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百二十五話目 魔道具量産化計画の日



「それは良いね!!」


 放課後になるなり部室――と言うか、スクルド先生のお部屋?――に駆け込んだ僕は、急に飛び込んで来た僕に驚く面々を無視しながら回復魔法の魔道具化について相談してみた。


 すると、いち早く我に返ったマルクル先輩から、とびきりの笑顔と共に【いいね】が返ってきたのでした(笑)



「実際この前の遠足の時は助かったからね?あれが沢山作れたら数少ない回復役の負担も減らせるし、良いこと尽くめだよ!」


 そう熱く語ってくれたマルクル先輩に、提案した僕も嬉しくなる。


 その一方で、スクルド先生とたまたま遊びに来ていた師匠の険しい顔が気にかかった。


「あの、師匠?先生?何かマズかったでしょうか…?」


 僕が恐る恐る聞いてみると、眉間に皺を寄せたままの師匠は、


「いや、何もマズい訳じゃねぇ。人工魔石ならそう言う事も可能だったのか、と驚いていたんじゃ…」


 と言ってくれた。


 嬉しくなって、思わずコローレの顔を見る。


 彼もそんな僕の顔を見て、嬉しそうに微笑んでくれた。



「俺もです…。人工魔石なら、コストもシエロ次第ではありますが、有る程度は低く押さえられる…。勿論、シエロの負担にならない様に此方が気をつける必要は有りますが、無謀な話しではないかと…」


 あっ、それなら―――



「それなら問題ありません。土属性持ちの生徒が素体となる水晶を作り、回復魔法を使える者が水晶に向かって魔法を放つと言う分担をすれば、シエロ君は水晶に魔法を閉じ込める作業のみで済みます。そうすれば、一から全ての作業をやっていたシエロ君の負担が軽減され、量産化もしやすくなる事でしょう」


 僕が話そうとした内容を、僕よりも分かりやすく、そして僕よりも先にコローレが説明してくれた。


 えっ?


 何この人、僕の秘書か何かなの?


 いやっ、何こっち見ながらサムズアップ&ドヤ顔してんのさ!?


 うんうん、ありがとうね?



「そう言えば、君は転入生のコローレ・シュバルツ君だね?俺はA組の副担任、スクルド・ヘリアンだ…。宜しくな?しかし、昨日の今日で、もうそこまで理解出来るとは…。フフ、将来有望だね…」


「ふむ、回復魔法の魔道具ってぇ事は、ヒール、ハイ、メガの切り替えも考えねばならねぇよのぅ…。するってぇと…」



 先生は先生で、コローレに対する観察を始めちゃったし、師匠は早くも新しい魔道具の仕様を考え始めている…。


「ふふ、面白くなってきたね~」


 マルクル先輩は、そんな先生達の様子をニコニコしながら見ているだけだし…。


 あぁんもう!


 早くエストラ先輩助けて~(泣)



――――――


「では早速やってみよう!」


「ラジャーなのです!先ずは水晶作りをすれば良いのですよね?」


 他のメンバーが揃った所で改めて僕の考えを説明すると、他の先輩方も次々と賛成してくれたので、それじゃあやってみようと言う話しになった。


 土属性持ちのイド先輩が早速水晶作りを買って出てくれたので、他のメンバーも慌てて準備をし始める。


「シエロ君のやり方を覚えていて良かったのです。えい!!」


《ザラザラザラ》



 うっわ!?


 流石はイド先輩。


 僕が一個ずつ、しかも大きさも口に出しながら設定するのに対して、先輩は全く同じ形の水晶柱をいくつも一遍に作り出してしまった。


「うわぁ~。イド先輩、スゴいですね…」


「私たち小人族は土と仲良しなのです☆これくらいは出来て当たり前なのですよ!!」


 そんな事を話している間も、先輩の手からはザラザラと水晶柱が生み出され続けていく。


 見る見るうちに、直径20cmくらいの入れ物が水晶柱で埋まって行って…。


 うわわわわわ!?


