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百十七話目 久しぶりの訪問の日



 魔道具&お土産騒動から一夜明けた明くる日。


 僕はクラレンス神父の居る教会までやって来ていた。



 眼鏡型カメラのアフターケアと、学園に送られてきた魔道具の代金が多すぎるので、返しに来たんだ。


 流石にカメラの値段が金貨10枚(100万円)は高すぎるでしょ?


《ガチャ、ギィーー…》


「ごめんくださ~い」


「は~い!」


 あれ?中からじゃなくて外から返事が聞こえなかった?


 聞こえてきた足音に振り返ると、兄さんよりも少し年上そうな若い修道士が裏から走ってくるのが見えた。


 あっ、もしかしてあの人が噂のブラザー・ランパートかな?


「おっ、お待たせして申し訳ありません。本日の御用は何でしょうか?」


 さっ、爽やか~!?


 今日はやたらと天気が良くて、そのせいか陽光がキラキラと彼の頭上から降り注いでいて、イケメンが更に倍率ドン!??(古)


 歯までキラッ☆と輝いた!!


 すげ~、本当に歯がキラッ☆て光る人実在したよ(笑)


「どうかされましたか?」


「はっ!?失礼致しました。実は本日は神父様に用が御座いまして、お取り次ぎ頂けますでしょうか?」


 危ない危ない、いくらなんでも見つめすぎた。


 無言で見つめるとか、ただの不審者だよね?(汗)


「あぁ、神父様のお客様でしたか。只今神父様は執務室におりますので、そちらまでご案内致します」


「ありがとうございます。あっ、これは教会への心付けです。何かにお役立て下さい」


 ありゃ?お仕事中だったか…。


 まぁ、そこまで案内してもらえるみたいだからお願いしちゃおう。


 と、その前に用意しておいた心付け、所謂チップを渡しておかなくちゃ。


 少しばかりですが、教会が運営してる孤児院にでも使ってもらえたら嬉しいです。


◇◆◇◆◇◆


 本日、教会に天使が舞い降りられました。


《「ごめんくださ~い」》


 との声が教会の入り口の方から聞こえた為、慌ててお出迎えに向かうとそこには、陽光を浴びてキラキラと輝く金糸の如き髪を肩口よりも少し下くらいまで伸ばした小柄の少女が立っていました。


 私の足音に気が付いたのか、此方を振り返った少女を見た時、確かに時が止まったのです。


 吸い込まれそうな何処までも深い青の瞳、ぷっくりとした春の花を思わせる唇。


 頬は寒さからかほんのりと朱く染まり、背中には目に見えぬ翼が有る様にすら錯覚させました。


 種の違う3体の妖精達を従えて教会にやって来た彼女が、本当に天の遣いの様に見えたのです…。


「おっ、お待たせして申し訳ありません。本日の御用は何でしょうか?」


 とは言え余り不躾に見つめる訳にもいかず、何とか声を振り絞り、挨拶と御用件についてお伺いしました。



 うぅ、上手く笑えてるやろか…。



 あれ?


 挨拶をしたものの、彼女から何の反応もありませんね?


 もしや、何処かお身体の調子でも…?


「どうかされましたか?」


「はっ!?失礼致しました。実は本日は神父様に用が御座いまして、お取り次ぎ頂けますでしょうか?」


 はて?


 何事も無かったかの様に話されていますが、イケメン、とは何の事でしょうか…?


