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二百十話目 第2回作戦会議の日


5月5日こどもの日の更新です。


本日も宜しくお願い致します。





「で?ランスロットさんからはどんな話しが聞けたんだ?」


 開口一番、宇美彦が僕にそう訊ねてきました。



 此処はいつもの様に誰もいない第2修練場。


 僕とコローレ、それに宇美彦は第2修練場の丸太の上に腰掛けながら昨日の事について話し合おうと落ち合った訳なんです。


 でもさ?いくら今日が太陽の日――向こうで言う日曜日ね?――って言ったって、何も朝一番に集まる必要があったのかね?


「で?どうだったんだ?文化祭まで時間はあんまりねぇんだぞ?勿体ぶってねぇで、説明しろよ?」


 あっ、必要あったわ…。



 亜栖実さんの高笑いが聞こえた気がしてちょっとイラッとしたものの、僕は昨日アスタさんから聞いた話しを2人にも話して聞かせる事にしました。



――――――


「駄目だ!」


 まだ僕はアスタさんから聞いた話しをしただけで、どうしたいかなんて何も言っていないのに、宇美彦の口からは否定の言葉が飛び出した。


「私も反対です」


 宇美彦の反対からコローレも同じ様に否定してきますが…。


 本当に僕まだ何も言ってないんだよ!?


「お前が何と言おうと、俺は断固反対だからな!」


「宇美彦の言うとおりです!私も反対致します」


 おい、お前らなぁ…。


「アスタさんからあんな話し聞かされた後で使う気も起きないし、まして【時間属性】なんてめっずらしい属性流石に僕も持ってないし!使わないんじゃなくて、使えないんだし!!第一!ゾルフ相手にそこまでする義理は流石に無いよ!!分かった?あんだすたん?おぉけぇえ?」


「おっ、おぉ…」


「はっ、はい…」


 まだ何にも言ってない内からあんな剣幕でわーわー喚かれたら、僕だって怒るっつーの!


 僕が一気にまくし立てると、凄い形相で詰め寄っていた2人は毒気を抜かれた様に大人しく丸太に座り直しました。


 うむ。最初からそうやって聞いとればよいのじゃ。


「でさ?アスタさんから話しを聞いてから、考えた事があったんだけど…」


「ん?なんだ?」


「うん。ゾルフの腕は最悪切り落とすとしてさ?アスタさんにかけられた呪いって宇美彦達とそっくりだなって…」


「助けたいから腕切り落とすって、発想の飛び方が異常だなおまえは…。ん~、でもそうか…呪いなぁ…」


 丸太に座り込んで汗を拭っていた宇美彦――大袈裟な奴だな…――は、僕の言葉を聞いて、う~んと空を見上げながら腕組みをしつつ、なにやら考え始めました。


 昨日アスタさんから話しを聞いていて、体の時間が止まったあの状態って宇美彦や亜栖実さん達がこっちの世界に飛ばされてきた時にかけられた呪いと似ている気がしたんですよね。


 流石にアスタさんのステータスカードを見せてもらった訳じゃないから、アスタさんの体の状態がどうなっているかまでは把握出来なかったけど、200年生きてて見た目が全く変わらないあの姿を見ていると、共通点がある様に思えてならないというか、何というか…。


 なんて言ったらいいのかモヤモヤするけど、何か宇美彦達の呪いを解くヒントにならないかな~?なんて思った訳で…。


《ぽんっ》


「まぁ、なんだ?そこまでお前が気にする事はねぇぞ?俺達がこっちに飛ばされたのは【邪神】のせいだけど、別にお前のせいじゃねぇだろ?」


 モヤモヤがピークになった時、宇美彦が不意に僕の頭の上にその大きな手のひらを置いてきました。


 まるで心でも読まれたかの様なタイミングの良さに、一瞬ドキッとしたものの、コローレが「全部顔に出てますよ?」と教えてくれたから納得…。


 ………これは納得して良いのか?


「良いんじゃね?」


 あっ、また顔に出てたかな?


 何だか2人に生暖かい目で見られてる気がしてきたから、この話しはこれでお終い!!


「んじゃあ、最悪腕は切り落とす?としてよ?他の部分はどうするんだ?」


 空気を読んだ宇美彦が話題を戻してくれました。


 ん~。確かにゾルフは腕だけじゃなく、顔も半分くらい浸食されていたし、切り落としただけじゃあ駄目だろうなぁ…。


「コローレ、光魔法には何か無いの?腕を切り落とさなくてもこんな方法があるとかさ?」


 ダメ元でコローレに訊ねてみると、コローレは予想に反して


「ありますよ?」


 と、あっさり答えます。


 ちょっ!早く言ってよ!?


