百八十三話目 もうちょっと続く、合同授業の日
4月2日の更新です。
昨日は修正作業の為、お休みさせて頂き申し訳ありませんでした。
お陰様でほんの少しですが、修正を加える事が出来ました。
ありがとうございます。
それでは、本日も宜しくお願い致します。
この時間はなんと、【魔法学】と言う名の【偽者はだ~れだクイズ大会】だったのです。
なっ、なんだってぇ~!?
はぁ…。
取り敢えず僕が2人を当てたのでこのイベントは終了らしいんですが、まだ少し時間があるからと、今度は亜栖実さんと裕翔さんへの大質問大会が始まってしまいました。
良い機会だから。と、皆、裕翔さんや亜栖実さんに思い思いの質問をぶつけていますね…。
裕翔さんはちょっと困惑している様子にも見えたけど、まぁほっといてもいいか。
「マリア先生。本物のランスロット先生とスクルド先生はどちらにいらっしゃるんですか?もしかしてどこかで見ていらっしゃるとか?」
僕は熱狂する皆を丸っきり無視して【本物のランスロット先生とスクルド先生はどこに行ったんですか?】とマリア先生に質問していました。
「あら?貴方は行かなくて良いの?」
「えぇ、亜栖実先生と裕翔さんは僕の魔法の先生ですので、今更聞く事もありませんし…」
それに…。僕は、【あの場に突っ込むのも面倒くさい】と言う言葉を飲み込みました。
「あぁ、あそこに突っ込んでいくのは骨が折れるからねぇ。行かなくて正解よ…」
「!?」
一瞬マリア先生に心を読まれたのかと驚きましたが、亜栖実さん達の方を呆れた様に見つめていたので、どうやら単に自分の感想を話しただけの様です。
「あ~っと、何だったかしら?あぁ、そうそう。ランスロット先生はね?―――」
マリア先生によると、ランスロット先生は隣の教室でB組に、スクルド先生は更に隣の教室でC組の授業をしているそうです。
更にマリア先生は、ゴンザ先生は2人が偽者だった事を知らされていなかったと言う事も教えてくれました。
あ~、だから暫くの間教室の隅っこの方で1人いじけていたのか…。
そのゴンザ先生ですが、勇者2人による質問大会が始まると、生徒達に負けじと走っていって、今は最前線に陣取り、我先にと質問を投げ掛けています。
うっわ!?凄い楽しそう。めちゃめちゃ良い笑顔じゃん…。
あ~、なるほど。こんな人だからランスロット先生達はマリア先生にしか事情を話さなかったんだろうなぁ。
「本当にお気楽な方よねぇ~?」
ちらりと横を見ると、物凄い冷めた目でゴンザ先生を見つめるマリア先生が目に入りました。
「マリア先生もご苦労なさってるんですね…?」
「「はぁ…」」
僕とマリア先生は騒ぎの中心辺りを見ながら、揃ってため息を吐いた。
――――――
「じゃあ、大体質問が一巡しちゃったみたいだから、こんどは僕から皆に聞きたいんだけどね?さっき僕達が先生方に変身していた時、何か少しでも良いから違和感や異変に気が付いてたよ~って言う人いるかな?」
未だ熱狂する生徒と、ごく一部の教師をまぁまぁと、落ち着かせる様に手を振りながら亜栖実さんが問いかけると、全体の約5割くらいの生徒が周りを見ながらおずおずと手を挙げました。
中には僕の妹のフルスターリやアース君なんかの3年生達もポツポツ含まれていましたが、殆どは6年A組のクラスメート達みたいですね。
「あれぇ~?意外と優秀。僕達の何処がおかしかったの?」
異変に気が付いていたのが全体の五割と多めだったのが悔しかったのか、亜栖実さんは口を尖らせながら更に皆に向けて問い掛けます。
すると。
「「「「「眼鏡!」」」」」
と全員一致で息の合った答えが返ってきました。
ですよね~?僕でさえ気がついたんだから、ランスロット先生が6年間ずっとかけて下さっている眼鏡に皆が気づかない訳がないもの…。
あっでもそれで言うと、ランスロット先生もスクルド先生も6年A組の先生だから3年A組のよい子達にはあまり面識もないし、この問題は難しかったんじゃないでしょうかね?
う~ん。公平にするなら、どちらか片方は3年A組の担任か副担任に化けるべきだった様な…。
3年A組で唯一正解したフルスターリと愉快な仲間達は、さっきまでランスロット先生と一緒だったから気づけたのでしょうし…。
因みに、ランスロット先生は現在5種類の眼鏡を所持――いずれも僕謹製です☆――していて、その日の気分で付け替えては眼鏡ライフを楽しんでいます。
「眼鏡かぁ~。う~ん、やっぱりコロさんかシエロ君だけでも計画に引っ張り込むべきだったのかな~?でもそれだと適正訓練が…」
亜栖実さんは全員一致で【眼鏡】と答えられた為、本気で頭を抱えて悩み始めてしまいました。
その隣では裕翔さんが、自分は指摘されなかったとばかりに、ニヤニヤと笑っています。
裕翔さん。あんまりニヤニヤしてると、亜栖実さんにまたイジメられますよ?
「じっ、じゃあ、俺はどうして気づかれたんだろう?シエロ君、今後のお手本にするので教えて下さい」
案の定、亜栖実さんにジト目で睨まれた裕翔さんは、誤魔化す為に話題を変えようと僕に話しかけてきました。
いや、助けを求められたって言った方が正しいのかな?
あ~、もう。しょうがないなぁ…。
僕は助けを求めてきた裕翔さんに応える為に口を開きました。
「スクルド先生は、あんなににこやかに女性教師と話せないからです」
でも助けるとは言ってない!
僕は笑顔で裕翔さんにトドメを刺したのでした。
あれ?これ、もしかしてトドメ刺されたのはスクルド先生の方かな?
まっ、まぁ本人いないし良いか!
本当の事しか言ってないしね?うんうん、僕悪くない!!
大体さ、僕からしたら人見知りで女性に自分から話しかけられないスクルド先生――女子生徒除く、ただしロリコンではない――が、結構グラマラスなマリア先生とにこやかに話しながら教室に入って来る事自体おかしいんですよ。
だから、裕翔さんの方は魔力波形云々以前に、偽者だって気づきましたね。
「そっ…そっか…」
「何だ!裕翔はそれ以前の問題なんじゃないか!あははははは」
流石に可哀想だと思った僕は、その事をオブラートで三重くらいにギッチリ包んで伝えたのですが、何故か裕翔さんは目に見えて落ち込み、亜栖実さんは鬼の首でも取ったかの様に笑い出してしまいました。
片やorzのポーズで凹み、片や腰に手をあてて高笑い。
そして、その様子を静かに見ている生徒達…。
何このカオス。
《カラララ~ン、カラララ~ン》
あっ、鐘…。
「皆さん、良い子にしてましたか~?」
あっ、本物…。
「えっ?どうかしましたか?」
イタズラが成功したみたいな可愛らしい笑顔で教室に入ってきた先生でしたが、すぐに特別教室内に漂う異様な雰囲気を察したのか、キョトンとしています。
しかし、僕達はそんなランスロット先生の顔を見て、誰もが助かったと安堵のため息を漏らしたのでした…。
追伸。
落ち込む裕翔さんと高笑いする亜栖実さんを見て何かを悟ったランスロット先生は、ニッコリと菩薩の笑みを浮かべながら2人をどこかへ連れ去って行きました。
次の授業までに彼らが戻って来る事を祈って…。
南無~。
さぁ、ランスロットによるお説教タイムの始まりです☆
本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。