二百一話目 続々・作戦会議の日
4月20日の更新です。
本日も宜しくお願い致します。
しまった、またやらかした…。
こっちから連絡させてもらったって言うのに、裕翔さんをほったらかして考え込んでしまった!?
慌てて裕翔さんに声をかけると、裕翔さんは柔らかくて穏やかに
《「あぁ、何か思いついた?じゃあ聞かせてくれるかな?」》
と言って微笑んでくれました。
ほったらかした僕を怒るでもなく、にっこり笑って許してくれる裕翔さんって神仏の類じゃないよね?
《どうかしたかい?あっ、もしかして俺の顔に何かついてるとか?》
「いえ、違うんです!すいません。えっと、ゾルフ先輩と同じ様な姿になった人が結構いるって裕翔さんはおっしゃいましたが、似た様な年齢だって事以外に何か共通点は無いかお聞きしたくて…」
一瞬裕翔さんを崇めようとしたのがバレたのかと思って焦りながら質問をまくし立てると、裕翔さんはまたちょっと笑った。
うぅ、前世分も合わせれば僕より年下なハズなのに、ちっとも勝てる気がしない。
これが勇者オーラだと言うのか!
《共通点…。そうだなぁ、他にはどの子も自尊心が高い子だったかな?》
あっと、馬鹿な事考えてたらまた話しが進んでた。
えっと、狙われたのは自尊心が高くて不安定な年頃の連中…。
「あぁ、所謂中二病ってやつですか?」
《あ~。確かにそんな感じかも。話しを聞いてると、結構イタい子が多かったかな?》
やっぱり?
もしこれが何かのウイルス性の病気とかだったら、共通点なんてあって無い様なものだと思うし、もっと爆発的に同じ症状の患者が現れても可笑しくはない。
でも、もし人為的な介入があっての事象なら、常日頃から周囲から浮いてる人物の方が狙いやすいよね?
「あっ、性別はどうです?」
《あぁ、えーとね?確か俺達が把握してる限りだと、半々くらいに分かれてたかな?。んー、ゾルフ君を足したら男子の方が1人多いって事になるかもしれないね?》
「裕翔さん、綺麗に半々って可笑しくないですか?」
半々か…。やっぱり人為的な介入があったのは間違いなさそうだね?
僕が裕翔さんに疑問をぶつけると、裕翔さんは何か羊皮紙を広げて確認している様に見えました。
紙が比較的普及しているこの世界で羊皮紙を使ってるなんて珍しいなと思ったけど、そこには彼らなりの事情があるんだろうと触れずにおいた。
《うん。《ゴワゴワ》俺達もそう思って調べていたところだったんだよ。《ガサ》シエロ君はどう思う?どんな奴が犯人とかさ?》
羊皮紙を開く音がカード越しに響くと、遂には開いた羊皮紙ですっぽり覆われ、裕翔さんの顔が見えなくなりました。
あれ?意外と大きいな?もしかして地図だったとか?
「えっと、まだ推測の域を出ないうちにこんな事を言ってしまって良いのか分かりませんが…」
《うん。大丈夫、言ってみて?》
裕翔菩薩様の言葉に導かれる様に、僕はさっき考えていた事を話してみる事にしました。
「さっきも出て来た通り、犯人が魔王軍関連なのは疑いの余地が無いとは思いますが、その中でも【魔物か人体に詳しい研究者】系の奴が犯人かな?と…」
《魔王軍が関わってるってのは、まぁ分かるとして…。魔物か人体に詳しい研究者系ってどういう事?》
まぁ、そうなるよね?
裕翔さんは広げた羊皮紙を半分に折り畳むと、眉を顰めながらこちらを見つめ返します。
僕は改めて「まだ推測ですからね?」と断りを入れながら、
「本当にその人物?が【魔物に詳しい】かは分からないんですが、どう弄ったら体がどう変化するのかとか分かっている人物なんだろうなと思いまして…」
と、裕翔さんに説明しました。
ゾルフの体は確かに肥大化していたけど、指先までしっかり感覚がある様子だった。
しかし、その反面腕を引きずってても痛がる素振りを見せなかったから、痛覚とかは鈍くなっているのかもしれないけど、それでも【中身】がどうなっているのか分からなかったら改造も出来ないと思ったんです。
まぁ、魔法があるこの世界なら、わざわざ改造とかしなくても呪いをかけるなりなんなり方法はいくらでもあるだろうけどね?
