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百五十九話目 やって来たのは誰?な日



 明日、裕翔さんのお仲間が学園(ここ)へやってくる…。



 僕は入学式の受付業務をやりながら、明日の事ばかり考えていた。


 あっ、勿論受付業務を疎かにしてるとか、適当にやってるとかではないですよ?


 人の切れ間とかにフと考えてしまってるだけで…。



 ……………。


 裕翔さんは【ウミヒコ】って言ってたな…。



 実は、僕にはウミヒコって名前の幼なじみがいましてね?


 そいつ、ある日突然姿を消してしまったんです。



 僕が21歳になる年の事でしたかね?


 成人式が終わって朝まで一緒に呑んで騒いで、じゃあ次はゴールデンウイークにな?って笑い合ったのが、奴を見た最後でした…。


 偶々サークルの集まりがあって、どうしてもゴールデンウイークに地元に帰る事が出来なくなった僕は、宇美彦に謝罪メールを送りました。


 そしたら彼からは【じゃあ夏休みに会おううぜ!】って明るく返事が返ってきて…。



 宇美彦が消えたのはその次の日。



 僕にメールを送ったのを最後に携帯の電波が入る事は無く、宇美彦がいる地元から、車で3時間以上かかる僕の所にまで警察が来る始末。


 警察が家に来て事情を聞かれた時に始めて、僕は宇美彦が行方不明になっている事を知りました。


 そして、宇美彦から届いたメールの提出やら、僕の当日のアリバイやら自殺の兆候は無かったか?とか根ほり葉ほり詳しく聞かれ、僕が宇美彦に何かしたんじゃないか、と言う疑いは晴れたものの、【宇美彦が行方不明】と言う事実だけが残り……。



 確か亜栖実さんがこっちに来たのは、僕がこっちに来る5年くらい前だと言っていましたよね?


 偶然ですかね?それは、宇美彦が突然いなくなった時期と重なるんです…。


 間違っていたら良い、そして、僕の知っている宇美彦はまだ向こうの何処かで生きていれば…。


 そう思うのに、会えたら、こっちにいたら、とついつい考えてしまいます。



「スイマセン、受付は此方ですか?」


「あっ!はい、そうですよ?お名前をお伺い出来ますか?」


 パタパタと小さな羽を動かして飛んできた、ドングリまなこの愛くるしい鳥族の女の子に受付の説明をしながら、やっぱり明日来るウミヒコさんが【森野宇美彦】だったら良いのにな…、と僕はぼんやり考えていた。




――――――


 明けて次の日。


 裕翔さんに言うのすっかり忘れてたけど、今日はいつもよりも授業が短かったんでした(笑)


 新1年生達が校内見学で、学園内を楽しく見て回るのの邪魔にならない様に、先輩達の授業も少し早めに終わらせるのです。


 と言う訳で、当然放課後になるのも早い訳で…。


 早めのお昼を食べたらやる事も特になくなり…。


「もう校門前に来ているというね…(笑)」


『シエロ、昨日からソワソワしっぱない何ですもん。どっちにしたって、僕から薦めてましたよ…』


 うん、ありがとうフロル…。


 腰に手をあてて、ヤレヤレと溜め息を吐くフロルを見ていると、何故か感慨深いものがこみ上げてくる。


 そっか、良く考えたらフロルももう6歳だもんな~。


 フフフ、随分大きくなったよね?


『僕は昔からビックな男でしたよ?何たってシエロから生まれたんですからね!!』


 僕から生まれた、とか何か人聞き悪いから言わないでよね?


 フロルはスプラウトさんから貰った種に、僕が端正込めて水と魔力を与えたから生まれてきたんだよ?


 生まれたのは綺麗なピンクのお花からで、僕からじゃないでしょ?


『どっちだって一緒なのですよ!シエロの魔力から生まれた事に変わりはないんですから!!』


 ん~、そうなのかな~?


 そう言ってふんぞり返るフロルは、あの頃から変わらず可愛らしいけれど、見た目が大きくなったからなのかどこかチグハグで…。



 マドラさんの件が下火になった頃、1度目の眠りについたフロルは僕が3年生に進級したその日の朝に目覚めました。


 僕が作った人工魔石の殻を突き破るようにして出てきた彼のその姿は、眠る前のあどけなさは残しつつも、かつてのスパークもといカグツチ君の様に【青年】と言った風貌で、急激に変わってしまったその姿に、僕達は当人も含めて大いに戸惑いました。


 だって、いきなり等身が高くなるわ、力や魔力が強くなるわで、フロル自身も上手く制御が出来なかったんですから…。


『あの時の話しはしないで欲しいのですよ!今の僕は完璧妖精なのです!!』


 フフフ、そうだよね~?



「なぁ、此処が聖ホルド学園であってるかな?」


 フロルと楽しく話していた時でした。


 突然背後からかけられた声に、僕は思わず固まりました。


 約束の時間よりも随分早いし、フロルと話すのに夢中で気付くのが遅れたって事もあるのですが、何よりその声がとても懐かしいものだったからです…。


 慌てて声のした方に向き直ると、声をかけてきた人物は急に謝りだしました。


「あっ、悪い!驚かせたかな?俺は怪しい者じゃないんだ。此処で待ち合わせをしていて…」


 その慌てっぷりが何だか可笑しくて、思わず吹き出します。


「なっ、何?何で俺笑われてるんだ?」


 あ~、これこれ…。


 この感じ…。


 間違いないや…。



 僕の目の前には、僕の記憶よりちょっと日焼けして、逞しくなった幼なじみが立っていました。






フロルは2等身5cm→5等身13cmくらいで考えております。



本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございます。


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