表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
204/281

百八十四話目 やっと終わる合同授業の日


4月3日の更新です。


本日も宜しくお願い致します。




 結局3人とも戻って来ませんでした。



 鐘が鳴り、HRが始まる時間になっても3人が帰ってこなかった為、仕方無く副担任のスクルド先生が合同授業の総括をする形でお話し下さっています。


 HRはそのまま特別教室を借りて続けているので、皆は席に座ったままスクルド先生のお話しを聞いています。


「え~。今日は色々あって、疲れたと思う…。しかし、これに懲りずに、頑張って欲しい…」


 実はさっき、スクルド先生は戻って来ないランスロット先生達を呼びに行ったのですが、結局お1人で戻って来たんですよね…。


 スクルド先生は一体そこで何を見たのでしょう?


 やや青白い顔が標準装備のスクルド先生ではあるけれど、今の先生は青白いを通り越して石膏人形くらい白い顔でお話しされています。


 ちょっと足下も覚束ない様で、教壇にもたれかかっていますし、何かハラハラするなぁ…。



「今回、3年A組の諸君は、パーティーをバラバラにされて、とてもやりづらい状態で1日を過ごしたと思う…。だが、一歩社会に出たら理不尽な事ばっかり起こるものだ…。今日の事を良い糧として頑張ってくれ…」



 それ、若干愚痴が入ってませんか?


 フラフラとしながら、それでも何とか話しているスクルド先生の言葉に、皆の心が1つになった。そんな気がしました…。



――――――


「あ~!やっと終わったな~?」


 ルドルフが腕を天に向かって目一杯突き上げながら体を伸ばしています。


 ラウンジの椅子がギシッと音を立て、最大限体を伸ばすルドルフの体を支えますが、そのポーズそろそろ周りの人の邪魔になるから止めようね?


「本当にね?何か一週間くらいぶっ通しでやってた気がするよ…」


 ルドルフの体を無理やり起こしながら、僕はそう彼に返事を返します。


 HRも終わりその場で解散となった僕達は、今日1日一緒に過ごした後輩達と別れ、寮のラウンジにてちょっと休憩中。


 何かあったら、またこのメンバーで集まろうね?と笑いながら別れたのが、なんだか遠い昔の様に感じられます。



 さて、本当ならこの後それぞれ部活に顔を出そうと授業の前までは話していたのですが、授業が終わった今。僕らにその気力は残っていませんでした。


 まさか3時間目の授業、しかも座学の授業で此処まで体力・精神力共に持って行かれるとは思ってなかったなぁ…。



「はぁ~」


 ルドルフじゃないけど、ちょっと体を伸ばさないと駄目かもしれないな…。


 体が強ばっちゃった…。イテテテ。


《コロンッ》


「あれ?シエロ、何か落ちたよ?」


「えっ?あっ、ごめん。ありがとう、ブロンデ…」


 椅子に座りながら肩を回していると、僕の制服のジャケットのポケットから何かが落ちた様です。


 拾ってくれたブロンデにお礼を言いながら受け取ると、それはいつか僕がワンダ・ドリーからもらった水色の不思議な石でした。


「あれ~?僕、いつの間にこんなところに入れたんだろう?」


 いつもなら大事な物は異空間リングにすぐ閉まってしまうので、こんなところに入れていた何てちょっと不思議。


 まぁ、勘違いしていただけで、たぶん僕が入れ忘れただけでしょうけどね?


「シエロ、それ、凄い綺麗な石だね?」


「珍しい色の石だな?それも魔石なのか?」


「う~ん。それが分かんないんだよねぇ…」


 僕の手のひらに乗せた石を、まじまじと見つめているブロンデとルドルフに、何とも歯切れの悪い返事しか返せないのは悔しいです。


 ですが、あれから何度【鑑定】し直しても文字化けしたままで、これが何なのか、正直未だ分からず終いになってるのも事実なんですよね…。


「シエロ君にも分からない事があるのですわね?」


 困った様に笑っていたであろう僕の顔を見て、僕の向かい側に座っていたクレアさんは、驚いた様な顔をしていました。


 ん~。先日ワンダに言われた事とまるっきり同じ事をクレアさんに言われた訳だけど…。


「僕に分かる事何てタカが知れていますよ?分からない事の方が多いんですから…」


「そうなのですか?」


「シエロにそんな事言われたら、俺とアーノルド何て生きてるのが不思議なくらいになっちまうよ!」


「シエロ君、この前の筆記試験。学年で一番だったもんね~?」


 ワンダに答えた事と同じ答え方でクレアさんに返していると、僕の両隣に座った連中が揃ってラウンジのテーブルに頭を突っ伏してしまいました。



 いや。そりゃ、筆記試験の成績は良かったけどさ?


 こちとら前の世界分も足したら37~38歳だよ?


 小学校低学年レベルの算数の問題とか、解けなかったら大問題じゃん!?



 実は僕が高等科に進むのを止めた経緯もそこら辺にあるのですが、この世界の学問と言うのは元居た世界から比べてもまたまだ遅れていて、6年生になって漸く分数の計算をし始めた程度。


 兄さんに貰った高等科の教科書を見ても、高等科の最高学年でやっと因数分解に触れている程度で、他の基本教科もそれなり…。


 此処が魔法と剣を教える学校なのを差し引いても、覚える事は大して多くないんです。


 まぁ、まだ識字率が余り高くないこの世界にとったら最先端の教育環境なんだろうとは思うんですが……。



 って、今はこんな話しをしているんじゃないですよね?


 この不思議な石の話しでした。



「不思議な光の入り方をしていますが、何だか氷の魔石にも似ていますわね?」


 皆にも見やすい様にテーブルに石を乗せると、それを見たクレアさんがポツリと呟きました。


「今、何て?」


「え?あぁ、申し訳ありません。氷の魔石に似ていたので、つい余計な事を…」


 僕が聞き返したのを何か勘違いしたのか、クレアさんは慌てた様に謝って来ましたが、僕は別にクレアさんに謝らせたかった訳ではなくて!


「違います違います。余計なんかじゃ…。ただ、今氷の魔石っておっしゃいました?」


「え、えぇ。以前私の母様に見せて頂いた魔石に似ていましたもので…。ただ、見せて頂いた魔石はこんな風に光を反射しなかったので、自信はないのですが…」


 僕が、僕の向かい側に座っているクレアさんに詰め寄ると、彼女は目を白黒させながらも答えてくれました。


「あっ…」


 しまった。興奮し過ぎた!?


 クレアさんは優しいから答えてくれたけど、僕とクレアさんとの距離はなんと拳1つ半程!


 レディーに対してこの態度は、普通だったらひっぱたかれても可笑しくない距離でした。


「すっ、すいません!この石の正体が分かるかもしれないと、つい興奮してしまって!」


「いっ、いえ。お気になさらず。私も期待を持たせる様な言い方をしてしまって申し訳ありません」


 慌てて身を引き、そのままの勢いで椅子に座り直しながら謝罪した僕に、クレアさんは優しく微笑みかけてくれました。


 時々暴走するけどそれはお互い様だし、クレアさんって本当に良い人だよなぁ~?


 こんな時に何だけど、彼女みたいな可愛くて優しい人の旦那さんになる人は幸せ者ですね?


 えっ、僕?


 ないないないない。


 僕じゃクレアさんに釣り合わないし、向こう12歳でこっち中身37~38のおっさんですよ?


 有り得ないでしょ~。






いよいよ石の正体が明らかに!


此処までお読み頂き、ありがとうございました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