百四十九話目 襲撃の日
2月22日、猫の日の更新です。
本日も宜しくお願い致しますにゃん☆
………、失礼致しましたorz
失礼ついでに、本日の更新分は微グロ注意!な表現の部分が御座います。
苦手な方はご注意頂ければと思います。
「わ~、これが人形の本体なんですか~?」
「そうなの☆可愛いでしょ?なの♪」
軽く知恵熱が出そうになった明くる日(笑)
僕は約束通り、ルイスさんの使い魔達に会わせてもらっていた。
場所は昨日と同じ修練場。
皆は自主トレするにも最新の的があったり、トレーニング用具が揃ってる屋外実習棟に行っちゃうか、体育館で組み手の練習してるかだから、案外此処って誰にも使われてない穴場だったりするんだよね☆
だから人目につかずに亜栖実さんと訓練が出来たり、こうやって使い魔を見せてもらっても安心って訳です♪
僕の使い魔的妖精さんもスッゴく可愛いんだけど、ルイスさんに見せてあげられないのが残念だ。
あっ、今のブリーズ達には内緒ね?
またフロルを残して出掛けてるから、こんな本音も漏らす事が出来るんだからさ…。
因みにフロルは朝から寝っぱなしだから問題なし(笑)
「僕さ~、もっと禍々しい物だと思ってましたよ」
ルイスさんから見せてもらったインスタント使い魔用の形代は、向こうの世界で良く見るような人形に近かった。
大きさも思ったより小さくて、例えばUFOキャッチャーとかの景品のぬいぐるみ(中)くらいの感じかな?
分かりづらいか(笑)
ん~とね、大きさが大体30cmくらい?
ラビッスよりもちょっと小さいくらいかな。
布に綿を詰めて出来た丸い人の形をしたそれは、顔にはボタンの目と刺繍で出来たニッコリ笑顔の口が付けられていて、人間さながらに洋服も着てるし、毛糸を編み込んで作られた様な髪の毛もある可愛らしい物だった。
人によって好みは別れそうだけど、僕は結構好きな部類のお人形さんだね!
ん~、とは言え僕を襲ったあの顔無しのひょろ~んとしたアレからは想像がつかない見た目だよなぁ…。
何だろ?やっぱり使役者の趣味とかで変わるのかな?
「本当は使い魔ちゃん達にお顔は付けないの。お姉ちゃんの人形も、もっと簡単な形をしていたの」
あっ、やっぱり?
「そう言えばさ、お姉さんの人形も理事長から返してもらえたんでしょ?どれだけ違うのか見ても良いですか?」
「うん!良いの☆シエロ君に貰った魔法の袋のおかげで、いっつもこの子達と一緒にいられるの!!だから、そのお礼なの♪」
おぉ~、僕が空間属性の練習用に大量生産した魔導袋が役に立っていたんだなんて、何だか感慨深いなぁ…。
そう言いながらルイスさんが袋からズルンッと出してくれた人形は、確かにあの時僕がぶつかった人形だった。
大きさこそルイスさんの物と同じだけど、此方の人形は人の形はしてるけれど髪の毛も顔も無く、辛うじて服と呼べそうなくらいの雑な作りの物を羽織っているだけ。
性格が出ると言うか、何と言うか…。
これが動くと、あの得体の知れない不気味な奴になるのか…。
ひょろりと身長が高くて、何とも掴み所の無い、思い出したくても上手く特徴が思い出せない様な、あの奇妙な感覚の…。
うぅう、思い出すだけで背筋がゾクゾクするよ!
「お姉ちゃん、お裁縫下手くそだったの。これは使い捨ての人形だ!なんて言ってたけど、この子はお気に入りの子だったの」
うぇっ?裁縫が苦手なだけなの?
なっ、なるほど…。
これは適当に作ったんじゃなくて、愛をたっぷり込めて作った人形だったのか…。
そんな人形を、不気味だとか禍々しいとか奇妙だとか言ってスイマセンでした!マドラさんorz
怨念×
愛情○
うわぁ~い!込めてるものが全然違ってたよ~(汗)
うぅ、やっぱり僕だけだといらない事ばっかり言っちゃうなぁ…、コローレと亜栖実さんはまだ来ないのかなぁ?
後で行くって言ってたのにぃ!?
「えっ、と…。手に取って見ても良いですか?」
「シエロ君なら良いの☆はい、どーぞ!なの」
そんなに信頼されると後が怖い様な気もするけど、ルイスさんが僕に快くお姉さんの形見を見せてくれるって言うんだから、此処は有り難く受け取って…。
《ビクンッ》
僕が人形に触るか触れないかくらいの瞬間、突然使い魔人形が跳ねる様にして動いた。
「えっ!?」
すると、見る見るうちに使い魔は前に僕と遭遇した時の大きさに戻り、ルイスさんや僕に殴り掛かってきた。
殴り掛かってきた!?
「キャアッ!?」
「ルイスさん危ない!」
咄嗟に彼女を庇いながらなんとか使い魔の攻撃から逃れたけど、使い魔はしつこく僕達を狙ってくる。
「《光魔法:祝福の盾》!!」
《ガイン!ガインッ!!》
「ふぅ…」
何とか僕の魔法でも、あいつの攻撃は凌げるみたいだね?
