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百五十二話目 真犯人とその狙いの話しを聞いた日



 謎の人形使いマドラが狙っていたのは、僕ではなくて同じクラスのアリス・ルイスさんだった。


 マドラは本名をマドラ・ルイスと言って、なんとアリス・ルイスさんの実のお姉さんだった事が判明。


 何でお姉さんが妹のルイスさんを!?と思っていたら、マドラさんは魔王の手に掛かって感情を持たぬ人形兵にされていたっていうから、さぁ大変!!


 裏でマドラさんを操っていたのは誰なのか?


 そもそも魔王には僕の情報が行ってないって話しは何だったのか!?


 そしてそして、何故ルイスさんは狙われたのか!??


 それを今から別行動を取っていたコローレが説明してくれるそうです。


 では、どうぞ!



「ちょっと前置きが乱暴すぎる気も致しますが、取り敢えずアリス・ルイスさんが狙われる事は暫くありません。とだけ、先に言っておきます」


「って事は、マドラを操っていた犯人が分かったって事?」


 今僕達は亜栖実さんの部屋で話しをしています。


 メンバーは僕、コローレ、亜栖実さんと、チームきなこもちのリーダー裕翔さん。


 ルイスさんと寮のラウンジの前で別れた数時間後、亜栖実さんから急に召集を受けて集まったんだんだけど…。


「えっ、本当かい?コラさん!?」


 おいおい。


 亜栖実さんから召集を受けた割には何も事前にコローレから聞いてないってのは、もしやこの人達のデフォなのか?



 はぁ、まぁいいや。


 続けるね?


 マドラさんは何らかの方法で魔王に命を奪われた後、特殊な魔道具を首の後ろに取り付けられ、自由を奪われて人形兵になった。


 そして、人形兵として大切な妹を攫う、もしくは始末する役割を命じられていた。


 魔王が人形兵を直接使うことはないらしいから、絶対近くでマドラさんを操っていた奴がいたはずなんだそうだ。


「えぇ。裕翔の仰る通り犯人は分かりました。そして、先程その犯人を理事長に引き渡して来た所です」


「で?誰だったの?僕も知ってる人?」


 亜栖実さんも僕と同じ気持ちらしくて、さっきから興奮が修まらないみたい。


 あの2人のお別れシーンを見てしまったら、何が何でも犯人を懲らしめたくなるってもんだよね?


 もし叶うのなら、僕だってその犯人を思いっきり殴ってやりたいもん!!



「亜栖実さんがご存知かどうかまでは知りませんが、犯人は用具部の主任者【イペット・アモイ】と言うカバの獣人です」


 殴って蹴って、更に回復してそれを何回も繰り返したってあの2人がされた事に比べたらお釣りが大量に来るってもん、だ…?


「コローレ、今、誰って言った?」


「シエロ君も良くご存知のイペット氏が今回の黒幕だったんです」


 いっ、イペットさん?


 コローレは淡々と話してるけど、僕達魔道具研究会が良くお世話になってた人が黒幕だったなんて…。


 それに…。


 僕の脳裏に、ルイスさんが嬉しそうにイペットさんについて話していた姿が思い浮かぶ。


 まさか、自分が頼っていた、信じてきってた人がお姉さんを使役して苦しめて来た張本人だったなんて…。


 あ~!ルイスさんに何て話したら良いんだろう!?



「それでは続けますね?イペットは、学園の情報を魔王軍に横流しする役割を担っていました。これまでも新作の魔道具の情報や、めぼしい生徒達の情報等を流して報奨金や品物を受け取っていた様です―――」



 イペットがこの学園にやって来たのは約10年くらい前。


 情報を流し始めたのはここ数年の事だそうだけど、元々彼は現在の魔王に崇拝していて、最初から魔王に情報を流す為に学園に潜入したんだって。


 最初の数年間大人しくしていたのは、自分が魔王軍だとバレない為に信頼を得るまではと、機会を窺っていたんだそうだ。


 そんなイペットが約2年前にとある情報を流した事で得たのが、マドラさんを含む数体の人形兵だったらしい。


 イペットが流したとある情報って言うのも気にはなるけど、イペットは人形兵を得た事で気持ちが大きくなり、更なる功績を狙おうと欲を出した。


 更にそんな時、自分を頼ってマドラさんの妹、つまりルイスさんが学園まで逃げ込む様にやって来た。


 しかも他の魔族達がルイスさんの事を探している様だと知ったイペットは、これでルイスさんの事を魔王に献上すれば自分の地位が上がるかもしれないと思ったそうだ。


 でもそうしなかったのは、ルイスさんがマドラさんと同じく魔法属性を3つ持っている、テルツァ(3)だったから―――。



「えっ?ルイスさんってテルツァだったの?だって、自己紹介の時は…」


「イペットは、彼女がやって来た時にステータスの照会を行いました。その際テルツァだと言う事に気が付いた様ですが、彼は理事長には彼女が魔族で、魔王から命からがら逃げ出して来た事だけを話し、彼女の情報を魔王軍に流す事はしませんでした。理事長も、アリスさんの事情を鑑みて、ヒューマン族のプリーモ(1)として学園に登録したそうなのです」


 はぁ~。


 そこまでしてわざわざ学園に入学させるとは…。


 確かに此処なら理事長特製の結界もあるし、他の魔族が狙ったところで中に入る事は出来ないもんね?


