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百四十三話目 2度目の遠足の日



 葉が一段と大きく深みを増した事で、ジリジリと容赦なく照りつける暑い日差しから、森の木々達が僕達を守ってくれている。


 あ~、森を抜ける風が気持ちいい~。



 今日は2回目の遠足の日。


 これに参加すれば、最短で後2回の遠足でダンジョンへの道が開ける!と言う事もあってか、皆の興奮度がいつにも増して高い気がする(笑)


 とは言ってもさ~?流石にこの天気の中を遠足するって言うのはちょっと厳しい気もするけどなぁ…。


 空を見上げると、木の葉の隙間から漏れ出た夏の強い光が、森の中を歩く僕らに降り注いでいた。

 ん~、まぁ【日本の夏】って感じのジメッとした蒸し暑さは無いし、風が吹けば結構な冷たさの風が吹いてくれるし、まだ良い方なのかなぁ…?


 近年の遠足は、冒険者になる生徒達用って側面の方が強いらしくて、遠足ってよりは本当に戦闘・サバイバル訓練って感じなんで、色々な季節に遠足を行って体を慣れさせるのが目的でもあるんだって言うしねぇ?


 ウダウダ言ってないで、頑張れって事かな?


 何て、全部コローレからのうけ売りなんだけどね?(笑)



「はい、では目的の場所に着きました!今回の遠足で、皆さんには一組辺り4~5人のパーティーを作ってもらいます!」


「ただし!今回、まだ攻撃魔法を覚えていない、もしくは覚えたがまだ使いこなせない者は非戦闘員として、この場で戦闘員が狩ってきた獲物を解体する役目をしてもらう!」



 へぇ~。


 ランスロット先生から授業の時に、パーティーの話しはそれとなく出ていたけど、今日の為だったんだね?


 それにしても、攻撃魔法を【使いこなせていない人】は【非戦闘員】としてこの場所に居残りか…。


 じゃあ僕はこっち側だね…。


『『はぁっ?』』


『あえ?しえろ、おるしゅばんなんれしゅか?』


 え~っと、非戦闘員は何処で待ってれば良いのかな…?



「シエロ!俺とパーティー組むよな?」


「僕も一緒に良いでしょ?」


「私もお供させて頂きます」


 え?


 いや、僕は非戦闘員としてここで留守番を…。


「学年1位の成績な奴が非戦闘員なんて認められる訳ねぇだろ?」


「そんな事言ったら、僕だって非戦闘員だよ!?」


「いい加減、観念なさい」


 あ~れ~?


 僕はなるべく平和に生きて居たいのに~。



――――――


「それでは先生に報告するにあたって、どの様に配列を組みましょうか?」


「先ずは僕ら3人で前後交代しながら戦ってみるから、コローレは後ろでどんな風に采配したら良いのか確認してみてくれないかな?」


「ん?何でそんなまどろっこしい事するんだ?皆で防御しながら攻撃したら良くね?」


 僕がコローレにそう頼むと、ルドルフが首を傾げながら聞いてきた。


 おいおい、マジかお前…。


 やる気のない僕が、やっとやる気になってるんだからしっかりしてくれよ。


「ルドルフ~。この前もランスロット先生から習ったじゃない…。パーティーを組む時は、近距離、中・遠距離、全体を見る司令塔に分かれて陣形を整えて動ける様にするのが理想的だって!」


 僕が口を挟む前に、呆れ顔のブロンデが説明してくれる。


 3人の呆れ顔を前に、若干小さくなった気もするルドルフだったけど、後は僕らの会話を聞きながら思い出してもらうとしますか…。


「えっと、司令塔の代わりを遠距離攻撃ホルダーが出来るなら、回復役がそこに入っても良いんだったよね?」


 全く、同じ様に授業を受けてるブロンデはこんなにしっかり覚えてるのに…。


「それでしたら、シエロ君ならどちらもイケるのではありませんか?」


 え?僕?


 ん~、そうだなぁ…。


「出来ない事もないとは思うけど、回復ならコローレも出来るし…。何より今回は用具部から回復用の魔道具も貸し出されてるから、最初はこう!ってあんまり決めつけないで色々試してみようよ。全員が順繰りに交代してさ?」



 何にせよ、いくら僕らの仲が良くてもパーティー組んでサクサク連携が取れる訳ないんだから、初めは一番周りが見れて観察力も経験値も高いコローレに見てもらいながら進めた方が、それぞれの欠点が分かり易い気がするんだよね?



