二百二話目 続々々・作戦会議の日
4月21日の更新です。
本日も宜しくお願い致します。
ある日突如一般人が化け物と化した事例は複数あるが、元の姿に戻れた者はいない。と宇美彦から告げられました。
心のどこかでやっぱりな。と思いながらも、気分が少し沈んで行きます。
何かって言うと絡んでくるから、嫌いでウザくてナルシストで嫌いで嫌いな先輩でしたが、別にあんな姿になるのを望んだ訳ではありませんからね?
《正確には戻れなかったんじゃなくて、化け物化した奴が消えちまったから何も試せなかったんだけどな?》
「えっ?それってどういう事?」
ボソッと呟く様な宇美彦の言葉に反応して訊ねると、宇美彦は眉間の皺を更に深くしながら答えてくれました。
おーい、あんまり眉間に力を入れすぎると、皺が戻らなくなるぞー?
《化け物化した奴らは、誰かしらに恨みや妬み妬み(ねたみそねみ)があった事が分かったんだ…》
「それが、どういなくなった事に繋がるの…。まさか…!」
背筋に冷たい物が走り、気づいた時には大きな声を出しながら、座っていた倒木から立ち上がっていました。
慌てて周りの気配を探りますが、修練場の周りには誰もいなかったのが分かり、ほっと息を吐きます。
《どうかしたか?》
「あっ、ごめん。外で思いっきり大声出しちゃったから、誰かに聞かれてないかと思って…。それより、まさか恨まれていた人達って…」
カードの中を覗き込む様にしながら宇美彦に問いかける。
するとカードの中の宇美彦は軽く目を伏せながら、考えうる中でも最悪の答えを教えてくれました。
《皆、その近辺で化け物の目撃情報が出た日に姿を消している。あぁ、中には腕だけは残ってた奴もいたかな?》
腕だけ残ってたって意味なくない!?
だって明らかにそれ、フラッといなくなった訳じゃなくて、人為的にこの世から抹消されちゃってるじゃん!!?
《まぁ、そうとも言えるかもな?》
シレッと答えるなよ!?涼しい顔して何て事言って…。
あれ?今僕の心読んだ?
《いや、普通に口からダダ漏れだったぞ?》
「マジかー…」
いやいや、そんな事はどうでも良いんだよ!
「宇美彦、そのいなくなった人の安否はこの際聞かない事にするとしてさ」
《いや、聞いとけよ》
「聞かない事にしてさ!!」
《おっ、おう…》
「化け物化した連中のその後の足取りは本当に掴めないの?」
強い口調で宇美彦を押さえ込むと、僕は再度宇美彦に復讐後?の足取りを訊ねました。
すると宇美彦からは、
《無理だな。探索魔法が得意な亜栖実と司…もう1人の仲間だけど、そいつの2人がかりで調べたが何の足取りも掴めなかった。どうやってるんだかは知らねーが、残留魔力が欠片も残っちゃいねーんだ》
と、ランスロット先生からお聞きしたのと同じ様な答えが返ってきました。
「亜栖実さんでも追えなかったの?」
《あぁ。その口振りだと、学園側の探索でも似た様な結果だったのか?》
僕はその問いかけに頷いて返します。
《なるほどな?で?ソラ、そいつは何か言ってなかったか?裕翔からある程度は聞いてるが、何か言い忘れてる事とか》
カード越しに宇美彦も同じ様に頷くと、改めてゾルフの事について聞いてきました。
言い忘れてる事?ん~、裕翔さんには大体話したハズだけど…。
「あっ!」
《何か思い出した事でもあったか?》
「うん。あいつ確か【まだ力が足りない】【迎えに行くまで待ってろよ?】って言ってた」
あんなに言われたばっかりの時はゾルフの言葉が頭の中をグルグル回っていたのに、裕翔さんに相談した時はスッポリ抜け落ちてたや。
僕がそう伝えると、宇美彦の眉間にまた新たな皺が刻まれました。
うわっ!何か般若か鬼の面みたいな顔になってる!?
こっわ!!
