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百七十四話目 合同授業の日



 コローレの眼鏡が出来上がってから一週間が経ちました。


 僕はあの後スケープゴート【達】を何とか【自力】で蹴散らし、【自力】で脱出しました。


 えぇ、【自力】で脱出しましたとも!!



 あっ、そうそう。


 結局、あの【石】の事は師匠に聞けずじまいになってしまいました。


 何でも師匠に珍しく大口の注文が入ってしまったそうで、今は孫のスミスさんすら話しかけられない程お忙しいんだとか…。


《「普通なら受けもしない大口の注文を受けたんで、家族も驚いてるんッスよ」》


 とスミスさんも首を傾げていました。


 次にお邪魔した時にでも竜の鱗の加工代金をお渡ししようと思っていたので、ちょっと困ってるんですよねぇ…?


 とまぁ、愚痴はこの辺で止めておくとして…。



「では。本日は合同授業と言うことで、3年A組の生徒達と一緒に授業を受けて頂きます。しっかり上級生らしいところを見せてあげて下さいね?」


「「「「「はいっ!」」」」」


 と言う訳で、今日の授業は1日3年A組の生徒達と一緒に行われます。


 僕達も3年生の頃、先輩方に色々教えてもらいながら実のある1日を過ごす事が出来たので、今度は僕が後輩達を手助けしてあげる番。


 僕なんかが何をしてあげられるのかな?と思うと少し不安ですが、今から楽しみです。



――――――


「兄様、私の魔法は如何だったでしょうか?」


「うん。威力は申し分ないし、良かったと思うよ?ただ、少し放つ瞬間に魔力が揺れてしまっているから、手から魔法がしっかり放たれるまで気を抜かない様にね?」


「はい!」


 僕達と合同授業をするのが【3年A組】だと分かった時点で何故気が付かなかったのかと、恐ろしい勢いで猛省している僕です。


 本日最初の授業が【魔法学】だった為、屋外実習棟で後輩達の到着を今か今かと待っていた僕達の目に最初に飛び込んできたのは、


 えっ?瞳の中に星でも入ったの?


 と言いたくなるくらい目をキラキラと輝かせた少女達と、そんな少女達を侍らせている我が妹様の姿でした。


 その後ろを、「うちのクラスの奴がスイマセン」的に申し訳なさそ~うに歩く男子生徒達が更に哀愁を誘い、僕は彼らに対する罪悪感から、直ぐにでも彼らに駆け寄って土下座して謝りたい気持ちでいっぱいになりました…。



 うちの妹が本当に申し訳ありません!





 その後の説明で、先輩が後輩をマンツーマンで指導しながら授業を受ける事になったのですが、僕達のクラスは人が少ない為、3人あぶれてしまう事に。


 せめてものお詫びにと思い、僕に4人まとめて担当させて下さい!と先生方に申し出たのですが…。


「流石にシエロ君でも無理ですよ。そうですね…。コローレ君、クレアさん。お2人にもう1人ずつ、見て頂いてもかまいませんか?」


「承知致しました」


「私も承りましたわ」


 と言う事で結局。僕、コローレ、クレアさんがそれぞれ2人ずつ後輩を見る事になりました。


 僕ら3人が男女1人ずつを受け持つ事が決まったところで、早速授業開始となり、冒頭のフルスターリとの会話に繋がってくるのですが…。


 ちらりと左隣を見る。


 そこには、緊張からかガッチガチに固まってしまった気弱そうな男子生徒の姿がありました…。


「あっ、あのさ…?」


「ひゃいっ!もっ申し訳ありません!!」


 いや…。


 謝られても…。


 彼は、担当が僕で、一緒に教わるのがフルスターリだと分かった瞬間からこんな感じになってしまって…。


 他の班を見ると、皆教えるのも教わるのも楽しそうにしています。


 2人ずつ担当する事になった他の2人も、楽しそうに和気藹々と和やかムードで教えられているのに、どうしてこうなった!?


