閑話 亜栖実と○○
いやっほ~☆
皆大好き亜栖実ちゃんだよん♪
えっ?そうでもないって?
またまた~、自分に正直に生きなよ☆
ってな訳で、1年契約で学園の臨時教師をしてた僕だったけど、居心地良すぎて結局3年居ました(笑)
あ~、宇美彦に怒られるだろうな~。
1年が3年だもんね~?
その間、僕の代わりをしてくれてた訳だし~…。
あっ、宇美彦ってのは僕のパーティーメンバーの1人でね?
森野宇美彦って言うんだ♪
僕より1つ年下何だけど、頼りがいがあってさ~?
僕らの参謀様って感じなんだよ☆
で、その参謀様に3年間も僕の代わりに魔族領の偵察をさせてた挙げ句、現在進行形で待ち合わせた時間に遅れていると言う…。
だから、今割とガチで焦ってます(笑)
あ~あ、絶対怒られるよね~!?
――――――
「怒るに決まってんだろ!!」
《カランッ》
宇美彦の怒声に反応して、グラスの氷がカランと鳴った。
まぁこれまで好き勝手やって迷惑かけてたのは僕だから、宇美彦に対しては平謝りするしかありましぇん!
僕は、座ってるテーブルに頭を擦り付ける勢いで謝り倒しながら、ちょびっと言い訳をした。
「本っっっ当にごめんなさい!!訓練見てた子のレベルが、面白い様にグングン上がってくもんだから、1人でも魔族と戦える様になるまで鍛えてあげたくなっちゃって…」
「あっ?そっちは別に怒ってねぇよ?だって、そいつも俺らと同郷だったんだろ?強い仲間が増えるなら寧ろ良い話しじゃねぇか…。そうじゃなくて、俺はお前が1時間以上も遅刻して来た事に怒ってんだよ!!いつもいつも遅刻して来やがって…。今日と言う今日は許さねぇからな!?」
いやーん!モリリンが怒ってるのってそっちなのー?
そこは亜栖実ちゃんに免じて見逃してよ~(泣)
――――――
《カラランッ》
あっ、氷がまた鳴いた…。
「で?その少年ってのはどんな奴なんだ?」
まさか1時間遅刻して2時間お説教されるとは思わなかったよ…。
何だろう、お説教好きな人は2時間が目安になっているんだろうか…。
怒られ疲れてテーブルにグッタリと突っ伏していた僕に、スッキリした様子の宇美彦が話しかけてくる。
「え~?あっ、そうか…。此処で遠距離通信する訳にはいかなかったから、シエロ君について詳しく説明してなかったんだっけね?」
今僕達が居るのは、魔族領のド真ん中にある小さな街。
あっ、魔族領のド真ん中なんて言っても、魔王城からは少し離れた場所にあるし、ヒューマン族も魔族達に混じって普通に暮らせている様な、比較的長閑な街なんだよ?
そのお陰で、ちょっと言い方は悪いけど僕らみたいなのでも入り込みやすいんだ。
でもね?そんな街でも流石に魔法を使った通信機器は魔王軍に傍受される危険性があるからって、月に一回手紙のやり取りをするくらいが精一杯でさ…。
しかも、あんまり封筒が分厚くても怪しまれるかもしれないからって、極力短く要点だけをまとめた手紙ばかりを送りあっていたんだ。
だから、僕が訓練を見ていたシエロ君の事も【僕らと同郷】【男の子】【そこいらの下手な女子より可愛い】って事くらいしか話せなかったんだよね~。
「裕翔からの手紙は魔王軍関連の話しばかりだったし、イマイチそのシエロ何某って奴の素性が分からないんだよな…。アレか?名前的に外人か転生系か何かなのか?」
「あれ?そこも話してなかったっけ?シエロ君はこっちに転生して来た子で、邪神関連の事件に巻き込まれて死んじゃったんだって…。」
ん?そこまで用心してたクセに、こんな事をおおっぴらに話してて大丈夫なのかって?
実は此処、僕らが借りてるお家の地下室なんだけど、僕の能力を使って魔改造してあってね?
