百八十七話目 続々・謎の石の正体の日
4月6日の更新です。
本日も宜しくお願い致します。
『私の名はアイス。あんたの名前は?きっ、聞いてあげない事もないんだからね!?』
若干顔を赤らめながらクレアさんに楯突いているのは、さっき石から出て来たばかりの小さな妖精さんです。
ベッタベタなツンデ…ごほん。何故か妖精視を持たない筈のクレアさんには彼女の声も姿も聞こえているし見えている様なんですよね…?
何故そんな事が分かるのかと言えば、ばっちり2人?の視線が噛み合っているからとしか言えないのですが、言葉も出ない程驚いた様な表情をしている事からも間違ってはいないでしょう。
現に他の2人――コローレ除く――はどうなったんだ?とキョロキョロしていましたし、クレアさんとはまた違った反応をしていますからね。
『ちょっと、あんたよあんた!聞こえてるんでしょ?何とか言いなさいよ!別に、私はあんたとなんか話したい訳じゃないけど、無視されるのは嫌だわ!!』
「あっ!これはごめん遊ばせ?私はシャーロット・クレアと申します。以後、お見知り置き頂ければ幸いですわ?」
腰に手をあててふんぞり返りながらクレアさんの顔の前辺りをブンブン飛び回っている石から出て来た妖精のアイスに、我に返ったクレアさんが慌てて挨拶を返します。
あ~、やっぱり見えてるんだ…。
何故急に彼女に妖精が見える様になったのかは分かりませんが、クレアさんにあの妖精の姿が見えている事は確かな様です。
『ん?あんたも私の事が見えてるのね?珍しいわね?こんなに近場に妖精の姿が見える奴が…』
あっ、見えてる見えてる言っていたら、どうやらこっちにも気が付いたみたいですね?
アイスは不思議そうな顔をしながら僕の周りを飛び回っていましたが、僕の肩にフロルを見つけるとそのまま固まりました。
あれ?もしも~し?
『もしも~し?』
僕につられたフロルが一緒にアイスに話しかけてくれますが、アイスは固まったままです。
ふむ。ついでだからこのままアイスを観察してみるとしますか…。
アイスはブリーズやクレア達と同じくらいの身長――リ○ちゃん人形くらいの大きさ――ですが、身に着けているのは葉っぱや花びら、木の皮なんかで出来た服では無く、絹の様なサラサラした生地で出来たドレスを着ていました。
そして、彼女の髪の毛と瞳はどちらも自分が入っていた石と同じく鮮やかな水色で、何故か体の周りがキラキラと光っています。
『はっ!あんたが妖精持ちなら私の姿が見えるのも何か分かったわ!で?何であんたから火花くんの匂いがするのよ!?』
じっくりと観察し終わったところで、僕が見ているのに気が付いたアイスがチラチラ此方を見ながらそんな事を言ってきました。
アイスは気にしてない風を装っている様ですが、結構圧が凄い…。
えっと…。火花?くんって誰かな?
後、妖精持ちなら見えるって言うのも意味が分からないんですけど…。
『ひっ、火花くんは火花くんよ!そんなにあの子の臭いをさせてて知らないなんて言わせないんだからね?』
前半はしどろもどろって感じだったのに、それが恥ずかしかったのか後半は僕に食ってかかる様な言い方になり、僕は今彼女に詰め寄られている形になっています。
助けを求めようと思ってもコローレはニコニコ見ているだけだし、そんなコローレを尊敬しているフロルまでニコニコしながら成り行きを見守っているし、他にアイスの姿が見えてるクレアさんは――。
「なぁ、シエロは1人で何してんだ?お前も1人で話してたし、何か分かるんだろ?」
「えっ?えぇ。石からは小さな妖精様が出ていらしたのですが、少し私とお話しした後、今度は何かシエロ君とお話しされていますわ」
「また新しい妖精さんが増えるのかな~?」
見ると、僕に詰め寄るアイスが見えないブロンデとルドルフに何か問いかけている様で、どうにも無理そう。
仕方ないので、意を決してアイスに真剣に向き合う事にしたのですが…。
『火花くんは相変わらずピーピー泣いてるわけ?』
とか。
『ふっ、ふん。別に心配してた訳じゃないのよ?でもあの子は泣き虫だから…』
とか。
『未だに宿り主が見つかってないんじゃないか、何てこれっぽっちも心配してる訳じゃないのよ?』
とか、ツンなのかデレなのかハッキリして欲しいトーク(一方通行)が続いています。
妖精持ちなら妖精が見えるって言うのがどういう事なのかを聞きたかったんですが、彼女は全然僕の話しを聞いてくれないので結局一方通行のトークに…。
でもお蔭で、大分この感じに慣れてきたかもしれないですね?
