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百五話目 学園の外に出た日



「出来たーッス!」


「やったな!」


「やったーなのです!!」


「うむうむ、よく頑張ったな」


 初めてスミスさんを部活動見学に誘った日から3ヶ月弱。


 遂に通信機能を備えたステータスカードが完成した。



「やったな、シエロ!お前のおかげだよ!!」


「いえ、エストラ先輩。どちらかと言うと僕のせいで完成まで随分費やしてしまって、申し訳ないです…」


「何言ってるのよ~!?そんなの結果論でしょ~?あなたの空間属性能力がなかったら、3ヶ月どころか3年経ったって出来なかったわよ~♪」


「そうッス!!シエロ君はちょっと自分に自信を持った方が良いッスよ!?」


「うむ、ゾーイの言うとおりだ!ガハハハハハハ!!」


「あはははは、はぁ…」


 このプロジェクトに関わったゴードン師匠を始めとしたメンバー全員がお祝いモードに沸く中、僕だけが今一乗り切れていなかったのは、異世界リングにしまい込まれた大量の魔導袋と、人工魔石の使い道に悩んでいたからだった。


 練習してる時は夢中だったし、いつの間にかこんなに増えてて、自分でも本当に驚きだよ。


「はぁ…」


 楽しそうに盛り上がる魔道具研究会のメンバー達と一緒にハシャぐ師匠を見ながら、僕はもう一度、深いため息をついた…。


――――――


「っしゃあ!じゃあお前をしっかり案内してやるからちゃんと付いて来るんだぞ?」


「うん、それではルドルフ君。今日はお願い致します」


「おう!まかしとけ♪」


 ステータスカードの新機能が完成した次の日、漸く僕達1年生にも外出の許可が下りた。


 そして、前から外出を楽しみにしていた僕達3人組+妖精1匹は、許可をもらったその足で早速出掛けることに。



 因みに今回はブリーズがフロルを見てくれているから、僕のお供妖精はクレイだよ☆



 クレイ、お友達に会えると良いね?


『んだなぃ?今から楽しみだなっし…』



 今僕達は王都のメインストリートを歩いているところなんだけど、僕の実家があるシュトアネールとは違って、王都の道は全面煉瓦張りになっていた。


 道に敷き詰められた煉瓦が規則的に並べられていて、模様みたいで綺麗だなぁ…。


 建物も白壁の建物が殆どで馬車の落とし物も無く、清潔感溢れる街並みだった。


 とは言っても学園までの道のりしか僕は知らないから、もしかしたらシュトアネールでも煉瓦張りの道に白壁の建物があったのかもしれないんだけどね?



「シエロ君、僕まで貰っちゃって良かったの?」


「えっ?良いも何も、クラス全員に配ったのに何でブロンデにだけあげないのさ?」


 昨日師匠に相談したら、お前が作ったんだから好きにしたら良いだろ?と譲渡の許可をもらえたので、今朝外出の説明を聞く為に集まってたクラスメイト全員に魔導袋を配って歩いたんだ♪


 他にも、特殊な人工魔石以外は自己判断で売却しても良いと言ってもらえたから、僕はやっと心から一緒にお祝いする事が出来た(笑)


 だってさぁ~、結構な量が入る様に作ってあったはずの異空間リングがミシミシ言うほどパンパンだったんだよ?


 いくら能天気な僕だってさ?頭を抱えるってもんでしょ…。


 マルクル先輩達にも快く魔導袋を貰ってもらったし、ゴードン師匠にも魔導袋と人工魔石を大量に引き取ってもらえた。


 更に、今から行くルドルフのお父さんがやってる鍛冶屋さんでもいくらか引き取ってもらうつもり。


 あぁ~、これでやっとひと息つけるかな?


 まぁ、試しに作ってみた2つ以上の魔力属性を持たせた人工魔石がそっくり残ってるんだけど、そこまで沢山作った訳じゃないし、身内の間とかで自家消費するしかないかな?



 ゴードン師匠にも、面白い発想だがまだ売りには出すなってキツく言われてるから、魔道具を作ったとしても兄さんと姉さんにあげるくらいしか出来ないけどね…。


『面白がって後先考えねぇで作っから~』


 えぇ~?君達だってノリノリだったじゃないかぁ~!?



