百八十八話目 アイスさんとスパーク君の日
4月7日の更新です。
今回説明文が多めとなっております。
読みにくいとお感じになる箇所がややあるかと思いますので、予めご了承頂けたら幸いです。
本日も宜しくお願い致します。
『ところで今は何年なの?』
「あぁ、今年は双子月歴3028年ですわ」
ふと今がいつなのかを聞いてきたアイスさんに、クレアさんは丁寧に今が何年なのかを答えてあげています。
因みに今クレアさんが言った【双子月歴】とは、空に浮かぶ赤い月と青い月に女神が住み移ったのを機に制定された年号だと言われているのですが…。
実はこの【歴】が制定されたのは彼女達が月に移り住んだ時期とは大きくズレているんだそうで、案外昔の人間はいい加減だったのか、はたまた改暦した人間が己の力を誇示する為だったのか…。
まぁ、どちらにしても面倒くさそうな事には変わりありませんがね?
『えぇっ!?じゃあ私、10年以上石の中に居たわけ?最悪…』
今が双子月歴3028年だと聞いたアイスさんは、最悪…。と頭に手をあててオーバーによろける様な仕草をした後、ヨロヨロとクレアさんの肩に止まりながら深々とため息を吐きました。
まぁ、いくら寿命があって無い様な妖精とは言え、あんな所に10年も閉じ込められていたと知ったらショックでしょうね?
「アイスさん、気をしっかり持って下さいましな?シエロ君、先程アイスさんとお話しされていた、えーとスパーク君とは何方なのですか?」
「あぁ、スパーク君はプロクス兄様の妖精で…」
『何?あの子契約者が見つかったの!?』
おぉう、また途中までしか言えなかった…。
クレアさんの肩に止まっていたアイスさんは、僕の言葉に反応して大きな声を出しながら此方を見ました。
うぅ、何で睨まれなきゃいけないんだろう…。
『あの泣き虫に契約者が見つかったのかって聞いてるのよ!』
「はっ、はい!僕の兄さんです…。と言っても契約したのは僕が赤ん坊の頃ですが…」
アイスさんの声にビビった僕が反射的にそう返すと、アイスさんは
『あんたいくつよ?』
と言って更に此方を睨んできたので、僕は正直に【11歳】だと答えました。
すると…。
『何よ、じゃあ私がこんな所に閉じこめられてすぐじゃないの…』
と、ショックを隠せない様子で呟きました。
あぁ、スパーク君が助けに来てくれなかったのが、そんなにショックだっt『そんな訳ないでしょ!』
うっ、すいません…。
『私は別に心配されなかったから怒ってんじゃないわよ。ただ…。ただ、私よりも先に契約者を見つけ出してたのが腹立つだけよ!』
そう言って、顔を真っ赤にしながら腕を組んだままそっぽを向くアイスさんに、ちょっと僕のイタズラ心が刺激されます。
「なるほど、アイスさんはスパーク君の契約者を一緒に探してあげたかったんですね?」
『はぁ?あんたどういう理解力してんのよ!?そっ、そんな事私一言も言って無いじゃない!?』
僕がウンウンと生暖かい目で彼女を見つめながらそう言うと、面白いくらいの反応が返ってきました。
しかし、僕にそうやって噛みついてくる顔は真っ赤だし、よく見ればちょっと涙目になってるし…。
よく【目は口程に物を言う】と言いますが、彼女…アイスさんの場合は、素直に言葉を伝えられない分、体全体、特に顔で物を言うタイプの様ですね?
『うぅううるさい!そんなんじゃないったら!!』
「シエロ君、そんなにアイスさんの事を苛めないで下さいまし!アイスさん、好きな方に尽くしたいと言う気持ちは尊い物ですわ?恥ずかしがらずとも良いのですよ?」
真っ赤になって反論するアイスさんが可愛くてつい楽しんでしまいましたが、ニヤニヤしているのをクレアさんに咎められてしまいました。
半泣きになってしまったアイスさんに優しく言葉をかけるクレアさんの姿を見て、ちょっと反省。
あっ、僕よりニヤニヤして様子をうかがっていたコローレが目を逸らして誤魔化してる!
