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十九話目 外出した日



 暖かく柔らかな、春の日差しに体全体が包まれる。


 辺りを見渡せば、そこかしこから極彩色に彩られた花々が顔を出していた。


 まだ所々に雪が残っているけれど、確実に春がやって来ているのが感じられて、気分が高揚していく。



 お外だーー!!


 産まれて初めての外出だ!例え玄関から出て直ぐの場所だろうが、そんなの関係ないね!


 何故なら、僕はあの部屋から出た事が一度もないからだ!!


 で、あるからして!

 今日が文字通りの【産まれて】から【初めて】の外出なのだ!!


 テンションだって可笑しくなろうってぇもんだろ!?


 えっ?何時も可笑しいって?




 ………、ちょっと、そこの影で泣いてくる…。




 何てな!今日の僕はそれくらいじゃあへこたれないぜ!!



 だから、お母さん!僕を降ろして下さい!!


「シエロちゃん?嬉しいのは分かったから、少し落ち着いて?」


 陸に打ち上げられた魚みたいにビチビチと暴れていたら、流石にお母さんからストップが掛かった。


 見ると、僕を落とさない様に必死で抱きかかえてくれていたお母さんの息が、尋常じゃないほどあがっていた。



 うわっ!?お母さんごめんなさい!


 すぐに大人しくなった僕を見て、お母さんは微笑んでくれた。

 何この人、女神様ですか?



「シエロちゃんは良い子ですね~?ママの言葉がちゃんと分かるんだもの。お外は楽しい?」


 楽しそうなお母さんにつられて、つい首を縦に振る。


 お母さんの顔が益々楽しそうなものになった。



「そうね、ママもとっても楽しいわ。ママね?シエロちゃんが凄く元気になってくれたことが嬉しくて仕方がないのよ?」



 えっ?…あっ、そうか、僕は産まれてすぐに高熱を出して、死にかけたんだっけ。


 そんな病弱だった息子が腕の中で暴れられる様になったんだ。

 親なら嬉しくない訳がないんだろうな…。




「シエロちゃんが産まれた頃は、このお庭に冬の妖精達が遊びに来ていてね?辺り一面を真っ白く染めていたの。シエロちゃんが産まれた日は、特に妖精達が沢山遊びに来ていて、それはそれは凄かったのよ?」


 冬の妖精か…。


 真っ白くて、空から降ってくるって事は【雪】の事だよな…。

 僕が産まれた日は妖精達が沢山遊びに来てたんだから…、もしかして吹雪だったって事か?


 うわっ。

 僕って、最悪な日に産まれたんだな…。


 しかも、産まれてすぐから死にかけてる訳だし…。



 どれだけ、周りに迷惑掛けたんだろう…orz




「だからね?シエロちゃんは妖精達からの祝福をたっぷり受けて、産まれて来たのよ?」



 迷惑ばかり掛けて、本当に申し訳ない…、えっ?祝福?



「どの季節でもそうだけれど、妖精達が沢山遊びに来てくれたと言う事は、それだけ妖精達に愛されている証拠よ?妖精達に愛されたから、シエロちゃんは元気になれたんだとママは思うの」


「ようせいは、めがみさまのみつかいともいわれているんだよ?」


 ニコニコと本当に嬉しそうなお母さんの説明に被せて、プロクスお兄さんも笑顔で僕に説明してくれた。



「ルーがうまれたときは、みずのようせいさんがいっぱいきてくれたんだよ!」



 はいっ、シエロあげる!と、ルーメンお姉さんが、水色の花弁を付けたタンポポみたいな花を僕にくれた。


 水の妖精か…、大雨が降ったって事かな?



 ルーメンお姉さんから貰った花を見る。


 水色のタンポポとか、前世じゃ有り得ない色してるな。


 やっぱりここは異世界なんだと、変なところで実感してしまう。


 まぁ、魔法が有る時点で前とは違うんだけどさ。



「ルーの時は、水のようせいさんがきてくれましたけど、ぼくの時はどうだったんですか?」


「あら?プロクスには話していなかったかしら?プロクスが産まれた時はね…?」



 そう言うと、お母さんは遠くに見える山を指差しながらこう言った。



「あのお山が火を噴いたのよ」


 お母さん、吹雪や大雨でも大変だなって思ったけどさ…。



 火山の噴火はそんな笑顔で言うものじゃないと思うよ?


 ただの事件じゃん!?



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