 一瞬頭ん中真っ白になったじゃんか!?


「聞かれませんでしたので」


 僕の心を読んだコローレが、これまた相変わらずのシレッと顔で答えます。


 何だろう?何か悩むのに疲れてきたぞ?


「冗談です。」


「冗談かよっ!?」


 真顔で冗談言わないで欲しい!!


 コローレが言うと、冗談に聞こえないし…。あっほらっ!宇美彦まで呆れた顔してるよ?


「このままでは日が暮れてしまいますね?ではお答えしましょう」


 誰のせいだよ!?と突っ込んでいると本当にキリがないので、僕はある程度のボケはスルーして話しを聞く事にしました。


 何かドッと疲れたしね?


「シエロ様が前にマドラさんになさった様に【浄化魔法】をお使いになる方法と、患部を【封印】してしまう方法と2通りの方法がございますね」


 話しを戻したコローレは、指を1つ、2つと数える様に形作りながら説明してくれます。


 なる程。浄化魔法に封印かぁ~…。


 でもマドラさんに使った浄化魔法をそのまま使うと、ゾルフが天に還っちゃうから、それとは別の浄化魔法を考えなきゃいけないね?


「封印って例えばどんな風にするんだ?」


「そうですね…。聖水にひと月程浸した布や紐で患部をくるむですとか、護符や札を使って行う方法が一般的でしょうか?大規模なものになると、岩や柱に聖句を刻み、中や下に閉じ込める事で封印とする方法なんかもありますね」


 流石の勇者様ご一行でも【封印】の方法までは知らなかったのか、ハの字眉毛の宇美彦がコローレに訊ねています。


 そんな宇美彦の問いかけに、コローレはスラスラといくつかの封印方法を教えてくれました。


 へぇ~。【封印】って一口に言っても色々方法があるんだね?


 封印!何て言うと、良くゲームやアニメ何かで耳にするワードではあるけど、やっぱり有名なのは炊飯器かな~?


 あっ、でもそれだとゾルフ体ごと封印されちゃうか。


 ん~。ちょっと試してみたい気もするけど、まず炊飯器がこの世界に無いし、この方法は却下かな?


「すい、はんき?」


「ぶはっ!?おまっ、安直すぎんだろ!?」


 あっ、またちゃっかり人の心を読んでたな?


「グホッ、ゴホッ。あははははは、ヒー、ヒー」


 コローレが漏らした僕の心の声を聞いて、宇美彦はむせる程丸太の上で笑い転げています。


 も~、おかげで宇美彦ツボっちゃったじゃんか?


 宇美彦はゲラだから、こうなったら長いんだからね~?



 僕は、丸太から転げ落ちそうな勢いで笑う宇美彦を呆れながら見つめていたのでした…。



 あっ!因みに、ゾルフの件に関しては、とりあえず聖水に浸した布や紐、それと護符や札を使った封印を軸にして考える事になりましたよ?


 後日、コローレからランパートさんにお願いしてくれる事になったから、ひとまず安心と言ったところかな?




◇◆◇◆◇◆


「うわっ!何ですかコレは?」


 神父となったランパートの声が、教会の敷地内で木霊した。


 届け物だと外に出て見れば、りんご箱一杯に布や包帯、それから投げナイフの様な小型のナイフがいくつも届いていたからだ。


「えぇ~と。これらの品をひと月かけて浄化しておいて下さい。聖水を惜しむ事なく、キッチリ時間をかけて浄化しておくように。って書いてありますよぉ?」


「僕にも見せて下さい」


 ランパートがシスターから受け取った手紙には、さっき読み上げた通りの文言と、コローレの文字があった。


 余りにも簡潔に書かれた手紙に、ランパートは呆れと共に怒りがこみ上げて来て……。


「久方ぶりの連絡がコレって、あのバカ何考えとんねん!しかもこないな量の品物全部て…。あー!もう!!やったるわいくそったれい!」


 と先程よりも大きな声で叫んだのだった。


 この時のランパートの怒りの叫びは、町外れの小さな少女の住む家まで届いたとか…。





ほんの少しでしたが、久しぶりにランパート登場です☆


本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。



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