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百十八話目 続・久しぶりの訪問の日



 その後、お茶を汲んで戻って来たランパートさんを交えて暫く会話を楽しんだ僕は、クラレンス神父の仕事の邪魔にならないうちにお暇する事にした。



「では僕はこの辺で失礼致します。神父様、お仕事中にお邪魔して申し訳ありませんでした。ブラザー・ランパート、美味しいお茶をご馳走様でございました」


「おや?もうお帰りですか?寂しいですが、シエロ様にもご都合がおありなのでしょう。ブラザー・ランパート、お見送りを頼みます。シエロ様、またこの教会に足をお運び下さい。何もお構いは出来ませんが、お待ちしております」



 と言う事になり、道は分かるけど勝手にウロウロ歩き回るのも悪いので、ランパートさんにまた案内してもらう事になった…。


 別れの挨拶を互いに交わし、クラレンス神父が居た執務室を後にしたんだけど――



「シエロ様、さようなら」



 ユルユルと、手を小さく左右に振りながら見送ってくれる神父様の笑顔が何処か儚げで、何故か僕は扉が閉まるまでの間、目を離すことが出来なかった。


《パタン》


「さぁ、参りましょう」


「えぇ、お願いします」


 それから教会入り口の扉までの道中、最後の神父様の顔を振り払う様にランパートさんと色々な話しをした。


 ランパートさんの話しはクラレンス神父にされた苦労話が殆どだったけどそれなりに面白くて、さっきまで3人で話していたおかげのあってか、来た時みたいなギクシャク感も無く、あっという間に礼拝堂に到着、気が付いたら扉の目の前に着いていた。


「本日はありがとうございました。神父様があんなに楽しそうにお話しになる姿は久しぶりです。是非またお時間がございます時にでも、お立ち寄り下さい」


「此方こそ、お時間を作って頂きありがとうございました。是非ともまた寄らせて頂きたいと思います」


 互いに最後の別れの挨拶を交わし、扉を開けて外へ出る。


 良かった、まだ晴れてた…。


 この辺の冬の天気は乱高下。



 いつ天候が変わるか分からないんだよね~。



「では、此方で失礼致します。あっ、そうそう、ランパートさん」


「はい、何でしょうか?」


 空模様を確認しランパートさんの方へと振り返った僕は、まだ彼に伝えていなかった真実を告げる。


「僕は男ですので、悪しからず。ではごきげんよう」


「えっ?」


 固まる彼をバックに、僕は家路へと急いだ。


 だってさ、クラレンス神父が説明してくれるのかと思ったらあの親父ニヤニヤしてるだけで、1つもランパートさんに説明してくれないんだもん。


 何か自分から言うのも恥ずかしかったから、結局最後までズルズルしちゃってさ…。


 来年クラレンス神父が神父を辞めて、何処か別の場所へ行ってしまうとしても、フルスターリの洗礼式もあるし、この教会とのお付き合いは続けていきたかったから、最後になっちゃったけど正直に話した。


 まっ、まぁ言い逃げみたいになったけど、後はクラレンス神父に丸投げって事で(笑)



『久しぶりにシエロの真っ黒い部分が出たわね』


『んだな…。時々おっかねぇ事すんだかんな?この御仁は…』


『ふろくん、はじめてみたでしゅ。しえろかっこいいでしゅ!』


『『えっ!?』』


 何か妖精達が騒いでるけど、聞こえませーーん!


 と言う訳で、僕は家までダッシュで帰ったのでした、まる!


――――――


「んっ…」


 目が覚めると、僕は真っ白い空間に立っていた。


 靄がかかり、足下すら見えない地面。


 前を見ると小高い丘が見え、その上に真っ白い神殿が厳かに建っている。


 そして、そこまでの道を示すかの様に等間隔で並べられた、白い石造りの柱。


 うわっ、何か久しぶりに来たなぁ…。


 前回来た時は、記憶が無かったから近くに見えてるのに神殿まで辿り着けない~(汗)とかってやってたんだよな~。



 僕は、自然と顔がニヤケるのを感じながら、女神達の住まう神殿までの道を【逆方向】に歩き出した。


 3……。


 2…。


 1。


 ほい、着いたっと。


 神殿とは逆方向に歩き出したはずなのに、3歩進んだところで神殿の前に到着。


 前の僕ならビックリして腰を抜かすところだよね(笑)