因みに【光魔法:祝福の盾】は文字通り防御魔法の一種で、【盾】って言うわりにはドーム状の薄いバリアを張る魔法です。
《ガンッ!ガンガンッ!》
良かった…、亜栖実さんから防御魔法を習っておいて本当に良かった。
ルイスさんを庇いながら自分もってなると、まだ僕には荷が重いもの…。
ふぅ、流石に肝が冷えた…。
《ガンッ!ガインッ!!》
「ヒャアッ!?」
しつこいなぁ~。
「ルイスさん、大丈夫ですよ?この子に僕のバリアは破れませんから」
「うっ、うん…。ごめんなさいなの…」
「いいえ?大丈夫、大丈夫ですからね?」
「うん」
《ガンッ!》
「ふやぁ!?」
よしよし、怖くないですよ~?
と、ルイスさんの頭を優しく撫でながら、僕は目の前の使い魔人形を観察してみる。
しっかし、何でこんなにしつこく僕達を攻撃してくるんだ?
いや、もしかしたら僕【達】じゃないのかな…?
これ、どうやら狙われてるのは僕じゃなくてルイスさんだけみたいだぞ?
だってこの使い魔、ルイスさんが居る側ばかりをしつこく殴り続けているもの…。
でも何で?
これは彼女のお姉さんの人形で、彼女を狙う必要は…。
いや、そもそも何で死んだはずのお姉さんの使い魔が、あの時学園内に居たんだ?
《ガガンッ!ガンッ!ゴンッ!》
何か殴るのが激しくなってきたな…。
ふむ、こんだけ殴られてもバリアの方は全然ダメージくらってないみたいだから、もう暫く様子見してみるかな?
えっと、彼女はお姉さんを殺されてしまったから、それでイペットさんを頼って此処に…。
!!
まさか!最初から狙いはルイスさん?
お姉さんはもしかして囮になってたとか?
「ア、りス…。やっト、見つケた…」
《ガサッ》
と、急に高い様な低い様な不思議な声が僕達の居る修練場に響き渡り、茂みの中から1人の女性が現れた。
使い魔は女性が現れた途端に僕達への攻撃を止めると、茂みから這い出る様にして出て来た女性の側へピタリと寄り添って動かなくなる。
そして何処か不格好に、カクカクとぎこちなく歩くその女性の顔はルイスさんにとても良く似ていて、昨日彼女が見せてくれた角と同じ色の角が、女性の耳の後ろ辺りからも生えていた。
違うのはその女性の角は片方だけで、大きさがルイスさんの倍以上あるって事くらいかな?
2人目の魔族、か……。
《ポタッ》
知らず知らずの内にかいていた冷や汗が、頬を伝って地面に落ちる。
一見冷静に観察してる風を装っているけど、恥ずかしい事に現れた女性が放つ禍々しいオーラに足が竦んで、ただ逃げられないだけなんだよね?
何をしてくるのかも分からないから、下手に祝福の盾を解除する事も出来ないし…。
それに、このオーラ…。
これは遠足の時、僕らが感じたのと同じオーラだ…。
って事は、亜栖実さんが戦ったのはやっぱりこの人の…。
「お、姉ちゃん…」
今まで僕にしがみついて耳を塞いでいたルイスさんが、徐に言葉を発した。
この禍々しいオーラに当てられて、顔は依然よりも増して真っ青だし、足もガクガクと震えているけど、彼女は真っ直ぐな瞳で目の前のお姉さん?を見つめていた。
「ルイスさん、本当にあれが君のお姉さんなの?」
「そうなの…。でも、何でお姉ちゃんがここにいるの?だって…、だってお姉ちゃんは…」
ルイスさんは更に僕にしがみつきながら、震える声を絞り出す様にして答えてくれた。
良かった、僕にしがみついてくれるだけで…。
お姉さんだ!何て、そっちに走り出されたらどうしようかと思ったよ…。
まぁバリアがあるから、飛び出した所で外には出られないけどね?
「アりス、どウしタノ?お姉ちゃンよ?迎えに来タノよ?さぁ、こッチへいラっしャイな…?」
「うっ!?」
伏せていた顔を上げたマドラさんは、一言で言って異様だった。
彼女の右目には目蓋が無く、左目には辛うじて目蓋はあったものの涙を流す様に血が流れ、耳まで裂けた口は通常のサイズになる様に雑に糸で縫われていた。
よく見ると、羽織っているローブの下から覗く腕や足にも縫い目らしき傷跡が至る所に…。
そして、さぁ!と伸ばした腕の一部に至っては変色し、グズグズに腐っていた。
「うぷっ」
思わず吐き気をもよおすその姿は、誰が見ても明らかに正常ではないと言う事だけが分かる。
「お姉ちゃん?何、そのかっこ…」
「ァりス、迎えニ、来たわょ…?」
マドラさんはルイスさんの質問に答える事無く、壊れた人形の様に彼女を迎えに来た事だけを告げた。
「いや、あんなのお姉ちゃんじゃないの!!」
遂に彼女の大きな瞳から涙が零れる。
そして、ルイスさんの悲痛な叫び声が、修練場の辺り一帯に木霊したのだった。
もう1人の人形使い?の登場です。
本日もここまでお読み頂き、ありがとうございました。