ん?と此処でふと思う。
火花くんって、もしかして【スパーク】くんの――
『なんだ、やっぱり知ってるんじゃないの!?今あの子はどうしてるの?』
せめて最後まで言わせてほしいな~。とか心の中でボヤキつつ、やっぱりスパーク君の事を言っていたのかと納得もしました。
しかし、アイス【さん】はスパーク君とどう言った関係…待てよ?
「えっと、アイスさんは【氷の妖精】って事で合ってますか?」
僕は少しの不安と少しの確信の答え合わせをする為に、アイスさんの質問を無視して問い掛けました。
本当なら、疑問を疑問で返す様な事はマナー違反なのでしてはいけないのだと分かってはいるのですが、どうしても確かめたい事があったんです。
それに、僕が【スパーク君】の名前を出したらアイスさんもやっとこっちを見てくれた様な気がするので、聞くなら今かな~?とも思ったりして…。
『何よ急に…。そうよ?私は氷の妖精よ?それが何なのよ?』
僕の心を読んだのか、はたまた、ただ単に根が素直なだけなのかは分かりませんが、アイスさんは眉をしかめながらも答えてくれました。
あ~、やっぱり氷の妖精だったんだ…。
んで、スパーク君の知り合いって言ったらやっぱりアレだよね?
うん。でもこの感じなら、彼がああいう風に【誤解】していたのも分かるかも知れませんね?
あの感じでガーッと来られたら…。ねぇ?
「あの、お話し中申し訳ないのですが、何故アイスさんはあの様な石の中にいらしたのです?」
僕らの会話が一瞬途切れた隙をついて、割り込む様にクレアさんがアイスさんに疑問をぶつけてきました。
僕も混乱した頭の整理をしたかったし、丁度良いのでそのまま2人で話していてもらう事に…。
『何よ、あんたたちは質問ばっかりね?でも良いわ、あんな所から出してもらった恩もあるし…。』
すると、アイスさんは腕を組ながらこれまで自分に起きた凄惨(笑)な事件の全貌を話してくれました。
それにしても…。さっきまで僕にマシンガンの様にブワーっと質問してきたのは忘れてるんでしょうかね?まぁ、いいですけど…。
『あれは、私がいつもの様にお散歩していた時の事よ?私達妖精は気ままな生き物だから、極端に肌に合わない土地でない限りは出かけていくの…。でもあの時は私も油断していたのね―――』
その後も彼女は身振り手振りを加えながら、自身に降りかかった災難とそれを解決するまでの冒険譚を熱く語ってくれましたが、そのままお伝えしていると夕飯に間に合わないどころか朝を迎えそうだったのでカット!
そして、短くまとめたのがこちら↓
散歩してたらいつの間にか学園内のダンジョンの中へ迷い込んでしまった→
すぐ出口を探すも閉じ込められ、出られない→
挙げ句の果てにダンジョン内を彷徨いていた【ミミック】――ご存知宝箱型の魔物ですね――に食べられた→
気が付いたら魔石の中に封印されていた。
と言う訳の様ですね…。
まぁ予想通りと言うか何と言うか…アイスさんが誰か学園の教師に封印されたとかじゃなくて良かったですよ。
は、ははは…。
ツンデレドジっこ妖精(笑)の登場でございます。
本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。