 さてと…。


「ごめんくださ~い」


「は~い☆シエロン久しぶり~♪」


 神殿の扉を開けたところでお約束の三女による奇襲攻撃を受けた。


「どわっ!?」


 当然、僕が勢いのついた彼女の体を受け止めきれる訳もなく、2人とも地面と仲良くする羽目に―――――ならなかった。


「あれ?」


「2人、とも何、やってるの…。スカーレット、貴方は良くても、シエロ君が怪我、したらどうする、の…」


 あっ、ブロナーが助けてくれたのか…。


 地面に叩きつけられるはずだったスカーレットと僕は、見えないけどふわふわと柔らかいナニかの上に転がっていた。


「ブロナー、久しぶり。助けて、くれてありがとう…。くっ!?下が柔らかすぎて起き上がれない!??って言うかスカーレット、退いて!!」


「にゃはは~♪うわっ!?」


「何か玄関先が騒がしいと思ったら君か…。はぁ。スカーレット、いい加減君はシエロに飛び付く癖を直しなさい」


 中々起き上がれずに四苦八苦していると、シルビアーナが出て来てスカーレットをつまみ上げ、続いて僕の体を起こしてくれる。


 う~ん、流石は長女、逞しい…。


「褒め言葉になっとらん。さっ、いつまで玄関先に居るつもりだ?とっとと中に入りたまえ」


 と言う事で、シルビアーナに促されるまま、僕は家の中に通されたのだった。


 んー、何か凄く久しぶりなのに、気を使わないこの感じ…。

 良いなぁ~(笑)


――――――


「はい、どうぞ~♪今日は貴方の好きなエルフティーにしてみたわ☆」


 そう言いながら、スカーレットが僕の前にお茶を置いてくれたので、お礼を言って受け取る。


 あっ、【エルフティー】って言うのは【緑茶】の事ね?


 ランスロット先生達エルフ族の人達は、ただ単に【お茶】って呼んでるけど、他の種族はエルフが飲むお茶って事で【エルフティー】と呼ばれているんだって。


 その昔――祖父さん達がまだ小さい頃の話しだけど――エルフ族の飲んでるお茶を飲むと魔力量が増えるとか、産まれてくる子供の魔力量が大きくなるとか様々なデマが流れて爆発的に人気になったんだそうだ。


 でもまぁ、そんなガセ情報に踊らされた流行が長く続く訳もなく、あっという間に流行は去って、今は一部の昔ながらのお茶屋さんが扱う程度に落ち着いているらしい。


 え?何でそんなに詳しいかって?


 この間布とかを買い出しに行った時に、ランスロット先生から教えてもらったお茶屋さんに寄ったら教えてもらったんだよね♪


「シエロ、もうお茶の話しは良いだろう?それより、その…。君のところに居る小さな妖精は元気なのか…?」


 僕が緑茶…、エルフティーに対して熱く語っていると、何かモジモジしながらシルビアーナが遮ってまで話しかけてきた。

 はて?小さな妖精?


 僕の妖精は皆小さいけど…。


えっ?あっ、そうじゃなくて年が小さい妖精?


 あっ、何だ何だ、フロルの事か(笑)


「フロルは元気だよ~?この頃依代の鉢植えから、僕が作った魔石の方にお引っ越しして、四六時中一緒に居られる様になったし。でも何でフロルの話し?シルビアーナは花樹担当じゃなかったよね?」


「自然、界の中でも産、まれる妖精が減ってる昨今、に、おいて、シエロ君、は種の段階から、妖精を育て上げた。シルビアーナ姉様はそこに、興味がおあり…」


 へぇ、そんなに珍しい事だったんだね?


 ん~。


 そうは言っても、僕も途中まであの花から妖精が爆誕するとは思ってもいなかったからなぁ~。


 観察日記とか書いとけば良かったのかな?


「あはは。ブロナー姉さん、シルビアーナ姉さんは単にフロル君に会いたいだけよ~♪姉さんちっちゃくて可愛いもの大好きだからね☆」


「スカーレット!折角ブロナーがうまい具合にシエロに話してくれたと言うのに!!」


 あらら、シルビアーナの顔が真っ赤になっちゃったよ…。


 でも、そっか…。


 確かにこの家、可愛い小物が多いもんね~?


 前回来た時も、シルビアーナの趣味だって言ってたし…。


 でもさ、此処へ来ると一緒に居たはずの妖精達の気配がパッタリ無くなるんだよね。


 確かに僕のお腹の中で寝てたはずなんだけど…。


「あぁ、それは、前も説明した通り、此処が意思の世界だから…。確かに、シエロは此処にいるけど、体はシエロの、部屋の中で眠っている、の。だから、シエロの体、の中で眠っている妖精達が、いるはずが、無い」


 ん~、そう言われれば、前回そんな話しを聞いた気がする…。


「じゃあ、此処へフロルやブリーズ達を呼ぶことは出来ないんだ?ん~、何か代わりにシルビアーナが喜びそうな、フロルの話しでも……」


「えっ?呼べるわよ?」



 えっ?


 呼べんの?






久しぶりの女神3姉妹の登場です。


本日もここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。



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