「分かりました。ではその様にランスロット先生にはご報告して参ります。その間に皆さんで最初の陣形を考えておいて下さい」


「分かった!!」


「報告任せちゃって悪いね?」


 僕がそう謝ると、何処かコローレは嬉しそうな顔をして薄く笑った後、ランスロット先生の方へ歩いていった。


 そこで何故嬉しそうな顔をするんだか意味が分からないよ…。


 あっ、意味が分からないって言えばさ…。


「ルドルフ、今の僕らの説明、って言うか話しを聞いてて理解できた?もしくは何か思い出せた?」


 すると、ルドルフは暫く眉間に皺を寄せたまま唸って、


「全然分からん!!」


 とふんぞり返りながら叫んだ。


 ………。


 お前は授業で何を聞いとったんじゃーーー!?


――――――



 逆三角形の陣形を保ったまま、僕ら4人は森の中を慎重に進んでいた。


 色々試してみた結果、最後のお試しフォーメーションとしてルドルフ、ブロンデを前衛としてコローレが後衛、僕が司令塔兼探索役って形になったんだけど…。



 ん?


「前方、ブロンデ側、10時の方角60m先にピッカウ2頭…。いずれも全長2~3m」


「ピッカウが2頭?」


「マジかよ…。本日最大の獲物じゃねぇか」


「流石はシエロ君。この様に緑生い茂る森の中で、60m先の獲物を的確に見つけられるとは…。」



 はっはっは、それほどでもないよ☆


 あっ、【ピッカウ】って言うのは豚と牛を混ぜたみたいな魔物でね?


 最大5m近くまで大きくなる魔物なんだけど、意外に気性が荒くて、こんなに大きな声を出すと…。


 ほら気付かれた!


「ピッカウ2頭に気付かれた!こっちに走ってくるよ!?皆、戦闘準備。ブロンデとルドルフは、いつ奴らが飛び出して来ても良い様に防御体制!コローレは僕の合図でピッカウに向けて目眩ましのフラッシュ!」


「「「了解!」」」


 ピッカウが此方に到達するまで、推定後5~6秒…。


 皆が怪我せず乗り切る方法を考えろ、考えろ~…。


 ルドルフの装備は、アイゼンさん特製のリトルリザードの骨を使った片手剣にリトルリザードの皮鎧。


 突進力の強いピッカウを相手にするなら、出来れば小さくても良いから盾を持ってて欲しかったけど…。


 えぇい!それは今更だ、帰ったらアイゼンさんに相談しよう。


 そして、ブロンデの方は両手に鋼鉄製の鋭い爪が3本ずつ付いた、ウ○ヴァリン仕様の手甲を武器に、ルドルフと同じくリトルリザードの皮鎧を付けている。


 ブロンデのは肘まで長い手甲に、薄い金属の板が鱗みたいにしてくっ付いている形のやつだから、とりあえず防御面は心配なし。


 コローレは杖くらいの長さの槍を2本持っていて、皮鎧等は装着していない。


 いつもの制服のまま森の中を彷徨いているって感じかな?


 それでも今まで一発も敵からの攻撃をくらわないんだから凄いよね…。


 んで、僕は昔倒したアイアンスネイクの表皮から作ってもらった皮鎧を薄茶色のローブの上から胸当てみたいにして身に着けてる。


 武器はランスロット先生にもらった杖と、アイゼンさんからもらった短剣だけだけど、今日は主に魔法、もしくは杖で殴る!とかして攻撃していたから、短剣に関しては腰の鞘から一度も引き抜いていなかった。


 んー、よしっ!!


 とりあえずコローレに目眩ましをしてもらって、ピッカウが怯んだところで急所の鼻を2人に狙ってもらうか?


 でもその時ピッカウの鼻の真横から生えてる牙に気をつけてもらわないとな…。


 ピッカウは子供でも鼻の真横に円錐形の鋭い牙が左右1本ずつ生えていて、体格に合わせて牙も鋭くゴツく成長していく。


 今回のは2~3mくらいだから、牙は大体50cm~1mくらいかな?


 牙は色々な武器防具、日用品なんかの素材としても珍重されてるから、出来れば無傷で回収したいところだね…。


《ざざざ、バキバキ、ざざざざざざざ》


 あっ、来る!



「皆!ピッカウの牙に気をつけてね!?3、2、1…。コローレ!放て!!」


「フラッシュ!」



 僕の合図に合わせてコローレがフラッシュを放つ。


「「ブボォーーー!?」」


 木の影から飛び出した2頭のピッカウは、不意の目眩ましに叫び声をあげながら首や体を震わせる。



 さぁ、戦闘開始だよ?







ピッカウは、食べる部位事に牛と豚の味がハッキリ分かれている不思議な生き物です。


意外なオススメはホルモン系、牛豚両方のいいとこ取りなお味がします☆


本日もここまでお読み頂き、ありがとうございました。



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