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百二十九話目 続々・初めての遠足の日



 初めての遠足の日、初めての魔物狩りの目標を達成した僕達は、何故か討伐ランクAAの巨大な赤い鳥、スカイウォールさんから【こけこっこー】と【かっかどぅーどぅるどぅ】の違いについて力説されていました。



『やっぱり、僕的にはこけこっこーー!って元気よく鳴きたい訳だよ』


「は、はぁ…」


 余りに緊張感の無さ過ぎる会話に力が抜けた僕達3人は、段々攻撃の構えも疎かになっていた。


 って言うか、武器――僕の武器はランスロット先生に貰った杖ね?――を構えてる事すらアホらしくなってきたんですけど…。


「こらっ!敵を前に構えを緩めるな!何があっても、真っ直ぐに構えを取って、可能なら隙をついて逃げるんだ!」


 本当にどうでもよくなってきた僕達と、そんな事お構い無しに熱弁を奮うスカイウォールさんとの間に、B組の担任で体育(武道)教師のダリウス・フット先生が割り込んできた。


 どうやら騒ぎを聞きつけて、僕達を助けに来てくれたみたい、なんだけど…。


『ん?また1人増えたね?ヨッス!元気?』


「はぁ?」


 なんとも気の抜けるスカイウォールさんの態度に、早くもダリウス先生の構えが崩れかける。


 ね?


 何かこの、ただデカいだけの鳥を相手に武器を構えてるのって、スッゴくアホらしくなるでしょ?


『ってかさ~。さっきから何で臨戦態勢?何か魔物でも襲ってくんの?』


「いや、あんたのせいだ。あんたの…」


 自分の後ろや上をキョロキョロと見だしたスカイウォールさんに、思わずツッコんでしまった僕だったけど、これは仕方ないと思う…。



『えっ?あっ!あはははは~。いや~、ごめんごめん。すっかり忘れてたね~』


 一瞬キョトンとした様に動きを止めた怪鳥は、笑いながら白い煙に包まれた。



 って、急!


 そして煙が多い!!


 思いっきり煙を吸い込ん…、ゴボッ!ゴホッゴホッ!


 グェッホ、ゲホッ!!


「いや~、ごめんごめん。あの格好だと、他の飛行系の魔物に襲われないもんだからさ~。つい?」


 あ~、咳き込みすぎて鼻の奥は痛いし、涙まで出て来たよ…。


 そんな涙に滲む目で声のする方を見ると、煙の中から1人の人物が姿を現した。


 煙から現れた人物は、短く刈り込んだ黒髪に、髪と同じく黒い目を携え、真っ赤なシャツの上に黒い革製のライダースジャケットとパンツ、更にはエンジニアブーツまで着込んだ長身の女性だった。



 こんな派手な見た目の女の人が僕っ子かよ…orz


『突っ込むのはそこじゃないでしょ…』



 あんまりにも残念な現実に打ちひしがれていた僕に、『ちょっとシエロ、聞いてんの?』更なる衝撃が襲いかかった。


「んじゃまぁ改めて。僕はアスミ・ウエサカ。1年間限定で学園の魔法教師に就任したよ?宜しくね?ダリウス・フット先生」


「はぁ!?あんたが教師?いや、それよりも何で俺の名前が…?」


 ダリウス先生はこのアスミさんが魔法教師だった事と自分の名前を知っていた事に驚いているみたいだったけど、僕が驚いたのは別のところだった。



 アスミ・ウエサカ



 ウエサカってもしかして【上坂】?


 それに黒髪黒目で、懐かしさを感じる顔立ちと肌の色…。



 えっ?この人、もしかしたら日本人?


「んで、君がシエロ君だろ?理事長から話しは聞いてるよ。酷い目にあったねぇ?でも僕が来たからには、もう安心さ☆」



 うっわ!わざとらしいウインク…。


 うん、この人日本人かも(笑)


「あと、ダリウス先生の名前を知ってた理由わね?昨日のうちに先生と2年生全員の名前を覚えてきたからさ!まぁ、そのせいで寝坊したんだけどね?」



 あはは~、と誤魔化すように笑っていたあすみさんは、コローレの方を見るなりギョッとした様な顔をした。


 何?知り合い?


 コローレのこれ見よがしなニヤニヤ顔も気になるけど、今はあすみさんの事の方も気になるし…。


 とか考えているうちに、向こうの方からランスロット先生が走って来るのが見えた。




「やっぱりアスミちゃんだったんですね?人騒がせな行動は謹んで下さいと申し上げたじゃないですか!?」


 ランスロット先生は僕達の前に来るなり、あすみさんに向かって怒鳴り声を上げた。


「うわ~ぃ!ごめんなさい、ランスロットさん!許して!!」



 いつもは静かに怒りを露わにするランスロット先生が怒鳴ってる…。


 僕は、さっきまで気になっていたあすみさんの事よりも、顔を真っ赤にして怒っているランスロット先生に気を取られていたのだった。


 ブロンデの後ろで、必死に笑いを噛み殺していたコローレにも気がつかないくらいに…。



――――――


「では、アスミ先生のせいで目茶苦茶にはなってしまいましたが、遠足はこれにて終了です。皆で学園に帰りましょう。」



「「「「「は~い」」」」」


 突然現れたあすみさんの紹介を簡単に終えたランスロット先生の号令の下、僕達は一路学園へと戻る事になった。



 スカイウォールが襲ってきた!


 と一時パニック状態になった他の生徒達も、正体が学園に赴任してきた新しい先生だと分かった途端に彼女の周りを取り囲んで質問攻めにしていた。


 うん、パワフル(笑)


 とは言えあすみさんもさっきまでと同じ調子で軽く話していたし、何とも言えない適当さ加減も手伝ってあっという間に人気者になってたから、案外この学園に合った性格をしているのかもしれないね?



 それにしても…。



 私が来たからには、もう安心さ☆



 ふと、あすみさんの言葉が頭を過ぎる…。


 何が【安心】何だろう…。



 今思えば、急にコローレが編入して来たのも可笑しな感じがするよね?


 もし、ブロナーが言う【手足】の1人がクラレンス神父だったんだとしたら、あのまま姿を眩ましていた方が動きやすかっただろうし、わざわざ僕の前に姿を現す必要はない…。



 今、当のコローレはあすみさんの横で話しをしていてこっちを向いてはいないけど、さっきのあすみさんの感じだと、此処に【クラレンス神父】が居るって事を知らなかったみたいだし、僕と同じくらいの早さで彼の正体に気が付いた事になる。


 あすみさんは何者で、コローレが学園に来た本当の目的って何なんだろう…。




 あぁ~!


 何か頭がごちゃごちゃする!!


 もう!


 考える事が多すぎて、なかなか纏まらないよ!!






さて、アスミ・ウエサカの正体と、コローレの目的とは!?


そして、段々影が薄くなってきたシエロ(主人公)の運命は如何に!


、影薄くなってないもん! byシエロ



本日もここまでお読み頂き、ありがとうございました。



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