「あら?皆さんお揃いで。今日はどちらへ?」


 クレイとわちゃわちゃしていたら、後ろから声を掛けられた。


 振り返った先には腰まで伸びた艶々の黒髪に、キリリとした緑色の瞳の女の子。


 同じクラスのシャーロット・クレアさんだ。


「僕達は今からルドルフの家へ行くところなんです。クレアさんはどちらへ行かれるんですか?」


「そうなんですね?私は…。そうですわ。どなたかこの街の鍛冶屋さんをご存知ありませんか?私、自前のレイピアの調子が悪くなってしまいまして、出来れば診て頂きたかったんですの」


「なんだ。だったらシャーロットも家に来いよ。家は街一番の鍛冶屋なんだぜ?」


 ルドルフのドヤ顔が炸裂、しかしクレアさんは華麗にスルー!


「あら?そうだったんですの?お邪魔じゃなければ、是非ご一緒させて頂けませんか?」


「おう!行こうぜ!?」


 しかしルドルフも動じない!!

 僕とブロンデは、そんな噛み合ってる様で噛み合っていない2人を苦笑いしながら見つめていた。



◇◆◇◆◇◆


 思わず声を掛けてしまいましたが、どうしましょう…。


 緊張で隣が見られませんわ!


「クレアさん、この間は魔石作りを手伝ってくれてありがとうございました。お陰で【空間操作】のレベルが2に上がったんですよ?」


 私のドキドキを知らないシエロ様は、私にとびきりの笑顔を放ちました。


 あぁ、何という破壊力…。


 シエロ様の笑顔が見られただけで今日は1日幸せですわぁ…。


「お役に立てて光栄ですわ♪」


 あぁ、このままいつまでも着かなければ良いのに…。


「おぅ、3人とも着いたぜ?此処が俺んちだ!」


 くっ!空気の読めない男めぇ~…。


◇◆◇◆◇◆


 えっ?もう着いたの?


 しまったな、話しに夢中で此処までの道順を覚えられなかったぞ…。


「お~い、入らないのか?」


 はぁ、ルドルフとブロンデが待ってるし、帰り道でちゃんと覚えよう…。


「待って!今行くよ!!行きましょう?クレアさん」



《カラ~ン、カララ~ン》


「ただいま~」


 王都の街並みには珍しく、白壁ではなく無骨な赤茶色の石壁の建物の中にルドルフは入っていった。


 扉に付いていた小さな鐘がカラカラと鳴り、僕達の来店を店内に告げる。


「「「お邪魔しま~す」」」


 ルドルフの後に続いて店内に足を踏み入れた僕とブロンデ、クレアさんの目に飛び込んできたのは、ありとあらゆる武器・防具類と、カウンターの中に座っている、目つきが鋭く、とんでもなく厳ついおじさんだった。


「父ちゃんただいま!」


「おぅ、ルドか!ちっとは背が伸びたか?ん?」


「や~め~ろ~!」


 ボサボサの顎髭に、着ているシャツがはちきれそうなくらい盛り上がっている筋肉。


 うちの祖父さんとは別な意味で怖い顔のその人は、店内に入って来たルドルフに気がつくと、キツく寄せられていた眉間の皺が一気に伸びて、そのまま嬉しそうにルドルフの頭をカウンター越しにワシワシと撫で回した。


 おぉ~、こっ、この人がルドルフとエルドレッドさんのお父さんか…。


 鍛冶屋の御店主はやっぱりコレくらい厳つくないと、客からナメられたりするのかな?



「ん?ルド、後ろの3人はお前の友達か?何だお前!こんな可愛い女の子【達】連れてくるなんてやるじゃねぇか!」



 ………………。



「ばっ!父ちゃんちげぇーし!?シャーロットはただのクラスメイトだし、シエロは男だぜ?シエロ悪い!父ちゃんに悪気はねぇんだ!」


 まだお父さんどっちを間違えてるのか言ってないのに…。


 そこまで力強く僕は男だって力説されると、怒りを通り越して凹むんですけど…orz



『ウクククク…』


 こらクレイ!


 またご飯抜きにしちゃうよ!?





何処へ行っても女の子に間違われるシエロでした(笑)


本日もお読み頂きありがとうございました



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