当たりません。


 ???


 えっ!?本当に何処から声がすんの?


『シエロ、外から声がするみたいだけど…』


 僕が途方に暮れ始めた頃、フロルが外を見るようにと促してくれました。


 あっ、外か…。


 いやいや、人の波に押されて窓際を歩いていたのが敗因ですね?まさか外から声をかけられているとは…。


 僕はちょっと冷たい目をしたフロルに促されるまま、窓の外を窺ってみる事にしました。



 うぅ、背中に刺さるフロルからの視線が痛いよぉ…。


 フロルの凍えそうな程冷たい目に耐えながら外を見ると、


「あっ…」


 今度はすぐに目的の人物を探す事が出来ました。


 丁度1階部分をうろからしていたのが勝因であり敗因でもあるのですが、僕に声をかけてきた人物達とは……。


「兄さん?あっ!姉さんとカグツチ君もいる!!」


 覗いた窓の外には、僕の今の兄姉と精霊と言うとっても見知った顔が3つ並んで立っていました。


《ガララララ》


「何で兄様達が此処に?」


 慌てて廊下のガラス窓を開けながら僕が問い掛けると、


「何とか(仕事の)区切りがついたから、来てしまったよ」


 目の下にうっすら隈を作ったプロクス兄さんが、疲れた顔をしながら言い訳みたいな答えをくれました。


 うん。明らかに無理をして終わらせましたって感じの空気感が漂っているし、何も言わなかったけど兄さんを見る姉さんと精霊君の目が生暖かくてバレバレです。


「今そちらに行きますから、ちょっとお待ち下さい!」


 相変わらず嘘がつけない人だなと考えながらチラリと時計塔を見れば、まだ僕の休憩時間が充分残っていたのが確認出来ました。


 それなら我慢しなくて良いよね!?と僕は兄姉に断りを入れ、玄関に向けて廊下をダッシュ!


 いつもなら怒られるこんな行為も、人が多いのと僕が小回りが効く体なのとで、誰かに咎められる事無く教室棟からの脱出に成功です☆


 くすん。チビだからって悲しくなんかないんだからね?



――――――


「お待たせしました!」


「やぁシエロ、急がせてしまったみたいだね?ごめんね?」


 兄さんと姉さん、そしてカグツチ君の待つ裏庭に駆け込んで来た僕に対して、3人はニコニコと笑顔で出迎えてくれました。


 あ~、この感じ。和むなぁ~。ほっこりするよ~。


「少し見ない間に、背が伸びたんじゃない?」


「本当ですか!?」


 ルーメン姉さんは笑顔のまま、その暴力的な胸を揺らしながらこちらに近づいてくると、僕の頭を優しく撫でながら、同時に背が伸びたと褒めてくれました。


 伸びた?本当に?


 いやったー!毎日ピッカウのミルクを飲んでいた甲斐があったってもんだね!?


「そうね~?伸びた?」


「ん~。0.5cmとみた~!」


「えっ?誤差~?」


 うぐ…。


 僕のやる気を奪う声が聞こえ、目線を姉さんからズラせば姉さんに良く似た3人の美女がフワフワと僕の周りを漂っていました。


 言わずもがな、この3人は精霊化したアクア達です。


 雫に顔がついているだけの、パッと見妖怪然とした姿だったアクア達が、水色のフワフワした髪の毛を腰まで伸ばし、かつルーメン姉さんに良く似た顔立ちの精霊へとクラスチェンジするだなんて、誰が予想出来たでしょうか?いや、無理だね!!


 って感じに見た目が180度変化したアクア達ですが、ルーメン姉さんは「4つ子になった気分よ!」と無邪気に喜んでいたので、まぁ良しとしましょう。


 まぁ見た目は変わったけど、中身は全然変わってないからギャップが酷いんですけどね?


 相変わらず3匹目のは口が悪いし…。


 グスン。再開して1分も経たない内に僕の心はメキメキに折られそうです。


「皆、シエロを苛めちゃ、メッ!でしょ?」


「ごめんなさ~い」


「久しぶりに会えて嬉しかったの~」


「本当は0.7cmくらい伸びてるよ~?」



 ぐっ!?地味に心を抉ってくるフォローまで健在の様ですね…。


 あっ、でもこれぐらいで僕は泣いたりしないんだからね?グスン…。



◇◆◇◆◇◆


「おい、今の6年生の…」


「あぁ。あの麗しいお姿、見間違う筈がねぇ!6年A組が誇る至高の存在。生ける伝説!シエロ・コルト先輩だ!!」


「相変わらずお美しい…」


「下級生の頃は可愛らしいの一言だったけど、今はそこに美しさ、大人の色気みたいなものも追加されたわよね?」


「ほぅ…。私と同じ生き物だとはとても思えないわ…」


 兄様がスイスイと滑る様に、又は風の妖精が如く走り抜けて行かれた廊下では、兄様を賞賛する声で溢れていました。


 廊下に居合わせた方々は、口々に兄様の美しさや優雅さを語り合っては呆けた様なとろけ顔をみっともなく晒しています。


 ふっ、しかし兄様の素晴らしさを目の当たりにすれば、その様な態度になってしまう事も致し方ない事でしょう。


 なにせ兄様はプロクス兄様、ルーメンお姉様、プロクス兄様の精霊のカグツチ様にお会い出来た喜びから、満面の笑みを浮かべておられたのですから…。


 普段から人付き合いも良く、微笑みを浮かべられたお顔は人々を魅了して止みませんが、今回のそれは一種暴力的な迄の破壊力がありました。


 花の精霊も裸足で逃げおおせるだろうと言われている程の、女神が如き輝かんばかりの笑みをあれほどまでに周囲に振りまいたのですから、死人が出なかっただけ奇跡だったと言う他ありません。


 しかも一瞬ではありましたが、兄様は人混みに紛れていた僕にお気づきになり、


《「あっ!フルスターリ、兄様達がおいで下さったよ?一緒に中庭に行こう?」》


 とお声をかけて下さいました。


 あの金色の笑みを一瞬とは言え独り占めした僕の心中は、それはもう言葉に出来ぬ程凄い事になっていましたが、それも仕方の無い事です。


 とは言えそれを一度表に出せば、お優しい兄様のお心を乱し、イタズラに心配をおかけしてしまいます。


 そんな時、僕に出来る事と言えば心の乱れを感じさせぬ様に平穏を装いながら兄様とお話しする事のみ。


 僕はありったけの力を込めて顔の筋肉の動きを抑制すると、


「クラスメイトの皆さんにお断りをいれたらすぐに向かいますので、お先に」


 とだけ返答させて頂きました。


 可愛らしい兄様は、


《「分かった!」》


 と僕に更なる笑みの光をお与えになると、そのまま再度廊下を踊る様に駆け抜けて行かれました。



「ほぅ…」


 僕は兄様がいなくなった廊下を見つめ、ヒソヒソと話している周囲の声を聞きながら、とりあえず力が抜けてしまった体を壁に寄りかからせます。


 あっ、危なかった。


 いくら身内と言えど、兄様のあの笑顔は心臓に恐ろしいまでの負担がかかる。

 これで僕が赤の他人だったなら、僕の命は無かっただろう。


 思わず身震いしてしまった僕は、そんな恐ろしい考えを頭を振って散らすと、事情を説明しにA組の友が待つ控え室へと入って行ったのでした。





フルスターリが大分壊れ始めました(笑)


おかしいなぁ?こんな娘じゃなかったはずなのに…。



本日もここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。



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