百三話目 続・部活動見学に誘ってみた日
部活道見学2日目にして、何故か僕の世間知らずがやり玉に挙げられています。
うぅ、本当にもう勘弁してぇ(泣)
「あれ?シエロ君の故郷って、何処だったっけ?確か、前にプロクスから聞いたはずなんだけど…」
何スか急に…?まぁ、答えるけどさ…。
「シュトアネールです…」
えっ?何?皆して、あ~って納得するの止めて?
本当に何なの!?
「シュトアネールは資源が豊富で良い土地何だけど、そのせいか強い魔物が湧きやすいんだ。だから、決して小さな子供だけでは出歩かせないし、そこに住んでる住人もBランク以上の冒険者がほとんどなんだよ」
「1番弱い魔物でもCランクの魔物だから、普通に暮らしてるだけでも命懸けだって聞いた事があるわ」
えっ?そうなの…?
いや、でもなぁ…。
「でも僕のうちの裏庭に良く出る魔物は凄く弱いですよ?僕の家は山の麓に建っているので、良く魔物が出るんですが、どれも弱かったですよ?」
「名前は分かるかい?分からなければ、その魔物の特徴でも良いよ?」
「名前は分かりませんが、マルクル先輩くらいの大きさの蜘蛛とか、蛇とかが良く出て来てましたね」
いや、だから一々ため息つかないでよ!!
本当に何なのさ!?
「シエロ君~、それはどっちもBランクの魔物よぉ~?決して弱い魔物ではないわよ」
「蜘蛛がポイズンスパイダーって体内に猛毒を持った魔物で、蛇がアイアンスネイクって鱗が金属鎧みたいに堅くて倒すのに厄介な魔物だよ?」
「しかもポイズンスパイダーの毒は毒薬として、アイアンスネイクの鱗は鎧の材料に高値で取り引きされてるくらい倒すのに苦労するって言われてるくらい堅いんだぜ?お前どうやって倒したんだ?」
え?
どうやってって、普通に…?
「蜘蛛の方は毒袋が腹にあるって教わったので、石の弾を飛ばして頭を撃ち抜いて、蛇の方は同じ方法を試したら弾が弾かれたので、蛇の周りの空気を遮断して窒息させて?」
だから~、一々同じリアクションしないで…。
あっ、リペア先輩だけはその手があったかみたいな顔してる(笑)
あれ?そう言えばあの後、魔物の死体ってどうしたんだっけ?
あぁ!そうだ、ジュリアさんが手際良く解体して回収していったんだっけ。
ん?じゃあその後何故か貰ったお金って、お小遣いとかじゃなくて素材の代金だったのかな?
「まっ、まぁあの街の人が強いのはプロクスを見ていて分かってるつもりだったし、とりあえずこの話しは此処までにしておこう…?詳しい話しは追々ね?エストラとイドもそれで良いでしょ?」
えっ?2人ともいつからいたの?
振り返ってみると、ポカンと口を開けたエストラ先輩と、その肩にしがみつきながら呆れた顔をしているイド先輩が居た。
――――――
「へぇ~、ステータスカードにそんな新機能がつくんですか?」
「それがあったらいつでもお母さん達に連絡出来るね?マルクル先輩、いつ頃出来そうなんですか?」
うんうん、ブロンデはお母さんに早く会いたいんだもんね?
あんまりお父さんの話しが出て来ないから若干不憫に思うくらいお母さん大好きだし。
まぁ、年齢を考えたらそれが普通なんだけどね?
「ん~、難しい質問だねぇ?どうやってカード同士を繋げるかが問題でね。今難航してるんだよ」
「シエロ君とデイビッド君がいたら出来るかもしれないッスよ?」
マルクル先輩が難しい顔をしながらブロンデに答えたその時、今まで黙って話しを聞いていたスミスさんが当たり前の様に答えた。
当然スミスさんに注目が集まるが、スミスさんは気にせず話し続ける。
「シエロ君の持っている空間属性の性質を使えばカード同士を繋げる事が出来ますし、デイビッド君の音波属性を使えば声を届ける事も出来るんじゃないッスか?」
「音波は分かるけど空間属性って何だい?」
「簡単に言うと、そのまま空間を操る能力だそうッス。活用法的には魔導袋やテレポート装置何かがあるらしいんスけど、最近は無属性で、魔導袋とテレポーターってそれそのものの能力持ちが多くて、空間属性持ちは少なくなってるんだそうッスよ?」
スミスさんは、昨日僕が言い出せなかった話しを、僕も知らなかった情報を含めて分かり易く説明してくれた。
へぇ~、テレポート装置は皆空間属性持ちの人が作ってると思ってたけど、テレポーターって能力の人がいるのか…。
「あぁ、テレポーターなら私のの友人にも何人か居るよ~?初めはあの子達にも協力してもらっていたけど、中々上手くいかなくてね~?」
「テレポーターの能力は確かに繋げる能力ッスけど、それだとステータスカードそのものを送っちゃう事になるんじゃないッスか?」
「正解だ…。それで俺も師匠に話しを聞こうと手紙を送ったが返って来なくてね…。ゾーイのお陰で謎が解けたな…」
おぉ~、と1年組から声があがる。
スミスさんはスゴいな~。
僕なんか、自分の能力がレアだって言われてもピンと来ないのに(笑)
『そこは、来とかせ!シエロは結構珍しい能力さ持ってっだから、自覚しとかねと後悔すっぞ?』
は~い…。
ブリーズが居ないと、クレイがお母さん化するのか。
うん、肝に命じておこう…。
「それにしてもゾーイちゃん詳しいのね?どなたから教わったの?」
「じいじッス。実は今回もシエロ君の空間属性を知らなくて、手紙で聞いてみたんスよ」
お祖父さんの事を聞かれて、えへへと照れ笑いしながらスミスさんが零したお祖父さんの名前に、この部屋に居た全員が固まる。
僕を除いて…orz
僕が世間知らずなのも無知過ぎるのも重々承知していますし、その事について猛省しているので、誰か教えてプリーズ!!