 ん~、この方の周りに妖精が3体も居るからか、はたまた彼女もそれに類する存在だからなのか、思考に雑音が交じりとても読みづらいのです。


 とにかく妖精が付き従っているくらいですし、悪しき存在ではないでしょう。


 どうせ神父様も書類整理に飽きてくるお時間ですし、お通ししても問題はないでしょうね。


「神父様のお客様でしたか。只今神父は執務室におりますので、ご案内致します」


「ありがとうございます。あっ、これは教会への心付けです。何かにお役立て下さい」


「これはご丁寧に…。貴方に女神様のご加護がございますように…。ではご案内致します」


 私は足取り軽く、この心優しい少女を神父様の下へご案内致しました。


◇◆◇◆◇◆


「神父様、お客様がお越しになりました」


「はて?どなたでしょうか…。取りあえずお通し下さいますか?」


 案内してくれた修道士さんが部屋の中に向かって声を掛けると、中からクラレンス神父の声が聞こえてきた。


 別に今日来るって約束した訳じゃないから、不思議そうな声だったな(笑)


「では、入ります。どうぞ――」


《キィッ》


 修道士さんが扉を開けてエスコートしてくれる。


 きっとこの人、僕の事女の子だと思ってるんだろうな~…。


 エスコートがスマートすぎて怒る気も起こらねぇよ。


『ぶふっ』


 クレイ…、また君かね…。


 何かお前にも腹が立たなくなってきたよ…。


 はぁ、ただただ泣けるわぁ~…。



「神父様、来たよ~」


「おや、お客様とはシエロ様の事でしたか。どうぞ、何もないところですが、お入り下さい」


 そうは言っても此処で泣き出したらただの危ない奴なので、僕は我慢して笑顔を作ると、神父様へ軽く挨拶をしながら部屋の中へ足を踏み入れた。


 すると、今までスマートにエスコートしてくれていたイケメン君が―――。


「えぇ!?こっ、この方がシエロ・コルト様やったんですか!??」


 と急に叫び出した。


 って言うか、何故に関西弁…?


「こら、ブラザー・ランパート。また素が出ていますよ?それとお客様の前で何ですか?」


「もっ、申し訳ありません。シエロ様は男性だとばかり思っておりましたので、つい…。あっ!重ね重ね失礼致しました。只今お茶を入れて参ります」



 そう言って僕に対して平謝りした彼は、慌てながら部屋を飛び出して行った。


 一体何事…?


 って言うかあの関西弁、素だったの…?



 あぁ、それと神父様?


 彼を叱るにしても、流石にニヤニヤ笑いながらってのは止めた方が良いッスよ?


 楽しんでるのが丸分かりッス。


「ククク、失礼。つい顔に出てしまいましたね?いや~、まさかランパートまで貴方の性別が分からないとは…。フフフ」



 ちょっとあーた!笑ってんじゃないわよ!!(壊)


 止めよう、何かふざけるのすら虚しくなってきた…。


「はぁ、もう良いですよ…。と言う事は、ランパートさんも光の精霊なんですか?」


 諦めた僕が、話題を変えてそう問うてみると、神父様はまたニヤニヤと口を歪めて楽しそうに笑った。


 そんなに笑ってたらバレバレですよ?


「フフフ、流石はシエロ様ですね?そうです、ブラザー・ランパートも光の精霊ですよ?でなければ私の代わりは務まりませんからね?」


 やっぱり…。


 普通のヒューマン族がクラレンス神父の代わりなんか出来っこないとは思ってたけど、やっぱり彼は光の精霊だったんだね?


 ねぇ、誰か分かった?


『私は分からなかったわ?スッゴい人間っぽかったから…』


『同じく』


『でしゅ』


 ん~、妖精達にもバレないくらいの凄い精霊さんにも僕の性別が分からないなんて…orz


「クブッ!ククク失礼。彼には私が作った認識阻害の魔道具を身につけてもらっていますからね?皆さんが分からなくても無理はありませんよ」


「は~、そんな魔道具があるんだ…。後で見せて下さいな?」


 それで今笑ったのは許して差し上げます(笑)


「えぇ、シエロ様に許して頂く為にも、きちんとお見せ致しますよ。ところで本日は如何なさいましたか?貴方から此方へ来るのは久しぶりですねぇ…」


「あ~、本題を忘れるところでした。今日はこれをお返しに来たんですよ。流石にこれは貰いすぎです」


 いけね~いけね~。


 光の精霊の関西弁に度肝を抜かれ過ぎて、今日の主旨を忘れるところだったや(笑)