 先輩、どんだけ作る気ですか!?(焦)


「イド、作り過ぎ。初めからそんなに作っても余るぞ?」



「あれ?アハハ、調子に乗ったです☆」


 僕がイド先輩の妙技に感動しながら狼狽える、と言う器用な事をしていると、スッと横からエストラ先輩が助け船を出してくれた。


 流石はエストラ先輩、空気の読める頼れる人!!


 そこに痺れる、憧れるぅ!!



「で?次は何をするの?魔法をこれに封じ込めるんだっけ?」

 あっ、エストラ先輩に尊敬の念を送ってる場合じゃなかったや(笑)


「はい、イド先輩が作って下さった水晶柱を―――」


◇◆◇◆◇◆


 良かった…。


 シエロ君が笑ってる。


 一昨日までの空元気とは違う、本当の笑顔で…。


 ルドルフ君やブロンデ君達のおかげで大分元気になってきてはいたけれど、決定打になったのはやっぱりこの転入生の存在が大きかったのだろう。


 昨日シエロ君達のクラスに転入してきたと言う、コローレ・シュバルツ君。


 僕の隣でシエロ君を微笑ましげに見つめている彼は、あっという間にシエロ君の元気を取り戻させた彼は、一体何者なんだろうね…?



「フフフ、楽しい人達ですねぇ。シエロ【様】も楽しそうだ…。あぁ、申し遅れました。私、コローレ・シュバルツと申します。一応、シエロ様とは幼なじみでして…」


 まるで僕の心を読んだかの様な絶妙な時間的瞬間で、彼は自分を【幼なじみ】と呼称した。


 2年生にしては大人っぽい口調で…。


「へぇ、シエロ君に幼なじみが居たとは初耳だったよ。僕はマルクル・ソフィア。シエロ君と同室の、高等科1年生。宜しくね?」


「では貴方様が、寮長様でしたか。ご挨拶が遅くなりまして申し訳ありません。これからお世話になります」


 おや?本当によく知っているね?


 僕でさえ寮長に就任(押しつけられた)した事を知ったのは昨日なのに…。


「あれ?違いましたか?寮母さんが夕飯の時にそう、おっしゃっていたのですが…」


「あぁ、いや…。あってるよ?ただ、僕も言われたばかりで実感がまだ湧かなくてね?僕より相応しい先輩方は沢山いるのにさぁ…。おっと、君に愚痴っても仕方ないのにね?ごめんごめん」


「いえ、そんな事はありません。聞く事くらいしか出来ませんが、話せば楽になる事もありましょう」



 本当にこの子は何者なんだ?


 まるで神父様と話している様な気がしてきたぞ…?


 彼はニコニコ笑いながら話をしているだけなのに、何だか説法を受けている気分だ。


「あっ、ソフィア先輩。学園内でのシエロ様のお話しをお聞きしても宜しいでしょうか?シエロ様からのお手紙で少しは聞き及んでいるのですが、他の方のお話しも聞いて回っているんです」


 あれ?


 何か急に彼の雰囲気が変わった様な…?


 さっきまでの大人びた雰囲気は薄れ、今は年相応の子供っぽい感じになった。


 ふむ…。


 初めての場所に緊張していただけだったのかな?


 まぁいいか…。


 それよりも、シエロ君がよく手紙を書いていた相手は彼だったんだね?


 彼は意外にも筆まめで、毎月両親ともう一通、誰かに宛てた手紙を書いて送っていた。


 なるほど。


 毎月毎月、あんなに嬉しそうに手紙を書く相手が隣に来てくれたんだ、元気にもなるのかな?


「どんな事が聞きたいんだい?」


「はい、新しい妖精が増えた話しは昨日お聞きしましたので、え~と…」


 ふふふ、よっぽど聞きたい事が貯まっていたみたいだね?


