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百五十七話目 6年生になった日


3月4日の更新です。


本日更新分より章が新しくなりまして、学生編最後の章となります。


また宜しくお願い致します。





「だぁ~かぁ~らぁ~!何でルドルフはすぐにスライムに突っ込んでいく訳?」



 漸く寒さも緩み、雪がまだそこかしこにチラホラ残ってはいるものの、色とりどりの花がポツポツと咲き始め、この国にも春が近付いてきた、そんな頃…。


 どこまでも澄んだ青い空に、少年の怒りの叫び声が響き渡っていた…。



「悪かったって…。誰も怪我しなかったんだし、そんなに怒るなよ?なっ?ブロンデ~」


「い~や!今日は言わせてもらうもんね!!あんなに無闇矢鱈に突っ込んで行かれたら、こっちの身が持たない!ルドルフは少し反省するべきなんだよ!!シエロもそう思うでしょ?」


 一見すると洞窟の様な石造りの入り口から姿を現したのは、4人の少年少女達。


 皆一様に着ている物が薄汚れてはいたが、大きな怪我は無い様だ……。



「まぁ、ね…。ルドルフは確かに1つの物事に捕らわれ過ぎてるよね?今は僕らが側にいるから何とかなっているけど、このままだと腕の2~3本は無くす事になっちゃうかもね?」


「こっ、怖いこというなよ…。第一、俺に腕は2本しかねぇよ…」


 そんなにビビるくらいなら少しは自重してくれ…。


 あっ、お久しぶりです。


 僕達は今、学園内にある特別なダンジョンから出て来た所なんですよ。


 現在僕達は地下120階まで進んでいますが、最下層まで後どれくらいあるのか…。


 で、そんな最下層を目指す途中でスライムの群れを見つけたルドルフが、例の如く脇目も振らずに突っ込んでいくと言う珍事が起きまして…。


 しかもスライムって、粘度の高い液体を吹きかけて攻撃してくるので、弱いけど厄介なんですね?


 更に今回のスライムはただのスライムじゃなくて、ちょっと特殊な麻痺毒持ちのスライムだったので、ご覧の通りルドルフはブロンデからお叱りを受けていると言う訳です(笑)


 いや~、やっぱり階層が下がってくると、敵も強くなるもんですね~?


「今回は運良く誰も怪我無く倒す事が出来ましたが、階層が下に下にと下がっていけば、もっと強い魔物が出て来ます。スライムに気を取られている間に後ろからざっくりと行かれてしまう場合もあるのですわよ?ルドルフさんは、そうなった時、責任が取れまして?」


「うっ…。そっ、そうだよな…。皆悪い、気をつけるよ…」


「本当だよ…。ルドルフはシエロがいるからって気を抜き過ぎなんだ」


「悪かったって!次からは気をつけるから…」



 さて、ルドルフもシャーロットさんからの言葉を受けて納得してくれたし…。


 改めましてこんにちは。


 僕はシエロ・コルトと申します。


 あれから3年の月日が流れ、僕は今年6年生、11歳になりました。


 とは言ったものの、背は未だに低いままなんですけどね…。


 隣にいるシャーロットさんと並ぶと、お姉さん(159cm)と弟(137cm)くらいの身長差が生まれてしまった訳で…orz


 誰だ!今お姉さんと【妹】の間違いだろって言ったのは!!


 昨日もスミスさんからからかわれたばかりなんだから、そこはソッとしといてよ!!


 第一、この世界の人達の平均身長が高いだけだい!!


 うちの母さんだって低めなんだから、しょうがないでしょ?


 何で僕は父さんに似なかったんだろう?


 兄さんが羨ましすぎる!何であの人が190cmも有るのに、僕は137cmしかないんだ!!


 きっと僕の分の身長まで兄さんか妹が吸い取ったんだ!!!



 はぁ…、はぁ…。


 あ~、こほん。


 失礼、取り乱しました。



 あっ!そうそう、話しを変える訳じゃないですが、今僕はルドルフ、ブロンデ、シャーロットさんの4人でパーティーを組んでいるんですよ?


 5年生に上がる時に、4人~6人くらいでパーティーを組む!と言う事になったのですが、何を思ったのか同じ年にコローレが一流の執事になるべく修行の旅に出てしまいまして…。



《「必ずや、世界一の執事になって戻って参ります!」》



 何て笑顔で出て行っちゃったんですよねぇ…。


 はぁ…、あいつは本当に何を考えてるんだろう…。



 と言う訳で、急にメンバーが1人足らなくなって困ってた時、シャーロットさんが別のパーティーを抜けてまで僕達のパーティーに入ってくれたんです。


 正直パーティー解散の危機だったので、あの時は本当に助かりました…。



『シエロが高等科に進まない何て言うからですよ…。だからコローレさん…』


 ん?何か言ったかい?フロル?


