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百三十九話目 テレポーター襲撃事件の日



「んじゃあ、先ずは近距離テレポで感覚を掴む訓練からね?」


「はい、お願い致します!」



 ブロナーから直々に記憶属性の魔石を作って貰った次の日。


 僕と亜栖実さんは寮の裏山にて、テレポーターとしての訓練をしていた。



 とは言え、いきなり中・長距離の転移は危険だと言う事で、見える範囲の転移を繰り返して練習するんだそうだ。


「ん~と、じゃあねぇ…。あっ、あそこに見える切り株目掛けてテレポートしてみようか?」


「はい!頭の中で、その場所のイメージを固めて…。《テレポート!》」



 亜栖実さんに指定された切り株の姿を良く思い描き、その真上に僕がいる姿を想像しながら魔法を発動させた。


 大丈夫、テレポート装置で家に帰った時の感覚を思い出せばきっと上手くいく、はず…。



 すると僕の心配を余所に目の前の景色がグニャリと歪み、次の瞬間には指定された切り株の上に立っていた。


 やった!成功!!


「やったね~!一発じゃーん!!」


 さっきまで僕が立っていた位置から亜栖実さんが叫んでいる。


 亜栖実さんが叫ぶ程って事は、近いかと思ってたけど案外遠かったんだな…。


「次は、そこから、僕の前に戻って来てみて?」


「了解でーす」


――――――


「うん、あっちこっちテレポートしてもらったけど、大丈夫そうだね?」


「いきなりテレポートして入ってくるなって、ランチャー先輩には怒られちゃいましたけどね?」



 自分の部屋の外に転移したつもりが、うっかり部屋の中、しかも自分のベッドの上に転移しちゃったもんだから、いきなり現れた僕を見たランチャー・ロッド先輩にしこたま怒られてしまったのさ…。


 全くもう、一緒に居たマルクル先輩は笑って許してくれたのに、変な所で臆病な羊さんの特徴が顔を出すんだから~。


「マルクル先輩も誤魔化してはいましたが、相当驚いていらっしゃいましたよ?」


「えっ?そうなの?あら~」


「アハハ。あら~で済ますシエロ君も凄いよね?んじゃあ、ブロナー様から貰った魔道具貸してくれる?次はいよいよシエロ君のお家まで飛んでみるよ?」


 おぉ!いっ、いよいよですか…。


 ちょっと不安だけど、ちゃんとステータスカード持ったし、もし失敗して変な所に飛んじゃっても学園に戻る様に予め設定してもらった空間移動の魔石も持ったし、よし、大丈夫だね!


 えっ?空間移動用の魔石何てどうしたのかって?


 亜栖実さんに、学園の正門前を思い浮かべてもらいながらテレポートを発動してもらって、それをいつものように水晶柱に閉じ込めて作ったんだよ?


 これは、何回か試して絶対学園の正門前に転移出来るって分かってるから安心なのさ☆


 要はお守りだよね?


「んじゃあ、君のお家のテレポートし易そうな場所を想像して?」


「はい」


 僕は目を閉じて、よく遊んだ庭のド真ん中に自分が立っている姿を思い浮かべた。


「えい!」


《ゴッ》


「いった!?何してんですか亜栖実さん!それは軽く額に当てれば良いんですよ!?いくらなんでも殴るもんじゃないです!」


 いってぇ~、目瞑ってて無防備な状態でいきなり殴られるとか、思っても見なかったっての!


 あ~、目がチカチカしてるよ…。


「あれ?あっ、ごめん?」


 何故に疑問系なの!?


 あっ、こぶが出来た…。


「亜栖実さん、あんまりシエロ君に乱暴しないで下さいな。ヒール!」


「あっ、ありがとうコローレ…」


 コローレは、プンプン怒りながら僕の額に回復魔法を掛けてくれた。


 何か最近コローレがジュリアさんに見えてきたな…。


 何処に行くのも一緒だし、居ない時も呼べばすぐ横に来るし…。


 しかも気が付くと世話を焼かれているし…。



「あっ、でもちゃんと魔石に場所の記憶が読み取れたみたいだよ?」


「そりゃああれだけ凄い勢いでぶつけていて、読み取れなければ困りますよ!」


 あっ、コローレの手が冷たくて気持ちいい~。


 もう何でもいいや(笑)


――――――



「んじゃあ、気を取り直して…。いっちょシエロ君のお家までレッツゴーだよ!?さっき説明した通り、僕がコロさんを連れて先に君の家まで飛ぶから、君は僕の魔力を感じながらテレポートしてみてね?たぶん、1人で飛ぶよりは簡単に出来ると思うから」


「はい、やってみます…」


 こぶも腫れも癒え、ちょうど良いからそのまま少し休憩した後で、僕は今度こそ長距離のテレポートに挑戦する事になった。


 流石に初心者が自分以外を連れてテレポートするのは危険と言う事で、コローレの事は亜栖実さんにお任せしたんだ。


 んで、亜栖実さんがテレポートした後、続いて僕も飛ぶんだよね…。


 亜栖実さんは大丈夫☆って言ってくれたけど、ドキドキするなぁ~。


「んじゃ、コロさん行くよ?シエロ君もあっちで待ってるからね?」


「はい!あっ、亜栖実さん!連絡はしてありますが、うちの庭師とメイドに気をつけて…あ~、行っちゃった…」


 ちゃんと聞こえたかな…?