お巡りさん、犯人はこいつもです!!
――――――
『何だ、あんた達って何にも知らないのね?私達みたいな妖精があんた達みたいなのを気に入るには、外見や性格だけじゃなくて自分と【波長が合う】って言うのも大事な条件なのよ?波長が合うって事は、話しが出来たり、運が良ければ私達の姿を見る事が出来るって事なんだからね?』
やっと落ち着きを取り戻してくれたアイスさん――はい、彼女が取り乱したのは僕のせいでもありますね、ごめんなさい――に、僕は改めて【妖精持ちが他の妖精を見る事が出来る】訳を聞いていました。
とは言え、【波長】の話しはランスロット先生の授業でも何度か取り上げていたので分かっていたつもりでしたが、波長が合う者同士以外でも妖精の姿を見る事が出来る。とは一体…?
『やだあんた、その子の他にも妖精何匹も侍らせといて、そんな事も知らなかったの?いい?私達妖精が会う…つまり接触する時は、少なからず【共鳴】が起こるものなの。だから、波長の合う合わないで契約した子達の相手に私達の姿が見える、何て事が稀に起こり得るのよ!分かった?』
侍らせ…。何か人聞きが悪い言い方だったけど、僕が知らないのは事実なので何も言い返せません。
しかしなるほど、共鳴か…。
言われてみればうちのクレイが、エストラ先輩のお父さんのエカイユさんについてるクレイさんに会った時とか、ブリーズがランスロット先生のアイレさんに会った時とかに、何かを擦り合わせる様な、もしくはガラスとガラスがぶつかり合う様な不思議な音がしていたっけ…。
あの時は気のせいかな?とか思っていたけど、あれが共鳴した時の音だったのかな?
『何だ、分かってるじゃないの!そうよ?それが共鳴音の一種。他にも色々な音が出るから、一概には言えないけど、そんな音がする事もあるわ?』
僕の心の中をシレッと読み取ったアイスさんが、僕が聞いたのは共鳴音の一種だと教えてくれました。
因みに、アイスさんはそこが気に入ったのか、ずっとクレアさんの肩の上に止まっています。
「ふむ。それじゃあ、僕が聞いた【鈴の音】も誰かの共鳴音だったのかな?」
『鈴?あぁ、シャンシャン鳴るやつの事?そうね…それは私の氷属性の魔力と、誰かが使った氷属性の魔力が共鳴したのかもしれないわ?ほら、私あの中に閉じ込められてて、魔力が欠乏しかかってたから…』
「まぁ!魔力が?お体に異変はございませんの?ご気分が優れないとかは?」
『なっ、ないわよ!あっ、あんたの魔力もらえたからもぅ…大丈夫よ…。ありがと(ボソッ)』
なるほど、別に妖精同士じゃなくても共鳴は起こるのか。
何て考えていたら、アイスさんを心配したクレアさんが、自身の肩に乗ったアイスさんをそっと抱き上げるとあれこれ聞き始めました。
それに対するアイスさんも、顔を真っ赤にしながら小さい声でデレるし、何だかんだこの2人の相性は良さそうに見えます。
アイスさんとしては、石に長いこと閉じこめられてて魔力に飢えてるとこに氷属性の魔力を感じたから、つい【共鳴】しちゃったって感じだったけど…。
それでも共鳴出来たって事は、魔力的な繋がりに関しても相性は良いって事だよね?
鈴の音も結構聞こえてたし、良いって事にしないかな~?
だってこのままクレアさんと契約してくれたら僕も嬉しいし、妖精仲間が増えるって最高だよね?
もう大大大歓迎だよ!
説明文が多めで、ややこしいお話しとなってしまいましたが、要はツンデレ妖精とクール素直のコンビが誕生しそうだというお話しです(違)
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。