「ゾーイちゃん、今ゴードンって言ったかしら?」
「言ったッス」
「君のお祖父さんはゴードン・マニュマ?」
「あっ、先輩ご存知だったんスか?嬉しいッス!」
マルクル先輩の口からゴードン・マニュマの名前が飛び出すと、固まっていた部屋の空気と人々が慌ただしく動き出す。
「はぁっ!?ゴードン・マニュマぁ?あの伝説の魔道具技師ぃ!??」
「凄いです!アグニ・スミスとゴードン・マニュマが親子だっただ何て…。その娘が目の前に居るなんて信じられないのです!!」
「ゴードン・マニュマは、引退して行方知れずだ、と聞いた事があるが…。今はどちらにおいでなんだ?」
「えっ?家に居るッスよ?」
《ザワッ》
スミスさんの家に居る発言でざわついていた部屋の中が更にざわつきだした。
いや、正確にはルドルフ、ブロンデ、デイビッド君の3名は最初から固まったままだから、ザワザワしてるのは魔道具研究会の顧問含め5名だけか。
何にせよ、スミスさんのお祖父さんが伝説の魔道具技師だって事と、行方を眩ませていたお祖父さんがスミスさんの家に居たって事は分かった(笑)
「ん?でもファミリーネームが違うから、母方のお祖父さんがゴードンさんなのかしら?」
「あっ、それ良く言われるんスけど、パパン…アグニは、ゴードンの末息子ッス。上に3人のお兄ちゃんが居て、何もかもお兄ちゃん達とじいじとに比べられる生活が嫌になって、学園卒業する時に、彫金技師のシルバ祖父ちゃんへ弟子入りしたんス」
あぁ~、何かアグニさんの気持ち分かるなぁ~。
うちは上2人が優秀過ぎるから返ってあんまり気にならないけど、普通は比べられる生活をずーっとおくってたら、そりゃスレるってもんだ。
「あっ!でもだからってマニュマ家と仲が悪い訳じゃ無いッスよ?じいじと一緒に暮らしてるくらいッスから。ただ、パパンがママンにベタぼれして、自分から婿入りしただけッス」
「そうなんだ…。じゃあ今はスミスさんのご実家でゴードンさんは隠居なさってるのかい?」
「あっ、隠居はしてるッスけど、引退はしてないッスよ?今でも気に入った人の魔道具は作ってるッスから」
「えぇ~!?まだ現役でやってらしたの?あぁ~、ゴードンさんに教わりたい~」
引退してないと知って、途端に嬉しそうな顔になるリペア先輩。
ん~、先輩がこんなに沸くくらいだし、スミスさんのお祖父さんは本当に凄い人なんだなぁ…。
でもさ?外部の人、しかも隠居してゆっくり魔道具を作ってる人がわざわざ学園まで来てくれるのかな?
そもそも許可が下りるもの?
「んー。理事長の許可が下りて、ゴードンさんが来てくれるとお応え頂ければ、だが、難しいだろうなぁ…」
ですよね?
しかも理事長って、僕らの入学式にも来れなかったくらい忙しく世界中を飛び回っている方だし、どうやって申請すれば良いのかも分からな…。
ん?
急に天井から一枚の紙がヒラヒラと落ちてきた?
思わず落ちてきた紙を掴み、そのまま確認すると、そこにはたった一言
《許可》
とだけ書かれていた。
「許可?」
「あぁ、なんだ…。理事長いらしてたのか…。では学園側は全面的に大丈夫、と言う事になったな…。後はゴードンさんにどうやってお伺いをたてるかだな…」
「あっ!じゃあ、あっしがじいじに連絡してみるッス!じいじ楽しい」
えっ?えっ!?
コレってそんな簡単に決まる事なの?
スミスさんを除く僕ら1年生組は、急に慌ただしく動き出した先輩達とスクルド先生の動きを、目で追うことしか出来なかった。
スミスさんの父親と祖父の凄さにイマイチピンときていない鈍チンシエロでした(笑)
本日もお読み頂きありがとうございました。