百二十一話目 クラス替えとステータスカードの更新日
1月25日の更新です。
本日から新章突入となります。
またお楽しみ頂けたら幸いです。
宜しくお願いします。
クラレンス神父が亡くなってから早2ヶ月が経ち、僕は2年生になった。
沈みがちだった気持ちも、何とか折り合いをつける事が出来る様になり始め、少しずつ笑える回数も増えてきていた。
「シエロ、魔力検査に行こうぜ?」
「うん、今行くよ」
落ち込みっぱなしだった間も、ブロンデやルドルフはずっと僕の側に居てくれた。
慰めの言葉を掛けるでもなくただ側に居て、僕が立ち直るまで見守ってくれたのは正直、凄く有り難かった。
クラレンス神父の事を忘れたい訳じゃないけど、僕が沈みっぱなしだと絶対神父様に馬鹿にされるからさ…。
さて、そんな訳で今日は、短い春休み明けの最初のイベント、クラス替えの為の魔力検査の日でーす!
春休みって言っても、2年生になるにあたっての準備期間って感じで、5日間くらいしかないんだけどね?
何て振り返っているうちに、去年スクルド先生とブロンデに初めて会った思い出の教室に到着。
「あ~、何か緊張すんな?」
「そう?僕は明後日からの授業の方が心配だよ…。ちゃんとついていけるかな~?」
「明日は早く終わるけど、明後日からは上級生と同じ時間割りで進んでいくんだったよね?」
「そうそう、お昼終わってからも1時限あるから間違わない様にしなくちゃな。後、2年生からは1時限の時間が半分になるから、その点も気をつけないとな~?」
「えっ?6年まで1時限の長さって変わらないんじゃないの?」
「ブロンデまでシエロみたいな勘違いすんなよ…。2年生からは1回鐘が鳴ったらお終い!」
シエロみたいなってお前…orz
まぁ勘違いしてたけどね?
ずっと1時限は2時間だと思ってたからね?
ごめんね?
そんな感じにじゃれ合いながら、順番待ちの時間を楽しく過ごす事が出来た。
あ~、何かこういうのも久しぶりだなぁ~☆
「おっ、シエロ来たな?俺は、君なら最高得点を叩き出せると信じているよ?」
先生の前に進み出た僕を見て、珍しくスクルド先生が茶化してきた。
あ~、スクルド先生がこんな事してみせるだなんて、僕はどんだけ周りの人達に心配掛けてたんだろ…。
普段無口なスクルド先生があんな言い方して茶化してくるなんて相当だよ?
も~!反省点が多すぎて、地味に凹むよ…。
「えぇ~?そんな事言って、最下位だったらどうするんですか~?」
「フフ、いくら何でも、そんな訳は無いだろう?そんなにすぐ魔力は減るもんじゃないし、この頃君は何かに取り憑かれたみたいに魔石作りしてたじゃないか…。あんまり、無理はしてくれるなよ?」
とは言えこんな所で凹んでたら更に心配させてしまうだけなので、わざとおどけて返してみたら、僕の頭をポンポンと軽く叩きながら優しく諭されてしまった。
はい…、気をつけます…。
実際この2ヶ月は何もする気が起きなくて、でも魔石作りは日課になってたし、可能なら俺の店に卸してくれよってアイゼンさんに言われてたのを理由に延々と魔石作りをしてたからなぁ…。
まだ正式な部員じゃないからって部活にも顔を出さず、寮に閉じこもって魔石作りばっかりやってたら、そりゃ心配もされるよね?
うぅ、本当にすいませんでした…。
「まっ、とりあえず、やってみると良い…」
「はい!」
先生に見守られながら、僕は水晶玉の上に手を置いた。
あ~、あれから1年経ったんだよなぁ…。
長かったけど、早かったね…?
色々な事があったし…。
「シエロ、終わったぞ?もう手を離しても大丈夫だ…」
「あっ、すいません」
いっけね、いつの間にか終わってた(汗)
僕は慌てて水晶玉から手を離した。
すると、何故か笑いを噛み堪えてる先生から更新されたステータスカードを渡される。
?
何スか?その顔は…。
上手いこと噛み堪えられてなくて、可笑しな顔になってますよ?
「すっ、すまん…。でもまぁ、笑いたくなる様な結果だと言う事だ…。この後どうせブロンデ達と見せ合うんだろう?自分で、結果を確かめてみると良い…」
「はぁ…。分かりました?」
「ん。じゃあ次だ」
そうして、半ば追い出される様に廊下へ出る。
あの意味深な感じは何だったんだろう…?
スクルド先生ったらクラスも教えてくれなかったし…。
実は、4の月に更新されるから長期休み前から3人で数値を見ないようにしようって話してたから、近々の数値を知らないんだよね?
だから今、すっげー不安なんだけど、これは良い意味での笑い、であってるよねぇ?
