百十六話目 続々・初めての帰宅の日
「こりぇ、にいしゃまがつくったまどーぐでしゅか…?」
「そうだよ?ほら此処の赤いボタンを押してごらん?」
「あい!」
冬休み2日目、僕は朝から妹のフルスターリに捕まっていた。
学園での話しを聞きたがったフルスターリの為に、始めは兄さん達も一緒に楽しく話していたんだけど、直ぐに2人とも両親に呼ばれて行ってしまったから、フルスターリと向き合って2人で楽しく話すハズだった。
…んだけど。
僕が学園でやった事って、魔道具作りと薬草作りくらいしかないんだよね~?
と言う訳で、でも薬草の話しはつまらないだろうから省いて、次から次へと魔道具を取り出して見せていたら、いつの間にか僕らの周りが魔道具だらけになっちゃってた(笑)
う~ん、フルスターリの部屋の中が魔道具屋さんみたいになっちゃったけど、フルスターリが楽しそうだから良いか♪
「あっ!なんかでてきましゅたよ?にいしゃま!!」
今は最新作のポラロイドカメラで遊んでるところだったんだけど、一々驚いたり喜んだりしてくれるから楽しくって仕方がない。
「うん、じゃあ出て来た紙を見ていてごらん?面白いよ~?」
僕がそう言うと、フルスターリはキラキラしたお目めで、出て来た写真紙を見つめている。
「あっ!なんかえがでてきましゅた!?にいしゃまがかいてありましゅ!!しゅごいしゅごい!!」
あ~、可愛い。
「それは写真って言うんだよ?その魔道具を使えば、周りの景色をその紙に写し出す事が出来るんだ」
「しゃしんでしゅか?にいしゃますごいでしゅ!!」
あ~、可愛い(笑)
「本当に凄いね?それは【肖像画撮影機】じゃないのかい?そんなに小さな品物は始めて見たよ」
あれ?
いつの間にかフルスターリとの会話に父さんが混じってた。
さっき僕を撮った写真を見ながら、感心した様に顎に手をあてて、うんうんと何度も頷いている。
「父様、先に行ってしまうなんて酷いですわ!!」
あれ?皆も…。
母さん、兄さん、姉さんの3人も父さんに続いて部屋に入ってきた。
姉さんはぷんすこしてるけど、他の2人は苦笑気味だ。
「もうお話しは宜しいんですか?」
「あぁ、難しい話しはお終いだ。それより楽しそうな事をやっているね?こんなに沢山の魔道具、どうしたんだい?」
「にいしゃまがつくったんでしゅ!」
父さんの質問に答えようと口を開けたら、妹に先を越されてしまった。
しかし、ドヤ顔の3歳児の破壊力はヤバいな(笑)
腰に手を当ててふんぞり返るフルスターリマジ天使。
んで、何で父さんと母さんは固まってるの?
今年この顔沢山見たから、もうお腹いっぱいなんだけど…。
「し、シエロがこれを全部?」
「すっ…」
す?
「凄いよシエロ!!」
「凄いわシエロちゃん!!」
うぉ!?
やっぱりこうなった!?
ち、ちょっと落ち着こう。
ね?
もう絞め落とされるのだけは勘弁して~~!?(焦)
――――――
何とか絞め落とされるのは回避出来た僕だったけれど、その代わり魔道具鑑賞会が急遽始まってしまった(笑)
僕がこの一年間で作った魔道具全てを、フルスターリにさっきしてあげた様に使い方や見方を説明して、気に入った魔道具を実際に使ってもらっている。
んで、母さんは【モノクル(片眼鏡)】を掛けて、僕の妖精達と姉さんの妖精達に囲まれて、それはそれは幸せそうに笑っていた。
父さんは父さんで、【ポラロイドカメラ】をあちこちに向けながら連写して…。
って父さん!?
まだ写真紙少ないんだから、あんまり無駄使いしないで~!!
「素晴らしいよシエロ!!他には何を作ったんだい?」
慌ててカメラを取り上げた僕に、怒る事なく次の魔道具の話しを聞いてくる父さん。
うん、やっぱりうちって貴族らしくないかも(笑)
普通さ?僕がいくら息子だからって、いきなり取り上げられたら怒るもんじゃね?