「じゃあ、君が思い付くまで、僕も君にシエロ君の話しを聞いても良いかな?」


「えぇ、なかなかお聞きしたい事が有りすぎて決めかねますので、先輩とお話ししながら決めさせて下さいますか?」


「勿論良いよ?じゃあね…。シエロ君とは何処で知り合ったの?」


「え~と、それがですね?―――」



 意外と長話になってしまったから、少し纏めて話すよ。


 彼がシエロ君と初めて出会ったのは3歳の時。


 シエロ君のお家に妹が産まれた事を教会に報告へ行った時に、偶然彼も教会へ居たんだそうだ。


 何故そこに彼が居たのかと言えば、彼の両親が凄腕の冒険者で、近隣の街から応援を頼まれる事が多かったから。


 彼や、シエロ君の住むシュトアネールと言う街は謂わば、凶悪な魔物が始終闊歩している危険地帯。


 そんな街に住んでいる人々は、Bランク以上の冒険者か元冒険者達に限られてくる。


 そして、そんな強い人達を頼って、近隣の街の住人から救援を頼まれる事が度々あったそうだ。


 此処で話しは冒頭へ戻るけど、そんな感じで街の大人達が居なくなる間、子供達だけで家に居るのは危険なので、その間街の子供達は教会へ預けられるんだってさ。


 彼がシエロ君に会ったのもそんな時で、何だかんだ意気投合した彼らは、何かと教会へ集まっては遊んでいたらしい。


 だから、手紙も教会を通じてコローレ君に渡されていたそうた。


 そして、彼がこの学園へ転入する事になったのもその教会が関わっていて、最近シエロ君が落ち込んでいた要因にもなった神父様の遺言だったから。


 去年の秋に、僕達が開発したステータスカードの新機能を追加更新する為に教会へ行った際、彼の保持魔力量が増えている事に気が付いた神父様から、学園に今からでも通わない?と、薦められたんだそうだ。



 神父様が全ての手続きをして下さったおかげで、僕は今この場所に居られるんです。


 と彼は語ってくれた。



 僕が敬愛する、クラレンス・ド・リュミエール神父様は、やっぱり凄い人だったんだなぁ。


 一瞬でも、コローレ君を何者なんだ?何て疑った自分が恥ずかしいよ…。


「先輩、コローレ!水晶に魔法を吹き込むのを手伝って下さいませんか!?」


「あぁ、今行くよ」


「ソフィア先輩、話しに付き合って下さってありがとうございました。また、お話ししても構いませんでしょうか?」


 冒険者の両親を持ちながら、彼がこんな口調になったのもクラレンス神父様の影響らしい。


 シエロ君を【様】付けで呼ぶと怒られるから、此処だけの内緒にして欲しいと言ったコローレ君は可愛い7歳児だった。


「勿論だよ。また話そう?良かったら、君もシエロ君と一緒に此処へ遊びに来ると良いよ」


「ソフィア先輩、ありがとうございます」


 ニッコリと笑ったコローレ君の顔を見ながら、僕はわーわー騒ぎながら水晶作りをしている部員達の下へ戻った。


 ふふふ、今年も楽しく過ごせそうだね♪



◇◆◇◆◇◆


「お帰り、マルクル先輩と何を話してたの?」


 僕の隣に腰掛けた――僕達は部室の床にベタ座りしながら作業をしています――コローレに、小声で話し掛ける。


 何かやたらと楽しそうに話してたけど…?


「いえ、ソフィア先輩が私の事を少し怪しんでいたご様子でしたので、少々作り話を…」


 少し目を離した隙に何してくれてるんだ、こいつは!?


「計画通り!?と言うやつでございましょうか?」


 だから、お前ら何処でそういうのを覚えてくるんだよ!??


 って言うか、お願いだから目茶苦茶しないで!?



「………………」


 無視!?


 いや、せめてそこはイエスって言ってくれよ!!!!!


「いえ~す」


 おいコラ、こっちを見なさい。



「いえ~すぅ~」


 こっち向いて、僕の目を見ながら言ってみろぉおぉおおお!!!






新しい魔道具作り始動と、丸め込まれるマルクル先輩でした(笑)


本日もここまでお読み頂き、ありがとうございました。



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