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百三十話目 アスミ・ウエサカの話しを聞いた日



「それでは解散!明日は普通通りの授業だから、今日はゆっくり休むようにな!!」


 ダリウス先生からの【解散!】の声を聞きながら、僕はブロンデ達の誘いを断ってあすみさんの下へと急いだ。


 学園へ戻るまでの道すがら、ルドルフ達と喋りながら歩いていた時にコソッと交わした約束を守る為だった。



「あすみさん!」


「おっす、シエロ君。じゃあ行こうか?と言いたいところなんだけど…。これからランスロットさんからのお説教タイム何で、ちょっと待っててくれる?」


 おいおい…。


 一瞬唖然とした僕だったけど、あすみさんの背後にランスロット先生の静かな殺気を感じ、思わず口を閉じた。


 うわぁ~い!久しぶりのお説教モードだぁ~!!(汗)


「了解です。そこのラウンジで待ってますから!」


「助けてはくれないんだねぇ~~?」


「さぁ、行きましょうか?アスミ【先生】」



 僕は、死にそうな目をしたあすみさんを送り出す事しか出来ませんでした、まる。



――――――


「いや~、お待たせお待たせ~」


 あすみさんが僕達の前に再び現れたのは、それから2時間後の事だった。


 もう今日は無理かな~?とか言いながらコローレと談笑している時に、ヘロヘロになった彼女が僕らの横に座ってきたんだ。


「いや~、まさか2時間も叱り飛ばされるとはねぇ?これは流石の僕も考えていなかったよ…」


 口調は軽いままだったけど、顔色が目茶苦茶悪くなってる。


 青い通り越して何か黒いよ!?


「大丈夫ですか?」


「ん?あぁ、こんなの昔はしょっちゅうだったからね?よゆ~だよ。はははははははははははは」


 うん、全然余裕ではなさそう…。



 コローレ、やっぱり今日は無理そうじゃない?


 えぇ、少々危険そうですね?



 僕がコローレにアイコンタクトを送ると、コローレからもそう返事が返ってきた。


 2人の意見が一致したので、あすみさんには早いとこ休んでもらおうと、席を立とうとしたのだけど…。


「おや?一体どこに行くんだい?さっ、僕の部屋に行くよ?」


 と、若干目が据わったあすみさんに、為す術が無いまま彼女の部屋まで引っ張り込まれてしまった…(汗)


 両腕に僕とコローレを1人ずつ抱きかかえて突き進むあすみさんを見た周囲の人達が、まるでモーセの十戒の如く道を開けて行ったのが凄く怖かったよ…。


 そして、出来るなら助けてほしかったよ…。



《ガチャン》


「んふふふふふふふふ♪んじゃ~、お姉さんとお話ししようじぇ~?」


 怖い怖い!


 何も鍵まで閉めなくても良くない!?


 って言うか指をわきわきしながら、こっちににじり寄って来ないで~!?


 あすみさんの怪しげな殺気に、僕が怯えていると、


「アスミさん。シエロ様が怯えていますから、冗談はそのくらいになさって下さい?さっさと本題を…」


 コローレがそう言いながら僕を自分の影に隠すようにして助けてくれた。


 おぉ、コローレさんマジ救世主!


「ちぇ~、ちょっとくらい遊んだって良いじゃないさ~?僕今日は朝から大変だったんだからね~?クラさんが居るなんて聞いてないからびっくりしたし、ランさんからはお説教されるし~」


「はぁ、後半は自業自得でしょう?全く…。それではシエロ様、改めてご紹介致します。彼女は上坂亜栖実さん。地球と言う星の、日本と言う国からいらっしゃった方だそうです」



 うんうん。


 ランスロット先生に怒られたのは自業自得だよね…。


 後、あすみさんはやっぱり日本人だったんだね?


 でも【上坂亜栖実】なんて向こうのまんまの名前みたいだし、僕とは違って召喚された系なのかな?


「ちょ、ちょっとクラさん!こっちの世界の人にそんな話ししたって混乱させるだけじゃないか!?」


 あれ?


「おや?もしや貴方、何も聞かされずに此処まで来たんですか?ふむ、おかしいですね…?まぁ良いでしょう。方法は少し違いますが、シエロ様は亜栖実さん達と同じ所からいらした方だそうですよ?」


 そうそう、【僕が来たからには、もう安心さ☆】何て言ってたくらいだから、僕の事情も知ってるもんだとばっかり思ってたんだけど…?



 僕が、コローレの言葉に頷いていると、亜栖実さんの顔は驚きに満ち満ちた顔へと変わっていった。



 えっ?そんな驚く?


 この人本気で何の説明も受けてきてないの…?



「えー!?そんなの僕知らないよ?裕翔(ゆうと)だって何にも…。僕は、魔王の部下から命を狙われてる子供が居るらしいから、守ってやってくれって言われて来ただけだし…」


「えっ!!僕命狙われてるの!!??」


 いや、そんなしまった!って顔されても遅いよ!?