 あはは~と笑顔で誤魔化しながら、僕は異空間リングからお金の入った布袋を出して、神父様の前の机の上に置いた。


「材料費、及び技術料として金貨3枚は抜いてあります。残りは貰えませんのでお返しします」


「シエロ様…。はぁ、貴方は一度、御自分のお作りになった魔道具の価値を見直された方が宜しいでしょう。良いですか?貴方がお作りになった【カメラ】は、アーサーが持っていた【肖像画撮影機】でも最小化に成功した魔道具だった物を更なる高みへと押し上げた品です。本来ならお渡しした金額でも少なすぎるのですよ?ゴードンからも言われたのでは?」


 僕がお金を机の上に置くと、今まで楽しそうにしていた神父様の眉間にギュビッと皺がより、訥々と諭されてしまった。


 ん~、いくら最小化して、魔道具の価値を上げたと言われてもなぁ…。


 前の世界では普通に売られている物だし、何よりこれ材料費がほぼゼロなんだよね?


 何せ眼鏡のフレームもレンズも寮の裏手の森から土魔法を使って集めた材料で作ったやつだし、カメラ用の魔法も返って空間魔法と光魔法の練習になったから、むしろこっちがお礼をしたいくらいなもんで…。


 あっ、また僕の思考を読んでるな?


 眉間の皺はそのままだけど、苦笑から呆れ顔になってるぞ?


「はぁ~。例え材料費が殆ど掛かっていないのだとしても、この眼鏡の枠、純度の高い銀じゃないですか…」


「あれ?真っ黒に塗ってあったのに良く分かりましたね?」


「当然です。銀と光の妖精・精霊は魔力の親和性が高いですからね?すぐ気が付きましたよ」


 銀と光の妖精・精霊とは相性が良いなんて初めて聞いたし、僕が銀製にしたのは、ただ単に銀は魔法を良く通すって授業で習ったから採用してみただけ(笑)


 確かに作った時、何時もより光魔法のノリが良いな~?何て思ったけど、相性の問題だったのか~。


 覚えとこ…。


「えぇ、しっかり覚えておいて下さい?そして、純銀製の品が、金貨3枚な訳ないでしょう!金貨3枚何て、純銀製の小さな投げナイフくらいしか買えませんよ?」


「使った量的には投げナイフに使われてる銀よりも少ないですけどね?」


「魔道具に加工する分と、技術料がスッポリ抜けてますよ?貴方御自分の技術を安く見積もり過ぎなんですよ!!その内、悪い商人にでも騙されて大変な事になりますよ?」


 う~、そんな事無いとは思うんだけどなぁ…。


 良く疑り深いって言われるし、こんなに安く譲るのも身内だと思ってるからだし…。


「はぁ、私の事を身内だと思って下さるのは非常に光栄ですが、流石にこのお値段で頂くのは私の方がモヤモヤ致します。せめてもう3枚、金貨をお取り下さい。金貨6枚と言う事に致しましょう?」


 いや、致しましょう?って言われても…。


 とは言え、神父様がこう言う物言いをする時は引く気がない時なんだよね。


 こんな所で押し問答しながら時間使うのも馬鹿みたいだしなぁ~。


「分かりました。有り難く頂戴致します。その代わり、写真の現像があったらサービスで紙に焼いていきますよ?」




 今思えば、妥協点としてクラレンス神父にそう提示したのが間違いだった…。


 ランパートさんがお茶を入れて戻ってくるまでの間、僕は延々とランパートさんアルバムを作らされるハメになったからだ…。


 もう!この前の時も思ったけどさぁ?


 どんだけランパートさんばっかり撮ってんのさ!?






久しぶりに登場のランパートと、ニヤニヤが止まらないクラレンス神父でした(笑)


本日もお読み頂き、ありがとうございました。

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