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百七十七話目 まだ続く合同授業の日



 自画自賛ながらも感動的な魔法学の授業が終わり、次は選択授業…。



 となるはずだと思っていたのですが…。


「このままダンジョンに行くと言うのはどういう事ですか?」


「良い質問だな!」


 思わず質問してしまった僕に、ゴンザ先生は嬉しそうにそう大きな声をあげました。


 どうやら、こんな風に誰かから質問が来るのを待っていた様で、先生の声に反応した皆の耳目がこちらに集中するのを感じます。


 くそっ、ウッカリのってしまった…。


「皆も遠くに遠足に出かける時は、合同で出かけるのは知っての通りだが――」


 何故かゴンザ先生はそこで区切ると、屋外実習棟の中で…所謂体育座りをして話しを聞いていた僕達の顔をぐるりと見回して行きます。


 はて?何かを僕達自身に考えさせたい様だけど…?



 【遠くに遠足】なんて言うと、【頭痛が痛い】みたいで変な言い方なんですが、実際普通の遠足よりも長距離を移動して何かをする際、必ず自分達の学年よりも上の先輩方と合同で動く事が決まっています。


 これはうちのプロクス兄さん達の学年がイビルリザードに遭遇してしまった、あの事件が起きてから始まった制度で、現にあの事件以降も【まさかこんな所に!?】な展開がいくつか起こった為、かなり下級生にとっては有り難い救済制度なんです。


 ですが…。



「その制度が一体どうしたんですの?」


 クレアさんも気になったのか、小首を傾げながら手を挙げてゴンザ先生に問いかけています。


「うむ。実はな…!」


「ふぅ…。此処からは私がご説明致しましょう」


 【実は】何て思わせぶりに言いつつ、ランスロット先生に助けを求める様な視線を向けたのを見てしまったけれど、敢えて僕は見ない振りをしました。


 気付かない優しさってやつですかね?


 皆も多少ニヤついていたけれど、同じくスルーしてあげたみたいです…。


 で、その助けを求められた当のランスロット先生は、小さくため息を吐きながらも続きを話してくれました。


「下級生と上級生の合同遠足をした場合、平常時は良いのですが、戦闘時等はレベルの差からどうしても上級生の足を引っ張る事になってしまいます」


 そりゃそうだ、と僕達は座りながら頷いて肯定します。


「しかし。もし仮にそうなった場合でも、上手く連携が取れていればレベルの差があったとしても戦力にはなり得るはずです」


 更に頷く僕達を見て、ランスロット先生は満足そうに続けます。


「ですので、次の遠足で戦闘になった場合を想定し、今からダンジョンの低階層を中心にして連携を深めて頂きたいのです」


 なるほど…。今回の合同授業の目的は来る合同遠足の為の布石の方が主体って訳か…。


 因みに、他のクラスはすでにダンジョンにて戦闘訓練をしているそうで、A組の僕らは低階層ながら他のクラスよりも少し下の階層で戦闘訓練をする事になりました。


 しかし、いざ移動を開始する!となった時、おずおずと手を挙げる者がいました。


 ブロンデです。



「どうしました?」


「あの…。ランスロット先生、僕達のパーティーだけ他のパーティーよりも人数が多くなってしまうんですけど…」



 僕もランスロット先生と同じく、ブロンデどうかしたのかな?と首を傾げていたのですが、ブロンデは守らなくてはいけない対象が他のパーティーに比べ多い事が心配だった様です。


 確かに僕、コローレ、クレアさんは2人ずつ後輩の面倒を見ていた為、他のパーティーに比べると3人も多くなってしまうんですよね?


 う~ん。そんな事まで気が回らなかった…。



「あぁ、そうでしたね?では【サクラモチ】のパーティーには私が同行する事にしましょう。それなら良いですか?」


「はいっ!ありがとうございます!…あっ、ごめん。僕勝手に…」


 と言うことで、ランスロット先生が同行して下さる事になり、一瞬はとても喜んでいたブロンデでしたが、慌てて僕達の方へ向き直ると頭を下げ始めました。


 大所帯でダンジョンに入る事に不安感を持っていたのは皆同じなんだから、そんなに気にしなくても良いのに…。


 むしろ僕なんか気が付きもしなかったし…。


「ブロンデが言わなかったら、僕がランスロット先生にお願いしてたよ…。ブロンデ、ありがとね?」


「えっ?えへへ…」


 僕がそう伝えると――えっ?嘘吐き?シー!言わなきゃバレないって――、今度は顔をほんのり赤く染めながら笑い始めました。


 何か無性に愛でたくなった僕は、ブロンデの頭と猫耳を暫くわしゃわしゃ撫で回したのでした。


 あぁ~、猫耳に癒される~。


 僕より背高いけど…。



――――――


「前方、50m先、パイルバット。敵数12」


「パイルバットは雷系の攻撃を仕掛けてくる厄介な飛行系魔物だから、この場合は飛べなくするのが先決です。クレアさん、僕が合図を出したらアイスミストを放って下さい!」


「了解ですわ!」


 コローレからの情報を受けて、対処法を後輩達に伝えながら、僕はクレアさんに指示を出しました。


 此処はダンジョンの地下8階。


 B~D組までが地下2階~7階までを使っている為、僕達A組は8階~10階までを使って合同演習をしています。


 因みに一階はフロア、地下一階は階層を一定の階層毎に結ぶテレポート装置が設置されたフロアになっている為、魔物は出現しません。


 さて、地下8階の此処はゴツゴツとした洞窟エリアが広がる階層で、ご覧の通りとにかくトカゲ系や蝙蝠系の魔物が多く出現してくるエリアとなっています。



「距離、30、20…」


「せーの!」


「アイスミスト!」


「《風操作:強風レベル2》!」


 僕はコローレのカウントに合わせ、タイミングを見計らってクレアさんに合図を送ります。


 クレアさんの放ったアイスミストに合わせて僕が放ったのは風操作を使って起こした【強風】の【レベル2】。


 因みにレベル2は強風注意報が出される時くらいの強さの風で、窓がガタガタ揺れるくらいかな?


 今回はパイルバットが12匹も居た為、クレアさんの魔法を使って簡易的な吹雪を起こしたと言う訳。


 目論見通り寒さで凍えたパイルバット達は、上手く飛べなくなりボタボタと地面に落ちていきました。


 よしっ、成功かな?


「では今のうちに皆でトドメを!丁度一匹ずつ仕留めれば終わりますから」


 動きづらくなっているとは言え、ガッツのある奴は攻撃してくるかもしれないので、そこら辺に注意する様にとの指示を出しながら、僕も自分のノルマを消化していきます。


 ランスロット先生はついてきては下さっているものの、あくまで見学しているだけ。


 僕達が本当に危なくならなければ手を出しては来ないので、今は大人しく壁に背をつけて僕達の様子を観察しています。


 どうでも良いけど、そこの真横が罠の作動ボタンになってるんだけど、先生、分かっててそこにいるのかなぁ…。


 あっ…。



 押しちゃったよ…。





良い年した――エルフだから見た目だけは若いけど…――のドジっこ属性は需要が果たしてあるのだろうか…。



本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。



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