 僕、命狙われる様な事したっけ?


 え~?


 コローレ、頭抱えてないで、教えて早よ!


◇◆◇◆◇◆


 あ~…。


 本当にこの人は何をやってるんでしょうか…。


 さっきも帰りの道中で、シエロ様が命を狙われている事は黙っていて欲しいと伝えたばかりだったでしょうに…。


 そんな、しまったって顔をされても、もう遅いですよ。


 シエロ様が混乱してしまわれたじゃありませんか…。


 はぁ…、仕方がありませんね。


「2人とも、落ち着いて下さい。こうなったら私からきちんと説明して差し上げますから…」


 私の言葉に反応して、2人の視線が勢いよく此方に向き直り、話しを聞く体制になる。


 良かった。


 混乱の極地、と言った感じでしたが、話しを聞く耳はあったみたいですね?


―――


 では、早速お話致しましょうか…。


 んー。


 どこから、お話ししたら宜しいでしょうかね…?


 えぇ、では先ずは、亜栖実さん達のお話しから参りましょうか?


 亜栖実さん達が此方の世界にいらしたのは、今から12年前の事でした。


 こちらの世界とあちらの世界が重なり合ったその日、邪神の影が接触した場所があったそうなのです。


 えっ?


 重なり合うとはどういう事か?で御座いますか?


 実は何年かに一度、私達が住まうこの世界と、亜栖実さんやシエロ様が昔住まわれていた世界とが交錯する瞬間があるのです。


 此方でもその現象は観測されますが、あちらでは何と言われていましたかね…。


 あぁ、そうでした。


 【皆既月蝕】でしたね?


 勿論【月蝕】と呼ばれる全ての現象が、此方の世界と重なり合った際に起きている、という訳ではありませんが、その現象の何百回の内1~2度くらいは、此方の世界と繋がって起こる様なのです。


 そこで話しは戻るのですが、たまたまその現象が起きたその時に、たまたまその場所に邪神がふらりと現れ、たまたま手を軽く振った。


 そして、そのたまたま軽く振られた手の巻き起こした風によって、その場所にたまたま居合わせた5人の男女を此方の世界へ吹き飛ばしたのです。



 えっ?本当に【たまたま】だったのか?ですか?


 それは私如きの存在では計り知れぬ事ですので、何とも申し上げる事は出来ませんねぇ…。



 まぁ、そうして飛ばされてきてしまったその5人の男女は女神様達によって救われ、様々な力と能力に目覚めます。


 そして、何時の日か元の世界へと戻るべく邁進なさっているのが、今代の【勇者一行】と呼ばれる亜栖実さん達なのです…。



◇◆◇◆◇◆


 全てが衝撃的な話し過ぎて、何処から質問したら良いのかが分からない…。


 んっと、皆既月蝕が起こった時に、何百回に一辺あっちとこっちの世界が重なって?


 12年前に起きた皆既月蝕の時に邪神のせいでこっちに飛ばされてきたのが亜栖実さん達。


 亜栖実さんの仲間…、と言うか一緒に飛ばされてきたのは男女5人で、いつかは元の世界に帰る為に勇者一行をしてるんだっけ?(混乱)



「僕達の話しはクラさんが話してくれたので大体あってるかな?シエロ君は?僕達と同じ所から来たって言ってたけど…?」


「あぁ。僕は邪神の影に障ったせいでとち狂った奴に思いっきり車でひき殺されましてね?魂ごと消滅しかけていた所を女神達に拾われたんです。【転生】と言う形になったので今はこんな格好をしていますが、元はれっきとした日本人だったんですよ」


「そっ、それはお気の毒と言って良いのか、何というか…」


 僕が【ひき殺された】事を正直に話すと、亜栖実さんは言葉に詰まった。


 そりゃそうだよね?


 僕が同じ事言われたってどもるわ!


 でもまぁ事実だしね?


 一回死んでるって事実があるからか、彼女達みたいに向こうの世界へ帰りたいって気持ちも薄くなってるし、こっちの世界に来てから面白可笑しくやってきたから、余計に未練ってものがないのかも…。


 【魔王討伐】何て、進み方を決められてしまった彼女達に比べたら、僕はのびのび生きてきた訳だしね?



「あんまり気にしないで下さいね?今は妖精達に囲まれて楽しくやっていますし、魂の修復も終わっていますから」


「そうかい?そう言ってもらえると、少しは気が楽だよ。しかし、まだ僕らの仲間が居たとはね?シルビアーナ様達も教えてくれれば良いのにさ、意地悪だよね?こんなに可愛い【男の娘】が居たなんてさ~」



 ………………。


 今この人、違う漢字当てはめなかった?


 男の子じゃなくて、男の【娘】って言ったでしょ??


 何か今のは分かったぞ!?






真面目な話しかと思いきや通常運転のシエロなのでした…。


本日もここまでお読み頂き、ありがとうございました。



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