「あっ!シエロ君!!こっちこっち!」
まぁ、見比べてみれば分かるらしいし、今は保留にしておくか。
と言う訳で、先に廊下で待っていたブロンデと合流し、一緒にルドルフを待つことに…。
「何か此処に立って、シエロ君を待ってるの不思議だった」
「ん?あぁ、去年は僕が先に並んでたから、此処で君を待ってたんだよな?」
そっか、何も考え無しに並んでたけど、僕とブロンデの順番が入れ替わってたのか…。
何となくで並ぶと、出席番号順に並ぶ変な癖が付いてしまっているらしい(笑)
「あっ、此処って言えば、去年変な人にからまれたよね?」
「あ~、何とか子爵の馬鹿息子な?もうあいつに何か会いたくもないよ…」
あのナルシスト野郎は、あれから顔も見なけりゃちょっかい出しても来ないけど、いつまたどこかから現れるのかと思うと、それだけでげんなりするなぁ…。
確か、去年はブロンデが出て来るのを待ってたら絡まれたんだっけ?
「そいつ、3月いっぱいで退学になったぜ?」
「わっ!びっくりした~。何だ~ルドルフか…。驚かさないでよぉ~」
「退学ってどういう事?」
このタイミングで【退学】って事は、あのナルシスト野郎のゾルフ・スティンガーの話しだよな?
あの野郎が退学?
今度は何したんだ?あいつ…。
「俺も昨日兄ちゃんから聞いたんだけどよ―――」
実はあのゾルフ、僕だけじゃなく気に入らない後輩に罠を仕掛けては、ハマった姿を見て喜んでいたらしい。
前から悪い噂の絶えない奴ではあったんだけど、絶対証拠を残さなかった為、学園側も正直対処に困っていたのだそうだ。
で、今回僕に手を出した事で兄さんとエルドレッドさんが動き出した……。
えっ?
「はぁっ?何で兄様が?何で僕があいつに嫌がらせされた事知って…。家族の誰にも言ってないのに…」
「あっ!わっ、悪い…。それ俺だわ…。だってあんまり頭きてよ~?兄ちゃんに愚痴っちまった☆」
愚痴っちまった☆
じゃねーよ!?
何してんの、こいつ!!
えっ?
って事はだよ?
この間うち挙動不審だったのはこの事件を調べてたからって事?
うわっ、マジでか~orz
「本当に悪かったって!まさかこんな大事になるとは思ってなくてよぉ…」
「はぁ…。まぁ、良いよ…。ルドルフは僕の為に怒ってくれたんだもんね?ありがとう…」
はぁ、まぁ影に隠れてやりたい放題やっていた子悪党だ。
兄さんが突き止めなくても、いつかはこうなっていたのかもしれない…。
で、兄さん達が調べたらポロポロポロポロいくつも嫌がらせを受けた被害者が出て来て、しかも僕の時にルドルフを見て騒いでしまった事で目撃者も出て来たんだって。
証言してくれたのはあの時その辺を歩いていた獣人族の生徒達だったそうだ。
彼らは耳が良いから、僕の耳元でこっそり話していた様な内容もバッチリ聞こえたそうで、個別に聞いたのに皆が皆同じ内容だったから、それを証拠として先生方に提出した、と…。
しっかしさぁ~?そんなに沢山の生徒に嫌がらせしといて、良く今まで退学にならなかったな…。
とかも思ったけど、ゾルフの家は子爵。
要は貴族、だ。
この学園内では貴族も平民も、例え王族相手でも平等に扱われるけれど、今まで騙された生徒は平民の子供達ばかり、いくら学園側が平等を掲げても、先生に訴えることで家族に迷惑が掛かるんじゃないかと、誰にも相談出来なかったんだそうだ。
何だかんだ卑怯なあいつが、貴族を狙ったのは僕が初めてだったって事か…。
ただ、僕の家は伯爵、しかも辺境伯だ。
対してゾルフのスティンガー家は子爵。
元々ゾルフの父親のスティンガーさんは士爵だったらしいんだけど、魔族との激しい戦さを戦い抜いた功績を認められて、子爵にまでなった人なんだそうだ。
あっ、士爵って言うのは騎士の称号を王様から拝命を受けた者が一代限り賜れる爵位の事ね?
しかもそのスティンガーさんは、騎士団所属時代の父さんの元部下だったんだって。
それだけの武勲を上げる様な勇ましい人が、今回の騒動を受けて、しかも最後に狙ったのが元上司の息子だと知った上で黙っていられる訳も無く、ゾルフを【自主退学】させたんだそうだ。
それで、ゾルフには上に2人お兄さんが居るらしいんだけど、父親とお兄さん2人でゾルフを鍛え直すと言って、わざわざ学園まで彼を引き取りに来たらしい。
「そっか、あいつこれから色々大変そうだな…」
あいつの泣き叫びながら父親に連行される瞬間の姿が容易に浮かび、確かにあの時酷い目にはあったけど――主にルドルフとアレックス君がね(笑)――、何か可哀想になってきた。
「まぁ、自業自得なんだから、シエロが気にする事じゃねぇよ。それよりさ、早くステータスカード見せ合おうぜ?」
まぁ、あいつに苦しめられてた生徒の事を思えば、これで良かったのかな…?
ルドルフの切り替えの早さにと、持ってきた情報の多さに多少ヒいたものの、僕もルドルフを見習って気持ちを切り替える事にした。
確かに今は、ゾルフなんかよりステータスカードだよな!
2年目のA組が掛かってるんだしね…?
「んじゃあ、せーので行くぞ?」
「うん!」
「おう!!」
僕達3人は、息を合わせてステータスカードを出した。
『こーはんへ、ちゅぢゅく!!』
えっ?
と言うわけで後半に続きます(笑)
本日もお読み頂き、ありがとうございました。