 あっ!フルスターリか?


 フルスターリのせいなのか!?


 いや…。妹のせいにしても始まらないし、僕から彼と打ち解ける道を模索していかないと…。


「そう緊張しなくて大丈夫。ほらっ、先ずは深呼吸してみましょう」


「ひゃいっ!!」


 と言うことで、少しでも緊張をほぐしてもらおうと深呼吸をすすめてみる事にしました。


 返事をする声が多少裏返ったのはご愛嬌と言うことで、彼にはゆっくりと息を吸ったり吐いたりしてもらっています。


「す~、は~。す~、は~」


 うん。流石に深呼吸をした程度で何かが劇的に変わる訳でもありませんが、多少は落ち着きを取り戻したみたいですね。


「もう大丈夫ですよ?では、先ず自己紹介を致しましょう。僕はシエロ・コルト。宜しくお願いします」


 ほぼ白に近かった顔に、多少なりとも色が戻ってきたところで改めて自己紹介です。


 実はさっきも聞いたんですけど、ガッチガチだった彼の耳には届かず終いで…。


 フルスターリが何度か呼びかけてみても謝るばっかりだったんですよねぇ?


「すっ、すいません。俺はアース・キンチョナーと申します。此方こそ、よっ宜しくお願いします」


 おっ。ダメ元で聞いてみたけれど、今度は何とか返事が返ってきましたね?


 しかし、アースでキンチョナー…。


 下手したらめちゃめちゃ蚊が取れそうな名前ですよね?


 そのアース君は、僕より少し背が高いやや細目の少年で、目も髪の毛も綺麗なグリーン。


 まさに蚊取り線…。


 いかん!これ以上結びつけるのは危険だ!!


「うん。宜しくお願いします。「兄様、私はフルス」はいはい。フルスターリの事はよ~く知ってるから大丈夫」


 アース君に対する良からぬ妄想を振り切り、彼に最大級の親しみを込めて微笑みかけていると、何故かうちの妹様まで自分の紹介をしてきました。


 いや、今更妹を兄に紹介って可笑しいだろ。


 それに何だよそのポーズは?


 兄さん恥ずかし過ぎて、顔から火を噴きそうなんですけど!?


 フルスターリは肩幅に開いた足を外側に向けて立ち、右手を開いた状態で己が胸に軽く当て、左手は地面に向けてピーンと伸ばしていました。


 うちの妹はいつからこんなに芝居がかった感じになってしまったのでしょうか?


 うぅ、頭痛い…。


「兄様、酷いです」


 はいはい、ほっぺに空気ためて膨らましたところで兄さんは全く動じませんよ~。


「フフッ」


 おっ?どうやら今のやり取りのおかげでアース君の緊張が大分ほぐれた様ですね?


 うん。笑顔も見れたし、いい感じです♪



「それではアース君。次に君の得意な魔法を1つ、僕に見せてくれませんか?あの的に当ててみて下さい」


 今がチャンスだと捉えた僕は、早速アース君に的場君――僕は学園に設置されている的当て人形をこう呼んでいます――を攻撃してみる様にお願いしてみました。


「はいっ!」


 緊張がほぐれたお蔭か、今度はどもる事もなく、立派な返事を返してくれます。


 さてさて。彼はどんな魔法を使う事が得意なのでしょうか?


「水よ。我が下に来たりて刃と化せ!ウォーターカッター!」


《ザシュッ、ゴトン》


 お~、アース君は水属性持ちだったのか…。


 絶対土属性だと思ったのに…(ボソッ)


 アース君の放った水の刃は、過たず的場君目掛けて飛んでいき、吸い込まれる様に的場君の首にあたる部分をスッパリと断ち切ってみせました。


 ふむ。コントロールはアース君の方が上手な様ですね?



《シャンッ》



 ん?


 今何か聞こえた?





アース君。火属性持ちでも良かったですかね?(笑)


本日も此処までお読み頂き、ありがとうございました。



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