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百七話目 クレイ×2の日



 僕の作った人工魔石が、日本円で言うところの24万円で売れ、更にエストラ先輩のお父さんを師匠が連れてきてくれました。


 まさかの金額に驚いてるところでのお父さんと師匠のご登場に、もう何処に驚いたら良いのか分からない僕なのでした(混乱)!



「エストラの部活の後輩と聞いて来たが、坊主がそうか?」


 !


 久しぶりに一発で男だと認識してもらえた…(泣)


 エカイユさんって凄い良い人だね?



「はい。僕は魔道具研究会見習いのシエロ・コルトと申します。いつも先輩にはお世話になっております」


「あぁ、そんな堅苦しい挨拶は不要だ。うちの妖精に用があるんだろ?」


 僕がお辞儀しながらそう挨拶をすると、大きくてゴツい手で頭をポンポンと軽く叩きながら制された。


 うん、やっぱりこの人良い人だ~。


 あれ?


 エカイユさんは妖精が自分に付いてるって知ってるんだね。


 もしかしてこの人も【見える人】だったりするのかな?


「あぁ、シエロ。こいつに妖精の姿は見えとらんぞ?ドワーフ族は耳が良いからな、妖精達の声が聞こえるんだ」



 おっと、また顔に出てたのか…。


 ん~、昔は鉄仮面のソラちゃんで通ってたんだけどなぁ…(笑)



「声、ですか?」


 そう言えばエストラ先輩も昔は妖精の声を聞いたって言ってたよね…?


 まぁその後、今は聞こえなくなっちゃったけどな?っ続くんだけどさ…。


 あの時の先輩、凄い寂しそうだったなぁ~。



「そうだ。ワシらは昔からそうやって彼らの言葉を聞き、交流をしていたのだ。ドワーフは金物を作るのが得意だから、それを交換材料にしておったんだな」


「その点は羨ましいけどな?俺ぁ妖精の姿も声も聞こえないからよ?まぁ、良いから先に金しまっとけ?ほら、無くしちまうぞ?」


 アイゼンさんは、そう言ってカウンターに置かれた袋を指差した。


 いや、でも…。


 こんなに貰えないだろ~(困)


「なぁシエロ。もしこれが天然物なら、あの魔石には全部で金貨5~6枚くらいの価値があったんだぜ?人工物の適正価格って事で、このくらいまで価値が下がっちまうらしいんだが、お前が遠慮する道理は一つも無い。ほれ、ちゃっちゃっとしまっておけ」



 はぁ~?


 こちとら24万円でも驚いて怖じ気づいてるのに、天然物は5~60万円?


 んー、やっぱり天然物は違うんだね?


「まぁ天然物は加工の手間があるから、案外人工物の方が職人は楽なんだがな?ほれ、自分の魔導袋か異空間リングにでもしまっとけばよかろう」


 ほらっ、と師匠が投げてよこした袋を慌ててキャッチ。


 うわっと!?あっ、危ねぇ~。


 大金落とすとこだったじゃないかぁ…(汗)


 慌てて掴んだ袋の重みを感じ、改めてこの世界で初めて自分で稼いだお金だと言う事に思い至る。


 おぉ~、何か感激だな…。


 思わず袋を握りしめる。


 え?


 お前魔物倒してお金貰ってただろ?って?


 あれは何か違くね?


 ほら、僕勘違いしてたしさぁ…。



「ははは、お前んちの奴は皆庶民的だなぁ~?貴族なんだから、金くらい珍しくもないだろうに…」



 ア~、家ハ特殊何デスヨ…。


 皆からの生暖かい視線が段々痛くなって来たので、頂いたお金をリングの中にしまった。


 ここは有り難く頂いておこう…。


――――――


「俺に付いて来た妖精(やつ)は、普段裏庭の花壇の中に居るんだ…」


 エカイユさんのその一言で、僕達は裏庭に案内されている。


 ルドルフがさっきから嬉しそうに家の中の説明をしてくれているのを横目に、厳ついおじさ…こほん。


 職人さん達が作業しているところを見学させてもらいながら進む。


 煮えたぎる炉の中からドロリと融けた鉄を型に流し込み、鋳物を作る職人さん。


 鉄を大きな金槌を使って、2人がかりでカンカンと鍛える職人さん達。


 等々、いつまでも見ていられる光景がそこかしこで繰り広げられていた。


 金槌を赤く熱された鉄に勢いよく打ち付けると、鉄から細かな火花が散り、段々と伸びてくるのが分かる。


「あの作業を何回も繰り返すと、強い鋼になるんだ。アレを使って刃物系の武器を作るんだぜ?」


 僕とブロンデが職人さんを見つめている事に気づいたルドルフが、そう説明してくれた。


 因みにクレアさんは店内を見て回りたいから、とさっきのカウンターのある部屋に残っているので、此処にはいないよ?


 ん~、それにしてもさ?前の世界でもテレビか何かでやってるのを見た事はあったけど、やっぱり間近で見ると迫力が違うよねぇ…。


 熱気とか、稀に火花とかもこっちにリアルタイムで伝わってくるし……。


 あっ、火花、か…。


 スパーク君、今頃どうしてるのかな?



 あれから5ヶ月が経った訳だけど、彼はまだ帰って来てないんだ…。


 頭の中では大丈夫だって信じてるけど、心の隅っこの方で彼を心配する気持ちがチリチリしていて、時々不安に駆られる事がある。



『大丈夫だぁ。あれも個体差があって、早いのは一週間もかかんねって話しだけっど、スパークはのんびりしてっがらなぁ?きっと出てくんのにも時間さかかってんだべ』


 うん、そうだよね?