 僕を襲ったあの使い魔は、結局【外】からじゃなくて学園の【中】から放たれた物だったそうだし、やっぱり外から入るのは困難だって事みたい。


「アリスさんがテルツァだと知ったイペットは、ここで充分な力をつけさせてから献上した方が魔王の力となるだろうと思い、学園に入学させたそうなのですが―――」


 そこでコローレはチラリと僕の方を見る。


 あ~なるほど、同じクラスにクィンタ(5)の僕がいたのね…orz



 だったら、どうせルイスさんとは同じクラスだし、頃合いを見て2人まとめて献上しちゃえ!とか思ったのかもなぁ…。


 その方が功績も評価も上がるし、お得そうだもんね?


 で、その間の繋ぎの功績をと思ってドラゴンやリザードに手を出した事が運の尽きだった、と…。


「でもなんで?情報を流していただけの奴が、なんでそんな大型の魔物を使役しようだなんて思ったの?」


「イペットはマドラさんの他にも人形兵を魔王から預けられていたそうで、その中に【テイマー】がいたそうなんです」



 【テイマー】って言うと、【テレポーター】とかと同じ特殊スキルで、魔物や野生動物何かを手懐ける能力のアレだよね?

 んー、マドラさんもそうだけど生前の能力がそのまま使えるってのは本当に厄介だよなぁ…。


「イペットはそのテイマーの能力と自身が作った魔道具を使い、ビッグリザードをイビルリザードへと人工的に進化させ、魔王に献上しようとしていました。ですが…」


「あぁ。兄さん達と接触しちゃった上に、カグツチ君に倒されちゃったんだね?」


 まさか兄さん達が命懸けで戦ったイビルリザードまでイペットのせいで発生した魔物だったとはね?


 どうやったらビッグリザードがイビルリザードに進化するんだか、見てみたい様な気も…。


「あれ?じゃあ、もしかしたらリトルリザード達が大量発生したのは?」


「恐らくはイペットの仕業で間違い無いでしょう」


 うわぁ…、本当にろくでもない事しかしないな…orz


 でも献上するはずだったイビルリザードを、何で兄さん達にけしかけたりしたんだろ?


 もしかして上手いこと制御出来なかったとか?



「あぁ、コロさんはリトルリザードの大量発生とイビルリザードが発生した理由を調べていたんだったよね?」


「えぇ、学園側からその様に要請が来ましたからね?その時はまさか、自分が殺される羽目になるとは思ってもいませんでしたが…」


 そりゃあ誰だってそんな事思わないよ(汗)


 コローレは、ヤレヤレと首を振りながらため息を吐いた。


 イビルリザードの使役に失敗したイペットは、次にドラゴンを操ろうとした。


 もう少しと言うところにクラレンス神父達がやってきて、また失敗。


 その時、自分の顔を見られたと思い込んで私を襲ったのでしょう、とコローレは続けた。


 その後僕が襲われたのは、クラレンス神父がしていた眼鏡を狙ったとばっちりって訳じゃなくて、不完全ながらもどうにか操れたドラゴンをクラレンス神父達にけしかけている間に、僕とルイスさんを連れて魔王領まで逃げるつもりだったんだって。


 まぁ、イペットが思うよりも早くクラレンス神父達が戻って来ちゃったから、僕は攫われずに済んだんだけどね?


 だから、眼鏡に内蔵されたカメラの件を問いただそうとしたら、逆に何の事だ?って聞かれちゃったんだそうだ。


 その後はすぐ冬休みになっちゃったし、クラレンス神父は何とか排除したものの、更に強敵な亜栖実さんが学園に来て四六時中僕の近くに居るから、様子見するしかなかったって事か…。


「それで?これからアリスちゃんはどうなるの?まさか、学園から追い出しはしないよね?」


 えっ!?


 ルイスさん追い出されちゃうの?


 彼女、行く場所も帰る場所も無いんだよ?


「亜栖実さん、流石にそれは無いですよ。彼女が魔族で、魔王から狙われてしまっていると言う事は始めから分かっていたんですから、今回の件でイペットが処分されたとしても、アリスさんが追放されるだなんて事は有り得ません」


「そっ、そうだよね?アハハ、ちょっと心配になっちゃったもんだからさ?アハハハハ…」


 ほっ…。


 良かった~。


 あっ、でもさ?


「イペットの件は何て話したら良いんだろう?お姉さんの事だってショックだったろうに、信じてたイペットが実は魔王軍でした☆何て説明しづらいよ…」


「その件はランスロットにお任せしましょう。なんせ担任の先生ですからね?」


 うわぁ、久しぶりの腹黒コローレだぁ☆


 いやっ、ニコッじゃないから。


「シエロ君のピンチには遅れてくるわ、ルイスさんの異変には気が付かないわ、最近彼はたるんでいますからね?ここいらでしっかり先生の役割を果たしていただきましょう」


「コロさんがそう言うなら、ランさんにお任せしちゃおっか☆」


「ランスロットさんスイマセン。俺には2人を止められません…」



 おぉう、皆何だかんだランスロット先生に丸投げする気満々なんだね…。


 えっ僕?


 勿論丸投げさせて頂きますとも(笑)




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