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十三話目 双子の女神の話を聞いた日



「むかしむかし、あるところに何もない、まっくらなくうかんがありました。」


 ほう、世界が違っても『昔々』って言うのは共通なんだね。



 今、僕はお兄さんのお膝の上で絵本を読んでもらってます。


 今までだったらベッドの上か、部屋の床一面に敷かれた、フカフカのカーペットの上に転がされた状態での絵本タイムだったんだけど、僕の首がしっかり据わったからって、お母さんからOKが出た。


 まだ補助がないとお座り出来ないけど、座れるって楽だなぁ。


 何たって見れる範囲が凄く広い。


 へ~、この部屋にあんなデカい本棚あったんだ。


 デカいと言っても、縦じゃなくて横。

 いつも皆が入ってくる扉のすぐ横に、長さ2、3メートルくらいの本棚が横倒しに置いてあった。


 本棚の中には絵本や図鑑、それに何の本かは分からないけど、六法全書くらい分厚い本等がみっしり詰まっている。


 誰が読むんだ?あの本…。


 視線をずらすと、ルーメンお姉さんがその本棚の上に座っているのが見えた。


 あ~なるほど、ベンチにもなるのか。



「まっくらなくうかんには、2人の女の子がすんでいました。2人はふたごの女の子です。2人の女の子は、まいにちくらやみにおびえながら、2人でさびしくくらしていました」


 おっと、今は絵本に集中しないとな。


 ん~、まっくらな所にずっと女の子が2人っきりでいるんじゃ、心細くて怯えたりするよなぁ。



『怯えてなんかいないわよ!!』



 ん?今誰か何か言った?


 ……………。


 あれ?気のせいか…。



「ある日、2人の女の子はくらやみにおびえるばかりではいけないと考えました。」


 ペラリ、プロクスお兄さんがページをめくる。


「そこで、お姉さんの女の子が、あたりをてらす光と、妹がこごえずにすむように、と、あたたかな炎を生み出しました」



「妹の女の子は、お姉さんがゆっくりねむれるようにと大地を作り、それをはぐくむために、水を生み出して、光があふれる世界を作りました」



ふんふん、お互いの事を考えて世界を作り出したのか、きっとうちのプロクスお兄さんみたいに優しい2人なんだろうなぁ。



「その後、お姉さんの女の子は妹があつくないようにと、風を生み出し、妹の女の子はお姉さんがあつくないようにと、こかげを作るために木をたくさん生み出しました」


 ペラリ。


「こうしてふたごの女の子が作り出した世界には、いろいろな命がうまれ、いつしか2人は女神さまとよばれるようになりました。2人はもうくらやみにおびえることも、さびしく思う事もありません」


 挿し絵には、木漏れ日がキラキラと輝く森の広場の様な場所に、人や動物達に囲まれて幸せそうな顔で笑う2人の女神様が色彩鮮やかに描かれていた。



 ペラリ、またお兄さんがページをめくる。



「ふたごの女神と人々からよばれるようになった2人は、今もふたご月から、わたし達をみまもってくれています。おしまい」


 最後のページには、2つの月が仲良く並んで、空に浮かんでいる様子が描かれていた。



 青い月と赤い月。


 つかず離れずを繰り返してこの星の周りを回っているんだそうだ。



「ほら、シエロ?この青い月がお姉さんの女神さまがすんでいる月で、こっちの赤い月が妹の女神さまがすんでいる月なんだよ?」




 ………………。


 何でだよ!!


 何故炎を司ってる姉さん女神が青い月で、水を司ってる妹女神が赤い月に住んでんだよ…。


 色味的に、そこは逆だろう!?

 僕は心の中で叫ばずにはいられなかった。





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