この部屋で話した事は例え魔王軍に傍受されたとしても、猥談(笑)とか世間話とか、兎に角全然違う話しにすり替えられる仕様になってるから無問題なのだよ!えっへん!!
あっ、因みに、前にシエロ君を連れてった地下室は此処じゃないからね?悪しからず…。
で?何の話しだっけ?
あっ、そうそう、シエロ君の話しだったね(笑)
「邪神関連の事件?」
「うん、邪神の影に障っちゃった人間が居てね?そいつに何かシエロ君が逆恨みされてて、車で何度も―――」
僕が、シエロ君から聞いた話しを宇美彦にも話して聞かせると、宇美彦は苦々しそうに顔を歪ませた。
シエロ君が余りにあっけらかんと話してたもんだから、その時は僕もあんまり深く考えてなかったけどさ、あんまりにも死に方が壮絶過ぎるよね?
周りの人からも見捨てられて、誰も近くに来てくれないわ、逆に写メられてるわなんて、僕だったら「僕が何したよ!?」って叫んじゃうよ!
「そんな目にあっててもさ、シエロ君はどこも歪まずに素直なままなんだよね~?邪神の呪いの欠片のせいで記憶回路は歪んでたけど、それを取り除いたら余計に明るい子になってさ…。何か手を貸してあげたくなっちゃってね~?」
「ふーん…。まぁ、亜栖実がそんな風に手助けしてやりたくなる様な奴だってんなら俺も信じるよ。亜栖実の勘働きは異常な程良い仕事するからな?」
何だよその言い方~。
僕が直感勝負の野生児みたいな言い方しt…。
何だと~?その通りだと~?
ムキー!!
「はいはい。で?シエロって奴の昔の名前は?お前の話しから推測するに、俺のタメくらいだろ?もしかしたら知り合いかもしれねぇからさ?」
あ~、そっか…。
確かにシエロ君は僕の1個下って言ってたから、宇美彦と同い年か…。
それにしても、知り合いって事は無いと思うけどなぁ~。
まぁ、向こうの世界から僕らみたいに飛ばされてくる人なんてそうはいないから、ちょっと縋ってみたくなる気持ちも分かるけどねぇ?
「シエロ君の旧名は木戸宙太だよ?どう?知り合いだったかな?」
何て考えつつ、シエロ君の昔の名前を宇美彦に伝えると、宇美彦は面白いくらい固まった。
えっ?
何?マジで知り合いだったわけ?
「亜栖実、ソラタって漢字でどう書くんだ?ソラタ何て名前の奴はそこら中にいるだろ?」
いや、ソラタなんて人はそこら中にはいないと思うんだけど…。
何かうちの参謀が可笑しな事言い出しちゃったけど、まぁここで嘘吐いても僕には何の得も無いし、僕は優しいから本当の事を教えてあげる事にした。
「宇宙の【宙】に桃太郎の【太】で【宙太】だって言ってたよ?【木戸】はそのまま【木の戸】ね?」
「………。まっ、マジか…。俺、今すぐ会いに行ってくる!」
「はぁ?会いに行くったって、もう今日はモーント方面の乗合馬車は無いよ?空を飛ぶのも、テレポートも禁止にしたのは君だろ?それに、ちゃんと引き継ぎしてってよ?」
「あぁ、そっ、そうか…。あーー!くそっ!!」
《ドサッ》
勢い良く立ち上がった宇美彦は、僕に静止されるとそのままの勢いでまた椅子に腰を下ろした。
冷静な宇美彦らしく、我を失いかけても凄く聞き分けが良いなぁ…。
これが僕とかなら、絶対止まらずに突っ走ってく自信があるね(笑)
「で?その反応を見る限り知り合いっぽいけど、ソラタ君は君の何な訳?ただの友達とか、クラスが一緒だったとかじゃなさそうだけど?」
「はぁーー。明日の朝イチの乗合馬車は何時だったかな…。あ?俺と宙太の関係?それは―――」
敢えて引かせて頂きました。
続きは本編の方で…。
と言う訳で、明日から新章スタートとさせて頂きます。
本日もここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。