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百十九話目 続々・久しぶりの訪問の日



 え?



「だ~か~ら~、此処へ妖精達を呼べるって話しよ!」


「えっ?どうやって?だって、あの子達は僕の体の中で寝てるんでしょ?今、僕は意思だけの存在だって言うのなら、あの子達とは今繋がってないんじゃないの?」


 いつも近くに感じている気配も無いし、全然呼べる気がしないんですけど…。


 第一、僕妖精達をちゃんと呼び出した事ないよ?



 僕がそうスカーレットに聞いてみると、彼女はカラカラと笑いながら僕の質問に答えてくれた。


「や~ねぇ?魂同士の契約の繋がりがそんな簡単に切れる訳ないでしょ?ただ、此処は貴方達が暮らす世界からズレた場所にあるから、繋がりを薄く感じているだけよ。大丈夫、貴方が呼べば必ず来るから」


 ほらっ!レッツトライ!!


 と笑いながらスカーレットに促されたけど、君は何処でそんな言葉を覚えてくるのさ?


 クレイ共々、同郷の匂いがして堪らないよ…。


 でもまぁ、駄目で元々。


 あの子達が近くにいないと不安なのも確かだし、呼んでみますか。


「ブリーズ、クレイ、フロル、おいで!!」



 僕が妖精達に呼び掛けると、僕の前方にある大気がグニャリと小さく3つ分歪み、小さな破裂音と共に、体を丸めた状態の彼女達が姿を現した。


 ほっ、本当に呼べた…。


「だから言ったでしょ~?ウフフ、生の妖精ちゃんなんて久しぶりだわ~☆」


「この子がフロル君か…。かっ、可愛いなぁ~♪」



「ん。一発成功!流石は、シエロ…」


 ドヤ顔をする三女に、フロルを見て顔をとろけさせている長女。


 そして、何でか知らないけど誇らしげな顔をした次女に囲まれながら、僕の周りをフワフワと衛星みたいに回り続ける妖精達を僕は目だけで追い続けたのだった。



――――――


『ありぇ?ここどこでしゅか?ふろくん、しえろのぽんぽでねんねしてたはじゅにゃのに…』


 舌っ足らずは正義!!(壊)



 じゃなかった…。


「フロル、こっちおいで?」


『あっ!しえろ!!』


 フロルは僕を見つけると、凄い速さで飛んできてポスンと僕の胸の辺りに止まった。


 凄い速さだとは言ってもフロルの場合軽すぎるから、全然痛くないね。


 スカーレットとは破壊力が違うよ(笑)


「シエロン酷くな~い?」


 本当に口でブーブー言ってる人は放っておいて、スカーレットを見ながらキョトンとしているフロルを何とかしなくちゃ…。


 あれ?


 何でキョトンとしてんの…?


『フロル、お早う。ここはね?女神様達がお住まいになっているお屋敷よ?シエロは女神様に招かれたの』


『あっ。ぶりーずねぇね、おはようごじゃましゅ!めがみしゃまのおうち?じゃあ、このおねぇしゃんがめがみしゃまにゃの?』


『フロル?おめさま何言ってんだ?ここにいらっしゃる御3人の方が女神様でねぇか…。もしかして、分からねぇっちゃあんめぇな?』



 先に目が覚めたブリーズとクレイは、目覚めると同時にそれぞれを司る女神の下へ飛んでいき、跪いて挨拶をしていた。


 更には司る女神への挨拶が終わると他の2人にも挨拶をして、それも終わると、今度は僕の所へ猛スピードで戻ってきてドエラい剣幕で何で僕が女神様と一緒に居るんだ、と問い詰められた。


 前にも何度か此処へ来た事がある事、その話しをブリーズにも話した事、それといつの間にかこっちに来てたから何でかは分からないと話すと、理解はしてないけど、納得はしてくれたみたいだ。


 何かシエロだからな…、とか聞こえた気もするけど、気にしたら負けな気がする。



 いや、そんな事よりもフロルの方が深刻そうだよね?