《ソラ、そいつ、迎えに行くって言ったんだな?》
「うっ、うん。だから、ランスロット先生からは暫く学園の外に出るなって言われてるよ」
《そうか…。おい、裕翔!》
《あ~。あっ?いでっ!?《ドスン》何すんだよ?宇美彦?》
僕がランスロット先生から言われている事を伝えると、宇美彦はベッドで転がっていた裕翔さんのわき腹を蹴飛ばしました。
うわっ、痛そう…。
裕翔さんの方はよく見えなかったけど、音的にベッドから落ちたのは間違いなさそうです。
それでも裕翔さんは理不尽に蹴飛ばしてきた宇美彦に対して怒鳴るでも無く、普通のトーンで何するんだ?と問いかけています。
マジでこの人菩薩、いや如来級なのでは?
と改めて崇めかけましたが、宇美彦から声をかけられたので、未遂に終わりました。
「何?宇美彦」
《俺、今からそっちに行くわ》
は?イマカラソッチニイクワ?
「え?」
《だから、今から学園に行くってんだよ。良いだろ裕翔?今は待機って指示しか出されてねーし》
《ん~、俺としては居場所が分かってれば良いわけだし、シエロ君の方と今俺達が調べてる事は繋がってると思うから、別に構わないよ?》
カードの向こう側で僕に関する話しがまた勝手に進んでいます。
《って訳だ!俺は今からそっちに向かうから、先生に話しをつけといてくれ!》
いやいやいやいや、せめて僕の意見は聞いてくれない訳?
何でサムズアップ?あぁ、僕の意見を聞く気は無いって事だな?
「はぁ、分かったよ。でもさ、来るにしても、今君どこにいるのさ?それだけでも…」
《シエロ君、悪いけど宇美彦もう行っちゃった…》
「えっ!?」
僕はうなだれていた顔をガバッと上げました。
すると、そこには宇美彦ではなく、申し訳なさそうに笑う裕翔さんの姿があるだけ…。
あいつ~。
僕は痛む頭を抑えながら、申し訳なさそうにしている裕翔さんに気にしないで欲しい旨を伝えました。
《うん、でもごめんね?あっ、そうそう、僕達今王都にいるからすぐ着くと思うよ?》
「えっ!?」
《ムッムッムッ》
あっ、メールだ…。
「すいません裕翔さん、誰かからメールが来ちゃいまして…。急ぎだといけないので、ちょっと見ても良いですか?」
《勿論良いよ?》
「ありがとうございます。では早速…」
裕翔さんからの許可を貰って、メールのアイコンをタップすると、カードの画面の半分がメールフォルダに切り替わりました。
フフフ。実は去年から、短いメールならステータスカード同士でやりとりが出来るようになったんですよ?
文章を送るのは声を送るのよりも複雑で面倒くさかったけど、前世でその便利さを知っていたから、いつになく頑張っちゃった☆
紆余曲折あったけど、やっぱりメールが送れるって便利だよね~?
何て考えながら新着メールを開く。
「あれ?ジャスミン先生からだ…。珍しいな…」
送信相手はテレポート装置室主任のジャスミン先生からでした。
ジャスミン先生はメールよりも電話派なので、彼女からのメールはかなり希少性が高いんです。
「えーと、何々?」
スクロールして本文を読むと、【学園の入り口に君の知り合いが来ている。何か聞いているか?】と書かれてありました。
これは、もしかしなくても宇美彦の事でしょう…。
「裕翔さん、もう宇美彦が到着しちゃったそうです!」
《えぇっ!?いくらなんでも早すぎない?》
メールフォルダを素早く消しながら裕翔さんにメールの内容を伝えると、カードの中の裕翔さんは目を丸くしていました。
裕翔さんが驚くってどんだけだよ!!と思いながら、僕は裕翔さんに断りを入れて通信を切ると、玄関に向けて走り出しました。
あ~もう!もう少し今後に向けての話しをしたかったのに!!
何だか収拾がつかなくなってまいりましたが、もう少し続くんじゃ。
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。