『何でもないのですよ!……ブリーズねぇね達、早く戻って来ないかな~って言ったのです』


 あ~、そうだよなぁ~。


 フロルも寂しいよね?


 えっと、ブリーズが3ヶ月前、クレイが半月くらい前だったっけ?


 カグツチ君の時もそうだったんですが、2人ともある日突然精霊になる準備が整って、今はどこか自分が安心出来る場所で眠ってるんです…。


 コローレが出て行っちゃった上に、更にブリーズ達もいなくなっちゃって…。


 いつも隣に居てくれた子達が一気に3人もいなくなっちゃうと言うのは――フロルは変わらず一緒に居てくれるけど――、思ってたよりも結構寂しいものですね?



「ふぅ…。今日は流石に少し疲れましたわね…。ダンジョンの中にテレポート装置があると言うのは本当に助かりますわ」


「本当だよね~?普通のダンジョンにもついてるのかな?」


「確か、殆どのダンジョンについてるらしいぜ?何でかは知らねーけど、すっげー昔に作られたダンジョンにさえテレポート装置はついてたんだってよ」


 そうそう、テレポート装置の技術が確定したのはつい最近のハズなのに、今より遥か昔に作られたダンジョンの中からもテレポート装置が発見された!って一時(いっとき)リペア先輩が1人で盛り上がってたっけ…。


 後に発表された専門家の見解によると、最初にテレポート装置を作り出した人が、ダンジョンの中に残されていたテレポート装置を真似て作ったんじゃないか?って事らしいんだけど、本当のところはどうなのかはまだ分かっていないんだそうで…。


 まぁ、ダンジョンの中、それも10階層ごとくらいの感覚でテレポート装置が設置されていると言うのが有り難い事に変わりはないので、これからもホイホイ使わせてもらうんですけどね?


 だって、一々1階から攻略していくのは骨が折れますから(笑)



「あっ、そうだ!シエロ、明日はまた入学式のお手伝いしに行くの?」


「えっ?あぁ、うん。明日は入学式の受付の手伝いをね?ランスロット先生から頼まれてるんだ…」


 何故か3年生になった年くらいから、1年交代でスクルド先生とランスロット先生の手伝いを交互にする事になっちゃってるんですよね?


 まぁ楽しいから良いんですけどね?


 良いんですけどぉ…。


「シエロ、お前また後輩から告白とかされちゃうんじゃね?」


 キシシ、と意地悪くルドルフが笑う。


 うぅ、痛いところ付いて来やがって…。


 図星だから、何も返せないのが余計に腹立つわ~(怒)



 しかし何で入学式、もしくはそれ絡まりの前後一週間くらいの忙しい時に限って、そう言う浮かれた奴らが出て来るんですかね?


 頭くるったらありゃしないですよ!!


「そんな奴が居たら、僕が懲らしめてやりますよ!」


 ん?


 聞き慣れた声が聞こえ、後ろから突如ふわりと抱きしめられる。


《キャー♪》


 おいおい…。


 親衛隊の人達を、こんなところまでゾロゾロ引き連れてくるんじゃありません…。


「フルスターリ、兄さんに心配はいらないから、取りあえず離れてくれるかな?」


「え~?せっかく兄様にお会い出来たのですから、もうしばし兄様を堪能させて下さいませんか?」


 そう言いながら彼女は、更に僕を後ろからキューッと抱きしめてくる。


 ………。


 まだ8歳のクセして、本当にどこでそんなタラし文句覚えてくるの?



 あんなに可愛かった妹のフルスターリは今や何処(いずこ)へ…?



 いや、まぁ今も可愛い事に変わりはないんですがね…?



 身長は彼女が2年生の春頃に抜かされ、誰に似たのかキリリとした切れ長な目と、ピンと伸びた背筋のせいでどこからどう見ても男装の麗人――あっ、制服だから一応スカート履いてるのか(笑)――、もしくは1人○塚。


 どこへ行ってもフルスターリの親衛隊が待ち伏せしている有り様で、僕とはまた違う意味でモッテモテ(死語)。



 きっと、僕とフルスターリは体と性別を間違えて生まれたに違いない。


 と思う、今日この頃なのでありました…(泣)





因みに親衛隊はフルスターリだけでは無く、シエロにもあります。


が、当の本人は全く気が付いていないという…(笑)


本日もここまでお読み頂き、ありがとうございました。



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