 他の2人も女神達に会ったのは初めてだったらしいけど、すぐに自分達の女神の下へ飛んで行けた。


 でもフロルは僕にしがみついたままで、一向に女神――この場合は樹花担当のスカーレットの所かな?――の下へ飛んで行く気配すらない。


 それどころか、どれが女神かすら分からないみたいだし、生まれたてだからとかあるのかな?


 ブリーズもクレイもその事に気が付いて困惑してるみたいだし、当のフロルも明らかに変わった周りの空気感に戸惑っているみたいだ。



「ぷっ、ククク。これは何とも興味深いな…」


 そんな微妙な空気を壊したのは、意外にもシルビアーナだった。


 さっきまでのとろけた様な表情から、キリリとしたいつもの彼女の顔に戻り、フロルを観察している。


 何がどう興味深いの?


 他の女神もまだ分かってないみたいだし、教えてくれると有り難いんですが…。


「あぁ、すまないすまない。フロルは種こそスプラウトから産まれい出たものだが、シエロの魔力を吸収して育った子だろう?」


 あ~、まぁそうね?


 妖精が産まれてくるって話しを聞いてから、毎日与えてたしなぁ…。


「普通、妖精と言うのは魔力溜まりで生まれるものだ。そして、溜まった魔力は本を正せば私達女神の魔力だ。つまり、私達の魔力から生まれたのだから、親が分かって当然なのだよ。しかし、フロルはシエロの魔力で育ち、生まれたのだから……?」


 あっ、そっか…。


 フロルは女神の魔力に殆ど触れずにここまで来ちゃったから、分からないんじゃなくて知らないんだ。


「御名答!だから女神と言われてもピンと来なかったのだ。シエロとて、友人からこの人が神だと紹介されても頭大丈夫か?くらいに思って俄には信じられないだろう?」


 あ~、確かに…。良い病院を紹介しようか?くらいは言いそう(笑)


 それなら、フロルが変な顔してるのも納得だよね?


 ブリーズ達が心配になるレベルで不安を感じていただろうし…。


『そうだったのね…。フロル、ごめんね?ちゃんと私達が教えてあげなくちゃいけなかったわね?』


『うにゅ?ねぇねおこってない?』


『何でフロルを怒んねっきゃなんねぇだ?』


 うん、妖精達も納得したみたい。


 いつもどおり、皆で楽しく話しをし出したや。



 で、さっきまで格好良かったシルビアーナの顔がまたトロトロにとろけてる…と。



 フロルが笑ったんだもんね?


 見たかったんだもんね?


 気持ちは分かるけどね…。



「まぁ、謎も解けたし。妖精達はシルビアーナに任せるとしてさ、丁度良いからいくつか聞きたい事があるんだけど」


「あら、なぁに?スリーサイズ?」


《ブッ!?》


 話す前に口を潤そうと、含んだばかりのお茶を盛大に吹き出す。


「なっ?なっ、なに言って…!?」


「スカーレット、それ、セクハラ…」


 いきなり落とされた爆弾に、頭が混乱してゴチャゴチャになる。


 ブロナーがツッこんでくれたおかげで、多少動悸は治まったけど、まだ胸と頭が痛い。


 ナニ考えてるんだこいつは!


 今時そんな冗談オッサンだって言わないよ!?


「あはは~、ごみ~ん☆シエロンからかうの楽しくて~」


 やめてよ!心臓に悪いから!?


 くそう、楽しそうに笑いおってぇ~…。


「シエロ君、私の妹が、失礼した…。後でお仕置き、しておくから許して?で、何が聞きたかったの?」


「えっ?ブロナー姉さんからお仕置き?うわ~ん!ゴメンナサイ!それだけは許して~!?」


「だ、め…」


 【お仕置き】の単語を聞いた途端に土下座しだしたスカーレットをあっさりスルーしたブロナーが、話しの続きを促してくる。


 えっ?これ放っておいていいの?


