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百三十五話目 ダンジョンと謎が謎を呼ぶ日



 あの後ブロナーに軽くお説教をした裕翔さんは、お礼や挨拶もそこそこに帰って行った。


 本当に忙しい所をわざわざ駆けつけてくれたんだなぁと思うと、凄く嬉しかった半面、初対面の、ただ故郷が同じってだけの僕の為に…と、申し訳ない気持ちになる。


 現に、亜栖実さんって言う勇者様を1人捕まえて、ボディーガードさせてる訳だしね?



 あまりの申し訳なさに、この事を亜栖実さんに話したら、


「何言ってるのさ!もう僕達仲間じゃん?同郷とか関係ないよ?僕はシエロ君が大好きだニャー!」


 って抱きつかれちゃってさ…。


 本心なんだか、体よく誤魔化されたんだか分からなかったけど、とりあえず亜栖実さんは柔らかかったです、まる。


「シエロ君、オヤジ臭いですよ…(ボソッ)」


 後ろの席の爺が何か言ってるけど、僕は何も聞こえませ~ん。


「えぇ~では、今日の授業はこれでお終いとなりますが、皆さんに1つ、嬉しいお知らせがあります」


 おっと、先生の話しはちゃんと聞かなくちゃね?


「フフフ、私はめげませんよ…」


 嬉しいお知らせって何だろう?


『あっ!食堂さ、新しいまんまが増えるんでねぇべか?』


 うん、それはわざわざこんな所でお伝えしてこないと思うよ?



「実は、この学園内にあるダンジョンの情報が一部解禁となりました!」


「「「「「ダンジョン!?」」」」」


 一気に騒がしくなる教室内。


 ふと耳をすませると、隣のクラスでもザワザワと騒いでいるのが聞こえたから、今日を持って2年生の全クラスでこの情報が解禁されたって事なんだろう。


 因みに、うちのクラスで特に騒いでるのはルドルフとアレックス君、それにアーノルド、そしてオーラが騒がしいバレリーさんだ。


 うん、いつも通り過ぎて笑えるメンツだね?(笑)



「はい、お静かに!とは言え本日解禁される情報はダンジョンがこの学園内に有ると言う情報のみです。実際に貴方達がダンジョン攻略に出掛けられるのは来年の【5の月】からとなります。尚、先走って入らない様にする為、まだ何処にあるのかと言った情報はお教えできません。詳しくは明日の【魔術】でお伝えしますので、楽しみにしていて下さいね?では解散して下さい」



「「「「「ありがとうございました~!」」」」」



 ランスロット先生が教室から出た途端に、馬鹿騒ぎし始めるクラスメイト達。


 いつもは他の生徒達が騒いでいる様子を、こっちが凍えそうなくらい冷めた目で見ているフローズンさんでさえ、楽しそうに騒いでいた。


 うんうん、何たってダンジョンだもんね?


 僕達憧れのダンジョンだもん、少しくらい騒ぐのだって、しょうがない事だよね?



「シエロ、やべーな?ダンジョンだぜ?ダンジョン!そんなもんがこの学園内にあるんだぜ?うわ~!早く行きてぇ~!!」


 うん、君みたいなのが居るから、場所の開示はギリギリまで行わないんだろうね?


「シエロ君どうしよう!ダンジョンって、ゾンビとかグールとかも出て来るんだよね?僕、お化け系無理だよぉ~」


 うん、僕も絶対無理!


 その時は2人で逃げようね?


「逃げないで下さい…。それよりシエロ君、そろそろ行かなくて宜しいんですか?」


「あっ、そうだね…」


「あれ?シエロ君どっか用事?あっ、アスミ先生の所で今日も訓練するの?」


「羨ましいよなぁ?伝説の勇者一行のメンバーから訓練つけてもらえるなんてさ」


 一緒に受ける?って誘ったら、脱兎の如く逃げ出したのは何処のどいつだよ?


 全く…。



「今日は亜栖実さんにお休みって言われてるから、訓練には行かないよ?」


「そうなの?じゃあどこに行くの?」



「テレポート装置室!」


 そう、僕は今日、あの時うやむやにしたままだったテレポーターのお話しを聞きに、テレポート装置室へ行く約束をしているんだ♪


 ずっと約束をすっぽかしていたのに、ジャスミン先生は怒るでもなく、快くOKを出してくれた。


 あぁ、すっげー楽しみ!


 ぶっちゃけ、今の僕はダンジョンよりもテレポート装置の方が大事(笑)



「ではシエロ君、そろそろ…」


「うん、じゃあルドルフ、ブロンデ、また後でね?」


「おう、楽しんで来いよ?」


「お夕飯の時にでも、お話し聞かせてね?」



 こうして、僕達は2人の生暖かいお見送りを受けながらまだまだ盛り上がりをみせる教室を後にしたのでした。


 あ~、楽しみ♪



「シエロ君、そういえば部活の方へは行かなくて宜しかったのですか?」


「うん。実は僕も今朝知ったんだけどさ、今日は高等科1年と初等科6年の合同実習があるんで学園内の部活は全てお休みになるんだって。うちの研究会もイド先輩と、補欠の僕とスミスさんだけになっちゃうから丁度良かったよ」


 前回6年生だけで裏山に行った時、増えすぎたリトルリザードと突如現れたイビルリザードのせいで戦闘員が足りず、カグツチ君が来てくれなかったら全滅の恐れも有ったという事から、今年から危険地帯へ初等科の生徒が行く時は、高等科の生徒達と共に動く事になったんだ、とマルクル先輩は教えてくれた。


 まぁ1・2年生が危ない所へ行くことはまず無いけど、上級生、特に6年生は結構危険な場所に行く率が高かったから、こういうシステムになったのは嬉しいかもね?