 僕が不安に駆られる時は、いつもこうやってブリーズやクレイ、最近はフロルも混ざって力強い言葉をくれる。


 あっ。


 昨日マルクル先輩のモノクルを借りた兄さんが、自分の周りをキョロキョロ探していたのを思い出す。


 そっか、兄さんがあの後ついた小さなため息の事が頭に残ってたんだな…。


 うん、帰ったら兄さんにちょっと優しくしてあげよう。


 お土産、何が良いかな…?



「おっ?何だルドじゃねぇか!お帰り!!」


「久しぶりだな?元気だったか?」


「おっす!ただいま~!!」


 ルドルフに気がついた職人さん達が、口々に声を掛け始めた。


 髭面で泥まみれ、煤まみれのおやっさん達が、自分の子供に接するみたいに話し掛け、笑っている。


 その様子を羨ましそうに見つめているブロンデの手を軽く握りながら、僕達は裏庭に続く木戸をくぐった。


――――――


「あんれまぁ、おめしゃ、どこだ?いや、なっつかしいごど~!さすけねがっだかよ?」


「おれ、いまこっちさ住んでんだぁ~。あっこさ居るシエロってわらしこさくっつかってんだぁ。おめこそ、さすけねがっだかよ?いや、会えで嬉しいなぃ」


 誰か!通訳ー!!


 裏庭に出た僕達の前に、クレイの友達は快く姿を見せてくれた、んだけど…。


 ネィティブ過ぎて、いくら僕でも何言ってるのか分からない会話が続いている。


 たぶん、向こうのクレイさんが、


 あら?あなた何処から来たの?懐かしいわ~。元気だった?


 って聞いてて、うちのクレイが、


 私、いまこっちに住んでるのよ。其処にいるシエロって子に付いてこの町に来たの。

 それよりあなたこそ変わりはなかった?会えて嬉しいわ~!


 って言ってるんだとは思うんだけど、挨拶後の話しは更に早口だし暗号文みたいな会話だし、早々に会話を聞く事に音を上げた。


『したから~』


『『キャハハハハハ、』』



 うっ、うん。


 何か良く分からないけど、君達が楽しいなら良かったよ。


 ごゆっくり~。



「じゃあこっちはこっちでやるか!」



「え~?本当にやるんですか?」


「あたぼうよ!お前を疑ってる訳じゃねぇが、こんな物は見られる時に見ときてぇじゃねぇか!なぁ?エカイユ!?」


「おぅ!」


 会話だけ聞いてると、何の話しか分からないと思うから説明するとね?


 さっき人工魔石を引き取ってもらった時に、師匠が僕が素体の水晶から作ってる事をポロッと言っちゃったもんだからさ、此処で作って見せる事になっちゃったんだよ。


 んー、出来れば寮がある山みたいな元火山か、化石が取れるような古い地層がある様な場所が良かったんだけどなぁ…。


 まぁ、土中に石英の微量な粒子でもあれば成形は出来るけどさぁ…。


「《土操作:石英抽出》、《土変形:成形-高さ5、幅2-水晶柱》」


 僕は何時も通り土操作の魔法を2種類使い、土の中にある石英、つまり水晶の粒子を抽出、よく見る6角柱の形に成形していく。


《ポンッ》


 一瞬の破裂音の後、僕の手の中には指定した通り高さ5cm、幅が2cmの水晶柱がコロンと収まっていた。


 うん、今日のは我ながら良く出来たな。



「師匠、出来ました。確認をお願いします」


「うむ。……上出来だな。では次、魔力を吹き込んでみろ」


 え~?そこもやるの?


 うぅ、分かりましたよ…。


 やりますよぉ~。



「ルドルフ、お願いして良い?」


「おぅ!今日はどうする?」


「じゃあ、【強火】で」


「あいよ!」


 ルドルフの魔力は攻撃的で、他の人達のモノと比べると荒々しい。


 これはA組の生徒達全員に協力してもらったから分かった事だけど、その中でもルドルフの魔力の攻撃性は群を抜いていたんだ。


 おかげで、成形が甘い水晶ではルドルフの魔力に耐えられなくて、最初の頃はパリンパリンとよく割れたもんだよ…。


 だから彼だけ火力調整してもらってるって訳です、まる。



「んじゃ、いくぜ?」


「ドンと来い!!」


 僕がOKを出すと、ルドルフの魔力が膨れ上がるのを感じた。


 良し、来い!!


「燃え上がれ!ファイアー!!」

「《空間操作:魔力吸収》」


 ルドルフの放った魔法は一瞬だけ空気を焦がし、水晶の中へと吸い込まれていった。


 無色透明だった水晶が真紅に染まり、空間魔法が成功した事を示す。


「よし!ルドルフありがとう。師匠、出来ました!」


「うむ。良し!上出来だ!!シエロ、お前さんなかなか魔力制御が上手くなったな?これなら何処へ卸しても大丈夫だ」


 師匠のサムズアップ+豪快な笑みと言う、最上級のお墨付きをもらう事が出来た。


 やった!


 師匠は基本褒めて伸ばすタイプの職人さんだけど、【何処へ卸しても大丈夫】、だなんて初めて言ってもらえたから、自然と頬が緩んでいく。



 あはは!何か僕、今なら何でも出来そうな気がするよ!?






クレイ×クレイの会話を全文載せると、訳文の字幕スーパーが面倒くさいのでカットとなりました(笑)


本日もお読み頂きありがとうございました



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