 女神が見事な土下座を披露してますけと…。


「いい。さっ、続けて…」


「あっ、うん…。実はさ、この前変な奴が学園に入ってきて…」


 僕はずっと気になっていた細長い男の話しを簡単に説明した。


 本当はランスロット先生が教えてくれるまで我慢してようかとも思ってたんだけど、やっぱり気になっててさ…。


「あぁ、それな、らシエロ君が考えている、ので合ってる。アレは、魔王の、部下が使ってきた、使い魔…。クラレンスが対処してくれたから、今は、元の姿、に戻ってる」


 やっぱり…。


 魔王関連の話しなら、先生がはぐらかしたのも無理はないな…。


 って言うか、魔王だよ?


 6年生にだって軽々しく話せるもんじゃないよね?



「えっ、と…元の姿って?」


「ただの粘土。それに適、当な服を着せて、簡単、な命令を与えただけの、インスタント使い魔…。だから、目的の眼鏡と、シエロ君、の区別もつかなかった…」


 へぇ~、使い魔にもインスタントがあったのか…。


 じゃなくて!


「眼鏡が狙われたって事は、僕が作ったカメラが狙われた訳か…。魔王はカメラの存在を知ってるって事なのかな?それと、神父様が危険な目に遭うとかは無いの?」


 前にブロナーは、魔王の正体が元妖精だと言っていた。


 アクアの一匹みたいに、女神達のどれかにくっ付いて僕が居た前の世界の様子を見た事があるって事?


「どうだった、かな…?そもそも私は、あんまり、君が居た世界に出掛けた事がなかったし…。後、クラレンスは、大丈夫…。彼は強い、から…」


 んー。


 じゃあ神父様が大丈夫だとして、魔王が同郷、もしくは仲間に同郷の奴が居るとか?


「そんな、情、報は入って来てない…。ごめん、分からない…」


 そっか…。


 まぁいくら女神だってこの世の全てを見通せる訳では無いんだろうし、もし分かれば協力してくれてる人にでも報告してもらえばいっか。


 向こうの知識が魔王側にあるのは脅威になるだろうからね?


「ん。分かった…。そうする。ありがとう…」


「うん。それでさ、もう2つ聞きたい事があるんだけど」


「勿論♪時間が許す限り何でも聞いて?」


 此処に居られる残り時間も気になったけど、それを聞いてる間に時間がきたら泣くと思うので、サクサク質問する事にした。


「この世界に眼鏡が無い訳は?」


「シエロ君の想像通り【スコープ】の魔法が普及しちゃったからかしら。意外と手頃に使える魔法だったから、誰も【眼鏡】まで辿り着けなかったのよ」



 マジか~~orz


 こんな事当たっても嬉しくないよ…。


「じゃあ、この時もだけど、ちょいちょい人のモノローグに割り込んでくる声も…?」


「ぴん、ぽ~ん。私、達の声…」


「シエロンって、割と此処にこれちゃったからか、私達と繋がりやすくなってるのよねぇ~。たぶん、もう少ししたら【光魔法:神託】を覚えられるんじゃないかしら?」


 【光魔法:神託】?


 文字から推測すると、君達から御告げをもらえたり、話しが出来たり的なやつ?


「そうそう、そんな感じ☆司祭とか司教とかの、徳が高い奴しか使えない魔法ね?」


 徳の高い司教とか司祭ねぇ…。


 まぁ良いや、次は―――。


「あっ、ごめ、ん…。時間になった…。妖精達、シエロ君の中に戻っ、て…?」


 えっ?


 嘘っ!?


 もう時間?


 そうこうしている内に、慌てた様子の妖精達がお腹の中に収まり、僕の周りの景色がグニャグニャと歪み始めた。


 何で此処に来ると、行きも突然、帰りも突然なんだ!?


「何か、合った、ら、私達の名前、を呼ぶ、と良い…」


「そうしたら、また寝ている時に貴方を此処へ呼べるから……。絶対、よん…ね……?」


「い……な?何か……ったら、私達…よ………」



 あ~、いつも最後の言葉を聞き逃す…。


 途切れ途切れの女神達の言葉を聞きながら、僕の意識も途切れていった。





フロルにデレッデレな長女でした(笑)


本日もお読み頂き、ありがとうございました。


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