《なるほど…。マッドサイエンティストなんて、ホラーものには必ずと言って良い程出て来るもんな…。ホラーゲーなんて、腐る程やってきたってのに…。あー!これは自分で気が付きたかった!!》
僕が説明を終えると、カードの向こう側の裕翔さんはなにやらブツブツ呪文みたいな台詞を呟きながら、最後は身悶えながら画面から消えていきました。
『あれ?ユートさんいなくなったよ?』
それを見て、ずっと僕の左肩に止まっていたフロルが目を丸くしながらビックリした様な声を出します。
「あ~、いなくなった訳じゃないと思うよ?多分ベッドかなんかにダイブしたんじゃないかな?きっとその時ステータスカードから手を離したとか…」
《あ~!なんか悔しい~!!》
ステータスカード越しに、裕翔さんのくぐもった呻き声が聞こえてきました。
「ね?声は聞こえるでしょ?」
『本当だ~』
「とは言え困ったね?」
『そうだね?カード真っ白だし』
フロルが言ったとおり画面は裕翔さんが消えた時から白一色に染まっていて、時折もそもそと端の方が動いているので、シーツの上にでも落ちた様です。
仕方ないので、ちょっと裕翔さんが復活するまで待っていようか?と、フロルと話していると…。
《《ガチャッ。キー》ん?何やってんだ?こいつ?》
通信先から扉が開く音と共に、誰かの声が聞こえてきました。
相変わらず画面が真っ白なので向こうの様子は分かりませんが、どうやら誰かが部屋に入ってきたみたいですね?
んー、あの低めの声は宇美彦かな?
「宇美彦~?」
試しに呼びかけてみる。
《ん?ソラか?どこから…《シュル》あぁ?通信繋がりっぱなしじゃねーか…》
予想は当たった様で、すぐに放り投げられたステータスカードを拾いあげてくれた様です。
すぐに白一色だった画面にシーツやベッドの端等が映り、最後に宇美彦の呆れた様な顔が映ると、さっきまでくぐもっていた裕翔さんのうなり声もクリアに聞こえる様になりました。
「うっす。宇美彦」
《うっす、ソラ。で?どういう事だ?こりゃ?》
《あ゛~》
ステータスカードの画面が宇美彦からまた移り、枕に顔を押し付けたままゴロゴロとベッドの上を転がる裕翔さんの姿が映し出されました。
安物なのか、寝返りを打ったら下に落ちそうなくらいの幅しか無いベッドの上で、裕翔さんは器用にゴロゴロ転がっています。
勇者すげぇな…。
《で?なんだ?これは?》
「あ~。あのさ…」
僕がこうなった経緯を宇美彦に説明すると、
《なるほど、ほっとくか!》
と、潔すぎる答えが返ってきました。
宇美彦がそう言うなら、放って置くのが正解なんだろうな、と、僕も気にしない事にします!
《ソラ、何とか言う先輩は見つかったのか?》
「いや、まだなんだ。今その話しを裕翔さんともしてたところだったんだよ。あっ、それでさ?裕翔さんから他にも似た様な症状の人が沢山いるって聞いたんだけど…」
《あぁ、その話しな?》
宇美彦は苦虫を噛み潰した様な顔をして、眉根を顰めました。
裕翔さんは詳しく話してはくれませんでしたが、宇美彦のこの反応を見る限りあまり良い情報は出てこなさそうですね?
「あのさ、元に戻った人はいるの?」
それでも聞かない訳にもいかず、僕は恐る恐る宇美彦に問いかけました。
裕翔さんは濁して教えてくれなかったけど、宇美彦なら答えて…。
《誰1人として、元の体に戻った奴はいねぇよ…》
宇美彦から返って来た答えは、残酷なものでした…。
ほのぼのタグ詐欺+タイトル詐欺な内容が続いていてすいません(汗)
ナンパして来た奴がらみと言う事で1つ!!
本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。