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百六十四話目 暫しの別れと再会の日



「はぁ、何かグダグダになっちゃってゴメンな?いつもはもう少し平和なんだけど…」


「気にすんな。俺らの日常だって大概こんなもんだからな」



 ラディンが弟を引きずりながら出て行った後、怪我をしていた少年を念の為アテナ先生に診察してもらいました。


 結果は【問題なし】。


 ホッと胸をなで下ろしつつ、予想外の騒ぎになってしまった為今日の見学会はお終いと言う事で、下級生達には解散してもらいました。


 残った研究会員+宇美彦とで軽くお茶会をして一息ついた後、こうして僕と宇美彦は校門前にて別れの挨拶を交わしていると言う訳です。


 因みに、ここに来る途中でステータスカードの登録は互いに済ませたので、これからはいつでも話しが出来る様になりました☆



「んじゃあ、そろそろ本当に行くわ。休みの日にでも連絡してくれな?タイミングが合えば、またどっかで会おうぜ?」


「うん。今日は本当にありがとな?じゃあまた…」



 おう!と軽く手を上げた宇美彦は、街中の方へ歩いてそのまま消えて行きました。


 宇美彦が来た時は高い位置にあった太陽が、今は西の方角へ傾き街中を紅く染め始めています。


「あ~、大分引き止めちゃったな~」


 僕は暮れなずむ街を暫く見つめた後、天を仰いだ。


 本当なら宇美彦は今頃、裕翔さんと合流して宿屋で寛いでいただろうに、本当に悪い事をしてしまった…。


 紅く染まった雲が流れる様を見つめながらそんな事を考えていると、真横から


「宇美彦の事ですからね。宿屋に入ったところでジッとはしていないでしょうから、シエロ様が気に病む事は御座いませんでしょう」


 と急に声をかけられました。


「うわぁ!いっいっいっいっ、いつの間に?」



 急!そして近いっ!!



 余りにビックリし過ぎた為、思わずどもってしまった僕でしたが、急に隣に人が現れたら誰だって驚きますよね?


 ましてそれが僕の空間把握能力でも感知し辛く、ここ1年間ずっと会いたかった人ならなおのこと…。


 はっ!僕の横に立ってる奴が明らかにニヤニヤし始めたので、この話しお終い!!


「何だっていつも君は急なんだ!ビックリし過ぎて心臓止まるかと思ったじゃないか…」


「おや?もしその様な事になりましても、すぐに私が蘇生させて差し上げますよ。ご主人様♪」


 イタズラ大成功!と大きく顔に書いてある少年は、スミレ色の髪を揺らしながら、唇の端を吊り上げて楽しそうに笑っていた。


 くっそ~、涼しい顔しやがって!!


「お帰り!」


「フフフ。コローレ・シュバルツ、只今戻りまして御座います」


 吐き捨てる様にそう叫ぶも、コローレにはどこ吹く風。


 僕がムスッとしているのを横目に、コローレはまた楽しそうに笑った…。



――――――


「うわ~!コローレだぁ~☆お帰りなさい!!」


「お前、いつ戻って来たんだよ?」


「昨日の夕方に戻りました。また同じクラスでお世話になります」


 僕の後ろの席に座ったコローレの姿を確認したブロンデとルドルフが、喜色満面といった感じで駆け寄って来た。


 昨日の夕方学園に戻って来たコローレは、あっという間に事務手続きを終わらせると、次の日にはちゃっかり復学していました。


 しかも抜け目なく僕の後ろに陣取っています。


 コローレが休学届けを急に提出してから1年とちょっと。


 その間、コローレは一体どこに居たのでしょう?


 実は昨日聞いてみたのですが、詳しくは明日話すからとはぐらかされてそれっきり。


 今日になり、改めて聞いてみましたが皆の居る場所で話すからとまたはぐらかされて…。


 何なんだろうね?本当に!



「コローレ、1年も何処にいたの?執事になる修行だって言ってたけど…」


 ナイスブロンデ!


 僕は椅子をぐるりと回しコローレの方に向き直ると、ルドルフ達の会話に参加する体制を取りました。


「皆の前でなら話してくれるんだろ?なら、もう話せるよね?」


 にっこり笑いながらそう訊ねた僕に、コローレもにっこりと笑いながら答える。


「えぇ。ですが、またシャーロットさんがいらしていません。彼女がいらしてからお答えしますよ」



 まだ焦らすんかい!!


 思わず突っ込みを入れそうになった僕の耳に、鈴を転がした様な可愛らしい声が響きます。


「あら、私なら此処にいますわよ?お久しぶりですね、コローレさん」


「あっ、シャーロットさんおはよ~」


「クレアさん、おはようございます」


 ブロンデよりも一拍遅れながら、僕も此方に歩いて来るクレアさんに向けて挨拶を交わします。


「皆さんおはようございます。それで?何のお話しでしたの?」


「実は――」



 僕の机に手を置きながら首を傾げたクレアさんに、僕はこれまでの事情を簡単に説明しました。


「なる程。コローレさんが今までどこにいらっしゃったのか、ですのね?それは私も気になりますわ!」



 ほらっ、クレアさんもそう言ってる事だし、さっさと喋っちまった方が君の為だぜ~?


 僕、ルドルフ、ブロンデ、そしてクレアさんの耳目がコローレに集中する。


 ふと周りを見ると、どうやら僕達だけではなくて教室中が聞き耳を立てているようです。


「分かりました。皆さん揃ってしまいましたし、お話し致しましょう」


 とうとう観念したのか、コローレは軽く両手を上げて降参のポーズを取った。


「先ずは此方をご覧下さい」


 そして出されたのは一枚のカードでした。


 これは?と僕が聞くとコローレは答えます。


「執事・メイド協会のライセンスカードに御座います。私は1年かけてこのライセンスを取得して参りました」



 フンフン。


 と教室のあちらこちらから相槌の言葉が漏れ聞こえてくる。


「そして、此方のライセンスを取得する為には、自分がここだ!と決めたお屋敷に実際にお仕えし、そこを取り仕切る執事長に合格を頂かねばならないのです」


 ホウホウ。


 また教室のあちらこちらから相槌の言葉が漏れ聞こえて…。


 そんなに気になるなら皆もっと近くに来れば良いのに…。



「じゃあ、コローレは何処のお屋敷にお仕えしてライセンスカードを貰ってきたの?」


 おっと、周りを気にしている場合じゃなかった!


 そうそう。


 僕が聞きたいのは、コローレがこの1年何処に居たのかって話しなんだから。


 コローレはブロンデからの質問を受け、少し焦らす様に周りを見回した後でこう言いました。


「私は、この1年…」



 その言葉を聞き、周りの注目が更にコローレに集まって行く。



「「「「この1年?」」」」


「シエロ様のご自宅におりました」


 は?


 教室中の時間が一瞬止まったかの様な錯覚を起こした。


 この教室の中だけが、まるで外の世界から切り離されてしまったかの様に静寂に包まれます。



「「「「「はぁーー!?」」」」」


 そして次の瞬間。


 動き出した時と共に、聞き耳を立てていたクラスメイト全員が疑問の叫び声を上げました。



《ガチャッ》


「皆さんおはようござい…。あれ?皆さん、どうかしたのですか?」


 思わずコローレの方を向き立ち上がった者、驚きの余り椅子から転げ落ちた者、何故かニヤニヤしている者等、クラスメイト達が皆驚愕&混乱の極地に陥ったその時、担任のランスロット先生がタイミング良く教室に入って来たのでした。





ニヤニヤしていたのは誰でしょう?


本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。


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