二百十一話目 文化祭の準備の日
5月6日の更新です。
本日も宜しくお願い致します。
「なにやりたい?」
「って言うか、何をやったら良いんだ?」
「お祭り…なのよね?」
「屋台とか出るのかな?」
教室内がいつになく熱気に包まれていますが、原因は亜栖実さん考案の文化祭です。
所謂【クラスの出し物決め】の最中なんですが、この世界で【文化祭】なんて初めての試みらしく、何をやったら良いのかが分からない状態の為、皆いい感じにテンパっていました。
僕と宇美彦は前の世界で経験しているから、こんな感じのイベントをやれば盛り上がるかな?くらいの想像は出来ますが、僕ら以外の皆は文化祭なんて言葉を聞いた事も無かったくらいですからね?
先生方を含めて右往左往するのも無理はないってものです。
「皆さん、お静かに。アスミ先生から指針の様なものを頂いていますから、先ずはそれを見ながら考えていきましょう」
おっ?亜栖実さんそんなものまで用意してたんだ?
いつも行き当たりばったりなイメージしかなかったから意外っちゃあ意外な気がしますね?
どうやら宇美彦も僕と同じ意見だった様で、ランスロット先生の隣でビックリした顔をしています。
ん~。亜栖実さんが書いた物には、一体何が書いてあるんでしょうね?ちょっとワクワクするなぁ。
「え~っとですね…。「合コン喫茶」?はて?合コン…とは何ですかね?」
亜栖実ーーーー!!
ナニカンガエテンダアノヒトハ!?
オマエアタママルカジリしてやるぉおかぁ~!?
はぁはぁ…。
失礼、取り乱しました。
でもさ?はて?と首を傾げるランスロット先生には悪いけど、これは説明したくないなぁ…。
宇美彦もビックリし過ぎて白目剥いてるし…。
うん。これはそっとしておこう…。
――――――
「では、我が6年A組は【カフェ・木もれ日】と言うことで、喫茶店を開く事となります。皆さん?頑張りましょう!」
「「「「「はいっ!」」」」」
先生の声に合わせる様にして、皆の息のあった返事を返す。
結局僕達のクラスは、宇美彦と色々相談して喫茶店をやる事になりました。
えっ?亜栖実さんがくれた冊子?あぁ、ありゃダメダメ。
冊子には、合コン喫茶の他は男女逆転メイド・執事喫茶やら、本物注意なお化け屋敷、などふざけたものしか載っていなかったから使えなかったんですよね。
だから、亜栖実さんの仲間の宇美彦に泣きついたってのもあるんですが、宇美彦のお蔭でうちのクラスは何とかなりそうです。
僕にも亜栖実さんから何か聞いてないか?何て助けを求められたけど、合コン喫茶に関しては首を傾げて誤魔化しておきました。
全く、亜栖実さんは今度会ったらお仕置きだな!
「それでは、皆さんの役割分担を決めたいと思います。カフェですから、先ずは調理担当を――」
「「「「「シエロ「君/様」が良いと思います!」」」」」
「えっ?」
ランスロット先生が役割分担→と黒板に書き記し、次に【調理担当】【接客担当】【衣装担当】など書き出しながら問いかけると、まさかの全員一致でご指名を受けてしまいました。
思わず間抜けな声が漏れる僕に対して、皆から熱い視線が送られてきます。
なっ、何だコレ?
「シエロが前に作ってくれたクッキー美味しかったもんね?」
コローレの後ろに座っているデイビッド君が、ニコニコしながら僕が欲しかった答えをくれましたが、前にあげたクッキーって良い砂糖が手に入ったからって作ったジンジャークッキーの事?
確かに皆にも振る舞ったけど、もう2年くらい前の話しだよ?
皆良く覚えてるな~…。
「前に貰ったフワフワした菓子も旨かったよな?」
今度はアーノルドが嬉しそうな声をあげますが、フワフワした菓子って何だった?
「シエロ様、パウンドケーキの事ではありませんか?」
僕が首を傾げていると、コローレが後ろの席から助け舟を出してくれました。
補足はスッゴく有り難かったけど、でもパウンドケーキなんて作っ……。あっ!そうだそうだ、去年作ったなそう言えば。
あれ?何でコローレが知ってるの?あの時はもうコローレ執事修行に出てていなかったよね?
「私が修行に出るからと、シエロ様が作ってくれたのではありませんか」
「そうだっけ?」
「そうですよ」
真っ直ぐな目で僕を見つめながら言い放つコローレ。
まぁ、呆れられなかっただけ良しとするとしてさ…。
おかしいな?パウンドケーキってブロンデの誕生日に焼いたんじゃなかったっけ?
あれ?ルドルフの時?
ん?
遂に呆れ顔を晒したコローレの顔を見ながら、唯一分かったのは僕は結構な頻度でお菓子作りをして皆に振る舞っていたと言う事だけでした。
とは言え、この世界ではまだまだ砂糖は稀少な物で、お値段もそれ相応にお高めの為、普通なら砂糖をふんだんに使ったケーキなんかは貴族様限定のスイーツになっています。
その為、金持ちや貴族様の間では甘ければ甘いほど好む風潮があるんですが、精製が甘い物や搾った後のカスなんかは稀少ながらも比較的安く手に入るので、甘さ控えめなケーキや、搾りカスをそのまま使えるクッキー類なんかだったら庶民でもおやつによく食べられているんですよ?
僕は甘ければ甘いほど良いって言う考えは苦手ですが、ある日無性にクリームが食べたくなって、牧場で飼われているピッカウのお乳を買ってきて砂糖をたっぷり使って大量の生クリームを作り出したのは良い思い出です。
「それでは、全員一致で調理担当はシエロ・コルト君に決まりと言う事で宜しいですか?」
「「「「「異議ありません!」」」」」
おぉっ!?感傷に浸ってたら僕の役割が決まっちゃってる!?
「ちょっ、ちょっと待って下さい!調理担当って僕1人じゃありませんよね?いくらなんでも1人じゃ数をこなせませんよ?」
慌てて発言すると、ランスロット先生はそれもそうだと、他の調理担当を募集し始めました。
それもそうだって…。もしかしなくても1人で調理担当フラグだったのか。
あっ、危なかった…。
自薦他薦問わず募集した結果、結局調理担当は僕、浅葱君、クレアさん、マジョリンさん、それにパーニャさんが担当する事になりました。
途中女の子ばかりじゃ大変だからと浅葱君も仲間に加わり、計5人で担当する事が決まったけれど、女の子ばっかりってどういう意味だったんだろう?
女の子の中に僕1人じゃ大変だよね?って方で考えよう。うん。そうしよう。マイナスな方にばかり考えたら浅葱君に失礼だよね?
「では次に―――」
さぁ、決まったからには何を作ろうかな?
ちょっと衣装担当もそそられたけど、調理担当を任されたからには気合いを入れちゃうよ!?
浅葱「あぁ、シエロ殿は男の子で御座ったな…。拙者ウッカリしていたで御座る(ボソッ)」
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。