百九十話目 合同遠足の日
4月9日の更新です。
本日も宜しくお願い致します。
何だかんだ騒がしかった合同授業から1ヶ月が経ち、僕達はあの時と同じメンバーで遠足に来ています。
「兄様、またお世話になります」
「「「「「お世話になります!」」」」」
「うん。宜しくお願いね?」
とは、今朝学園に集合する前に寮の玄関前で交わされた会話。
パーティーのリーダーになっている生徒は色々と準備がある為、他のメンバー達よりも一足早く登校しなければいけなかったんですが、何故かその時間にフルスターリと愉快な仲間達から声をかけられた、と言う訳なんです。
どうやら僕達の誰かが通るのを、朝ご飯を食べた後すぐくらいから待ち伏せしていた様で、後から登校して来た他のメンバー達は口を揃えて、「急に声をかけられてビックリした」と言っていました。
あっ、コローレだけは僕と一緒に登校したので、ビックリする僕を見て笑ってましたけどね?…腹立つわ~
でも、僕ら【桜餅】のメンバー全員が登校するまであそこで待ち伏せしていたのかと思うと、なにやってんだと言いたくなるのは僕だけでしょうか…?
『あら、私もそう思ったわよ?あんたと同じ意見になるなんて思わなかったけど』
「アイスさんもですか?アハハ。ですよね~?」
「何ですの?お2人で楽しそうに盛り上がる何てズルいですわよ?」
「あぁ、すいません。実は――」
某個性派俳優の様に笑いながら怒っている、器用なクレアさんに今2人で話した事を説明しながら、僕達一行は目的地に向けて歩いています。
そうそう。相変わらず僕にはツンツンしているアイスさんですが、あの後結局クレアさんについて行く事にしたそうです。
僕としても妖精仲間が増えるのは嬉しい事ですし、アイスさんも自分の姿が見える宿主候補が出て来たのですから離れがたかったのもあるんだと思います。
あっ!それと、波長が合っていたにせよ、何故クレアさんがアイスさんの声も姿もハッキリ見えているのか?と言う疑問なんですが…。
コローレが言うには、アイスさんがクレアさんの魔力を吸収して復活したからではないか?との事でした。
体にクレアさんの魔力を一気に取り込んだ事で、何年も宿主と行動を共にしたのと同じ効果があるのでは?とコローレは考えたみたいです。
確かに枯渇しかかっていたアイスさんの魔力を、クレアさんの魔力で補った訳ですからね?
僕もコローレの推測を聞いて、なるほどと納得したんですが…。
いや~、本当はあの時ちゃっちゃと聞いとければ良かったんですけどね?
あの時は石から妖精が出てくるわ、その前に亜栖実さんと裕翔さんが変装してまで授業に割り込んでくるわで、気持ち的にもうお腹いっぱい。
余裕も無かったので、特に何の疑問も持たずスルーしてしまったんですが、結局お風呂に入ったら心に少しゆとりが生まれたのか、ムクムクと疑問が湧いてきて…。
あ~、このままじゃ寝られそうもないな~と、風呂までいつもついてくるコローレを捕まえて、風呂場の入り口ら辺で軽く教えてもらったんです。
だってあんなに仲良しなプロクス兄さんとカグツチ君でさえ妖精時代は姿どころか声すら聞く事が出来ませんでしたからね?
アクア達とルーメン姉さんは声くらいは聞けたみたいですが、それもアクア達が精霊に近づいてからだと聞いていますし、いくらクレアさん達のお互いの魔力が共鳴を起こしたのだとしても、おかしいな~?って思ったんですよ。
「シエロ、そろそろ目的地に着くぜ?」
おっと。あの晩の事を思い返していたら、もう目的地付近に到着していた様ですね?
僕は教えてくれたルドルフにありがとうと伝えると、早速辺りを見回しました。
魔力を探ってみても、周囲1km圏内に魔物の気配は無く、空間魔法の【探索】魔法を使って軽く調べてみてもヒットするのはリスやウサギの小動物くらい。
うん。どうやらこの辺りに魔物はいない様ですね?
「この近くに魔物はいなさそうだね?じゃあ皆が揃ってる事を確認したら、ランスロット先生に報告して来るよ」
「ありがとうシエロ。じゃあ…うん。皆揃っているであります!隊長!」
「了解!では報告に行って来るので、諸君らはこの場で待機しておくであります!!」
「はっ!…アハハ、行ってらっしゃ~い」
「アハハ、はいよ~」
最近ブロンデの中でブームが来ているらしい【隊長と部下ごっこ】をしながら、僕はメンバー全員が無事に揃っている事を確認して行きました。
急に口調が変わった僕とブロンデについて行けずキョトンとしている後輩達を置いて、僕は今確認した情報と、パーティーメンバーが無事にこの場に着いた事を知らせる為に先生の下へ向かいます。
因みに今回の目的地は、前回新2年生の為に魔物を間引いた草原から北東に数10km行った所にある山間の場所にあります。
此処では山間部でしか採れない貴重な薬草が沢山自生しているのですが、その薬草を狙ってやって来る【鹿型の魔物】の【ホーンベナード】と言う厄介な魔物とかち合う事が多く、採取する3年生の護衛として、僕ら6年生が一緒に此処までやって来た、と言う訳。
その厄介な魔物のホーンベナードは、魔物ランク【D】と、豚と牛を掛け合わせた様な魔物のピッカウと同じランクに位置しています。
ランク的に見れば、まぁ【普通冒険者が個人でも倒せる程度】の魔物でしかないのですが、目当ての薬草が生えている場所はホーンベナードの住みかの近く…ほぼド真ん中にあると思っていてもいい場所にあります。
ホーンベナードからすれば、自分の縄張りに入り込んで来た侵入者なので、普段よりも執拗に追いかけ回して来るし、巣の近くに子供でも居ようものなら更に大変です。
しかも自生している所は、ほぼ崖って感じの急斜面。
約45度くらいの斜面に生えている薬草を、如何に自分が転げ落ちないかどうか慎重に動きながら周囲に気を配りながらの採取しなければならず、それでも運が悪ければそのまま戦闘開始です。
集合場所になっている此処は比較的坂がなだらかな方ですが、一歩足を踏み入れれば傾斜角45度くらいの場所がザラにある為、体制が整わないうちにホーンベナードが襲ってきたら涙目間違い無し!
僕がもし探索から採取から戦闘からとを、全部1人でやれなんて言われたら、こんなの無理でしょ?詰んだわ~…とアッサリ諦める事でしょう。
まぁそう言う訳で僕達6年生の任務は、ある意味厄介なホーンベナードをどうにかする事を含めての護衛作業となります。
がっ!可愛い後輩達を守る為にも、ちょっとだけ頑張ってみましょうかね?
ランスロット先生~。桜餅、全員揃いました~☆
またもや遠足回です。
どんだけ遠足行くんだ!!と言う感じではありますが、お付き合い頂ければ幸いです。
本日も宜しくお願い致します。
追伸
私ごとで何なんですが、目が痒いです(笑)
うぉ~!目を取り出して洗いたい~!!