まぁ、写真自体は取り上げなかったから、あんまり気にしてないのかもしれないけど…。
「次ですか…?んー…。あっ!」
僕達の姿が写った写真を見ながら、御満悦そうな父さんを見てたら思い出した。
って言うか忘れてた!
「魔道具ではないのですが、僕父様、母様、フルスターリにお土産があるんでした」
「お土産?」
「あら、お小遣いも碌に渡せていないんだから、気にしなくても良かったのよ?」
【お土産】の言葉に手放しで喜ぶ父さんと、すぐさま心配してくれる母さん。
うん、分かりやすい(笑)
でもまぁ、お金に関してはここのところ【臨時収入】が【立て続け】にあった事だし、父さんみたいに気にしないでほしいところ。
「僕の作った魔道具が思ったより高く売れたのでご心配なく。それに、掛かったのは生地と糸代、毛糸代くらいですから…」
そう、僕のお土産とは、街で見かけたいい感じの生地を仕立てた物だからね♪
いや~、最近魔道具作りばっかりやってて、裁縫何て小物くらいしか作れてなかったから楽しかったなぁ~。
体の調子が何処かおかしかった事もあって、あの事件以降放課後はすぐ寮に帰って針仕事ばっかりしてたんだよね?
そのお陰もあって、妖精達の新しい服プラス両親と妹のお土産まで作れちゃったと言う訳(笑)
「お気に召す品になっていれば良いのですが…」
そう言いながら異空間リングから取り出したのは、父さん用の茶色のニットベストと、母さん用の淡いピンク色のニットのストール。
そして、フルスターリ用に作ったエメラルドグリーンのキュロットスカートだ。
父さんと母さん用のは縫い物って言うより編み物になっちゃったけど、冬だし良いかな~?って思って作ってみた(笑)
「まぁ、これもシエロちゃんが?あらあらまぁまぁ、素敵なストール♪」
「へぇ、シエロは手先が本当に器用だねぇ?うん。肌触りも良いし、良い色だ。ありがとう、シエロ」
良かった…。
何だかんだ家族に手作りの品を喜んでもらえると嬉しくなるよね?
両親はそのまま、お互いの品を触ったり色味を褒めあったりしながらイチャイチャし始めたので、あんまり見ないようにして…。
「フルスターリのはスカートだけどズボンなんだよ?履いてみる?」
「はい!はきたいでしゅ!!」
両手を挙げてそんなに可愛いお願いされたら兄さん頑張っちゃうよ?(笑)
さて、フルスターリ用に普通のスカートじゃなくてキュロットスカートを作ったのは訳があって、実はこの娘、僕と違ってとにかく走り回りたいお人なのだ。
両親はなるべく大人しく、お淑やかにしていてほしいみたいで、フルスターリにフワフワフリフリのスカートやらドレスやら着させたいらしいんだけど、当のフルスターリは僕らが履くような男物のズボンや服を着たがってきかないのだ。
今回フルスターリに似合いそうなエメラルドグリーンの綺麗な布地を見つけた時に、その事をふと思い出したから作ってみる事にしたと言う訳。
これならスカートだけどズボンでもあるからガッツリドレスとかスカートよりは、ある程度動きやすいだろうと思うんだよね?
作り様によっちゃドレスっぽくも作れるしさ。
「にいしゃま、はけまちた!!」
僕と姉さんの手を借りながらも着替えを終えたフルスターリは、キュロットスカートを履いて嬉しそうにクルクルと回ってみせた。
うん、何処かヒキツレてたり、ほつれている様な場所もないし、いい感じだね?
うんうん。
やっぱりエメラルドグリーンの生地を三段重ねにして、フリルリボン風にドレープを付けたのは正解だったね。
回る度にスカートがフワリと揺れて、しかもおパンツは見えない。
何気に、今日彼女が着ていた真っ白なブラウスとアイボリーカラーのカーディガンとの相性も良さそうだし…。
うむ、完璧だ!!
妹にデレッデレなシエロでした(笑)
本日もここまでお読み頂き、ありがとうございました。