 特に今年の新・6年生――ルーメン姉さんとリペア先輩達の学年ね?――は回復力は高いけど戦闘力はそこまで高くないから、弟の僕的にも安心だしね☆



「昔とは随分変わりましたねぇ…」


「爺ムサい事言わないでよ。それよりさ、まだ他のクラスでもダンジョンの話しで盛り上がってるっぽくて誰も廊下にいないから聞くけどさ、何か僕に隠してる事無い?」



 あっ、常に浮かべてるアルカイックスマイルの深さの度合いが上がった。


 こりゃ図星だな?


「どうしてそう思われましたか?」


「ん~?昨日までは気づかなったんだけどさ、時々あらぬ所を見てるし、胸を抑えたりしてるから気になって…。もしかして、何か後遺症とかあったりするのかな?って思ってさ…」


 あれを見た時、昨日までの自分を本気で殴ってやりたいと思ったよ…。


 あんなに頻繁に胸を抑えてるコローレに気が付かないなんて、可笑しすぎるじゃないか!



 ………何?


 何でそこで嬉しそうな顔になるの?


「フフフ、失礼しました。まさかお気付きになられているとは思わなかったもので…。実は、この体がまだ私に馴染んでいない様で、時々軋むのですよ…。これでも大分慣れては来たのですが……」



 いくら元々の姿が変幻自在に形を変えられる精霊のコローレも、長い時間をクラレンスと言う1人の人物として同じ姿形で過ごしてきた為、魂がその器の形で定着してしまったのだそうだ。


 その為、新しい体に魂が慣れるのには時間が掛かるのだと教えてくれた。


 器に形を合わせようとして魂がポコリと動くから、その時の反動で胸の辺りが軋んで疼いてたんだって。


 そんな事になっていたなんて…。


 いつも隣に居てくれたのに、気づかなくてごめんね?



「ねぇ?何で襲われた時逃げなかったの?君なら難なく逃げ切れたんでしょ?」


 そしたらこんな苦しい思いもしなくて良かったじゃないか。


 そしたら、わざわざランパートさんと別れてこんな所に来る事もなかったのに…。


「………。逃げなかったのでは無く、逃げられなかったのですよ…」



 あれ?


 絶対はぐらかされると思ったのに、答えてくれた?


 いつもなら話しを変えるとか、無理やり誤魔化すとかしてたのに…。


「フフ、私も思うところがございましてね?もう貴方様に隠し事をするのは止めにしたんですよ…。私が体を失うハメになったのは、相手の魔族の気配を感じ取るのが遅れた為、致命傷を避けられなかったからです。油断していたつもりはなかったんですがねぇ…」



 コローレが気付かないって、ヤバすぎるだろ…。


 確か相手は…。


「【人形使いのマドラ】って言ったよね?やっぱり使い魔で襲ってきたの?」


「えぇ、シエロ君を襲った使い魔と傾向が似ていたから相手の正体が分かったのです。ただ、貴方様を襲った様な魔力波形で相手を識別するしか出来ない様な、簡易的な物ではありませんでしたがね?」


 あぁ、確かあの時はクラレンス神父が身に着けてた眼鏡型のカメラを狙っていたんだっけね?


 まさか眼鏡に残ってたほんのちょっとの魔力だけで、僕が狙われるとは思ってなかったけどね(笑)


「本当ですよねぇ?まぁ、記録媒体に使った魔石は教会の中に隠しておいたので無事でしたし、ランパートには、私に何かあったら裕翔に届ける様に言い含めておきましたから、そろそろアレも裕翔達の元へ届く頃でしょうかね?」


 そこまで考えていたとは…。


 やっぱりコローレは凄いよね?


 僕だったら大事な物は肌身離さず持ってたいから、すぐ壊されちゃうと思うもんね(笑)


「フフフ、そんな事は無いと思いますよ?それと、まだお聞きになりたい事はございますか?まだ周囲に人気はありませんから、少しならお答え出来ますが…?」


「あ~、じゃあ僕が前の名前を思い出せなくなったのは何でだったのかな?最近までは普通に言えてたんだよ?」


 僕がそう尋ねると、コローレは少し考えた後口を開いた。


「ブロナー様にお聞きした訳ではありませんので、臆測の範囲内になりますが…」


 コローレはそう前置きしながら、自分の考えを教えてくれた。


「シエロ君の記憶は、所々ほつれたセーターの様な物だったのではないかと思います。始めは形を保っていても、時間が経つ事にほつれた毛糸がしゅるしゅると解けていき、最後には原形を留められぬ程に崩壊していく…。その様な感じだったのではないでしょうか?」


「なるほど、分かり易いかも…。あっ、じゃあブロナーが気づかなかったのは?僕クラレンス神父の所に遊びに行った日の夜にあの場所へ行ってるんだけど?」


 あっちに行ったのが1の月の前半くらいだから、まだ半年も経ってないんだよね?


 記憶を初めて戻してもらったのは2年も前なのに、ここ半年経つか経たないかくらいの短い期間で悪化するってのが不思議なんだよなぁ…。


「少しずつ少しずつ綻び始めていた物が、マドラの使い魔に襲われた事で加速したのかもしれませんね?で、女神様の御前に行かれた際はセーターの前半分は無事で、後ろ半分はほつれきっていたとか?」



 貧○ちゃまかよ!


 スッゴい真面目に聞いてたのに、何をぶっ込んで来てるんだよ!?


 あっ!こらっ!笑ってんじゃない!!


 もう!早くテレポート装置室行くよ!?






少しずつコローレとの距離感が縮まってきたシエロでした。


本日もここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。



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