◇◆◇◆◇◆



 何かシエロ君が言ってたみたいだったけど、最後の方聞こえなかったな?


 僕がそんな事を考えながらまばたきしている間に、見た事がないくらいの花に囲まれた華やかな場所に出た。


「はぁ~、此処がシエロ君のお家かぁ~、敷地は広いし家もデカッ!!何だよ、シエロ君ってお金持ちの家の子だったのか~」


「シエロ様のお父上様は辺境伯様ですからね?この辺りの領主様でもおありな方ですから、その分お屋敷もご立派なのですよ」


 へぇ~、辺境伯かぁ~。


 そりゃこんだけ大きなお屋敷になる訳だ…。


 その割にはシエロ君が庶民的なのは、前世の記憶持ちだから何だろうか?


 あっ、でもスッゴい丁寧な敬語が使えてるんだから、その辺に育ちの良さが出て…。



 その時、物陰から凄いスピードで何かが飛び出してきた。


 咄嗟に自身の剣を腰から引き抜きガードすると、飛び出してきたのは兎の耳を持ったキュートなメイドさんだった事が分かった。


 そんな可愛らしい外見とは裏腹に、不釣り合いな程ゴツいナイフを手に握っている。


《ギィン!》


 何とかそのナイフを弾いて距離を取る事が出来たけど、兎の獣人にしては一撃が重いし速い。


 僕が時空属性持ちで、周りを見る力が人より優れていなければ、危うく初撃をくらってたかもだよ…。


「いきなり庭にお邪魔したのは申し訳ありませんが、私はシエロ君に魔法を教えているアスミ・ウエサカと申します。共に来た生徒もおりますので、何卒刃を納めては頂けませんか!」


 シエロ君はちゃんと連絡しといたって言ってたのに!?


 何なんだいこの仕打ちは!!


 こんなにビリビリした空気を感じたのは久しぶりだよ…。


「おや、そうで御座いましたか。ではその証拠をご提示ください。さすれば攻撃を中止致します」


 はぁ?し、証拠?


 だったらコロさんの制服じゃ駄目なの?


 シエロ君と同じの着てるじゃないか!?


「ジュリア!どうだ?本当にシエロ様のお客人だったか?」


「まだ分からないわ。今、お聞きしているところよ?」


 ちっ、また1人増えちゃったか…。


 って言うか何がお話だよ!?


 体に聞いてやろうか?ってか?


 ったく、何処の親父だってんだよ!?



 くそっ、此処で下手にコロさんを頼る訳にはいかないし、この兎さんだけでも中々に手ごわい感じだったのになぁ……。


 あー!もう!!どうやったら侵入者じゃないって分かってもらえるんだ?



 しかし、まさかこんな所で危機に陥るなんてね?


 ここんとこ平和だったからすっかり油断してたな。



「それじゃあ、こっちから行くぜ!」


 くっ!



《シュパッ》


「やった!今度も成功した!!ん?ちょっ、ちょっと!危なっ!?」



 あっ、シエロ君…。


 ってマズイ!


 厳ついお兄さんの持つ、穂先の長い槍がシエロ君に迫る。


 このままじゃ、シエロ君が刺されて…。


◇◆◇◆◇◆


 テレポートが成功した!何て喜んでたら目の前にドーマさんとその愛槍のキャロラインちゃんが迫って来ていたでござる。



「シエロ君、危ない!」


 亜栖実さんがコローレを庇いながらそう叫ぶ。


 危ないのはわかってるやい!


 全く、2人は後でお仕置き、だ!!


「《土操作:コンクリ壁!》続いてアース・ニードル!!」


 僕はコンクリート材の堅い壁を想像して目の前に出現させドーマさんの槍を防ぎ、この前授業で習ったばかりのアース・ニードルをジュリアさんの足下から生やした。


 たぶん絶対当たらないけど、せっかく連絡しといたのに亜栖実さん達を攻撃してたんだから、少しくらい僕から攻撃したって許されるだろう。


《ガイィィイン》


 ドーマさんの槍は壁に刺さる事すらなく弾かれ、ジュリアさんには案の定避けられたけど第2破として放ったウィンドカッターが足に掠ったから良しとするか。



 さて、2人がやっと動きを止めてくれた所でお説教タイムだよ?


 僕のお客様に手を出したんだから、覚悟は出来てるよねぇ?






やんちゃ勇者VSメイド&庭師のバトル回でした(笑´∀`)


何故2人が亜栖実を襲撃したのかは次の回にて説明致します☆


本日もお読み頂きありがとうございました

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