百話目 続・部活動見学の日
同室のマルクル先輩に誘われて【魔道具研究会】を見学する事になったのだけど、何故か魔道具の誤作動で強制的に眠らされたり、研究会顧問のスクルド先生も含めた部員から質問攻めにあっている僕です(一息)。
「眼鏡に使われているのは、どんな魔法なんです?あんな奇病を治すくらいですから、特殊な装置が入っているんです?」
「モノクルを着けると妖精が見えるそうだが本当なのか?」
「他には何を作ったの?掴んだ情報によると、何か別の空間から物を取り出してたらしいじゃない?」
「こらっ、そんなに一編にまくし立てる奴がいるか!せめて1人ずつ聞きなさい…」
いや、だから!先生くらいは止めてくださいよ!?
マルクル先輩も穏やかな笑顔で見つめてないで、何とかして下さい!!
あれ~?部活動見学ってさ、見学に来てる人が質問する側じゃね?何でこうなった?
とか思いつつも取りあえず、先輩達の質問に1つずつ答えていく。
「眼鏡に特殊な装置は入っていません。このガラスを球面状に加工を施したり、なんやかんやすると見えるようになるんです」
「なんやかんやって何です?」
「そこは秘密と言うことで。後、エストラ先輩はマルクル先輩が持ってるモノクルをお借りして、僕の横を見てみて下さい。それと、リペア先輩が仰ってるのはこれの事ですかね?」
えっ?説明になってないって?真面目に眼鏡の説明なんかしてたら話しが進まないでしょ?
「これがそのモノクルですか…。では…。うわっ!?これが妖精なのか?おぉ~、うちの祖父さんの話しは本当だったんだなぁ…」
ブリーズの姿を見て喜ぶハーフエルフのエストラ先輩を放置し、リペア先輩に異空間リングを見せる。
パッと見ただの金属製の輪っかにしか見えないから、手に取った先輩が輪っかを持ちながら困惑してるのが見て取れる。
「これは、こうやって使うんです」
《ミュイ》
僕は説明するより早いと、異空間リングを起動させて中から適当に焼き菓子を取り出して見せた。
この焼き菓子はお祖母さんからの差し入れの品で、昨日届いたばかり。
クッキーよりかはビスケットに近い、僕の好物だ。
サクサクしてて、ホロッと甘くって、マジウマな…。
コホン。
失礼、話しがズレたね…。
リペア先輩は、僕が出した異空間に何度も手を突っ込んでは出して、を繰り返して手の無事を確認していた。
あっ、次は何処まで腕が入るかの実験までし出始めたぞ…?
あ~、これやる人僕以外にもいたよ(笑)
「凄~い。こんな小さなリングに魔導袋と同じ機能を持たせるだなんて…。普通【魔導袋】って言ったら大きな鞄を使って作るものよ?しかもそれだって許容量は鞄の面積の1.5~2倍に増えるか増えないかで、値段も恐ろしく高い。そんな使いづらい魔道具を…。これは小さくて持ち運びは楽だし、リングもそこそこ広がるから大きめの物も入れやすいわ…。あ~、それならこれは…」
あれ?
始めは僕に向けて説明してくれてたっぽかったのに、急に自分の世界に入ってしまったぞ…?
「んしょ。ああなったら暫く戻っては来ないのです。リペア先輩は基本自由な人なのですよ」
「はぁ…」
いつの間にか僕の肩によじ登って来ていたイド先輩が、僕の顔を覗き込みながらそう教えてくれた。
いや、うん…。
僕からしたらこの人も充分自由だけどな(笑)
そのリペア先輩は、何事かをブツブツと呟きながら、リングが何処まで伸びるのかを試している。
んー、うちの祖父さんの馬鹿力でもリングが壊れるって事は無かったから大丈夫だとは思うけど、あんまり無茶しないで欲しいなぁ…。
あん時は確か1mくらい伸びたんだったかな?
『シエロ~、助けて~』
うぇ!?
イド先輩と話しながらリペア先輩にハラハラしていると、エストラ先輩の相手をしてくれてたブリーズから泣きつかれてしまった。
イド先輩が居る方とは逆の肩に降りると、そのまま僕の影に隠れてしまうブリーズ。
助けてってどうしたの?
何か先輩にされた?
『何かされたって訳じゃないけど、あの人あんまりジロジロ見てくるから怖くなっちゃったのよ…』
あ~、エストラ先輩、無言でずっとブリーズの事見てたもんね?
いくらイケメンでも、あれやられたら僕でも怖いわ。
『でしょ?シエロもそう思…。あっ、こっち来た~』
「すまん、コルト…。君の妖精を怖がらせてしまったみたいだ…」
「いえ。彼女、あんまり見られ慣れていなくて…。此方こそすいませんでした」
始めは、ちょっと文句でも言ってやろうかな?くらいの気持ちでいたけど、ケモ耳と尻尾があったら絶対ペッタンコになってる、ってくらい申し訳なさそうな顔して近づいて来るんだもん。
ヘタレな僕には、こんな返事くらいしか返せなかった(汗)
――――――
「じゃあ、是非お願い致します」
「勿論さ。じゃあ先ずはイドのからにする?」
「ハイ!なのです。すぐに持ってくるのです!!」
あ~、やっと部活動見学らしくなってきたな(疲)
僕の異空間リングで一通り遊び尽くしたリペア先輩が、次は私達の作った魔道具を見せてあげようよ!!って言い出したのが発端だけど、ずっと注目浴びっぱなしで疲れてた僕は、それにすぐ飛びついた。
でも、家にあった半分ガラクタな魔道具くらいしかちゃんとしたのを見た事がないから、ちょっと楽しみでもあるよね♪
「お待たせしたのです!持ってきたですよ~!」
「俺がね…」
何だかんだ言いながらも小さな体のイド先輩を補助してあげているエストラ先輩に少し和む(笑)
顔は何とも不本意にしてるけど、絶対照れ隠しだろ?これ!!
「はい、これがイドが作った魔道具だよ?」
そう言ってエストラ先輩が丁寧に机の上に置いたイド先輩の魔道具は、凸の字の角がない、丸みを帯びた形状をしていて、大きさは柔らかいティッシュが入ってるボックスくらい。
細かい彫金細工が表面に施されていて、一見貴族向けの芸術作品なんかにも見えるけど、中央の目立つところに配置された黒い2つの針が、これが何かを物語っていた。
これ、卓上時計だ…。
家にあった時計は、リビングに置いてある床から天井まで2~3mくらいある大きな柱時計くらいな物で、首都にある祖父さんの家の時計も似たような大きさだったから、この世界に生まれ変わってからこんなに小さな時計を見たのは初めてだった。
しかも中世ヨーロッパの貴族が持ってた様な時計何て、あっちを含めたって人生初だよ!?
うわ~、これはちょっと感動…。
「シエロ君も気に入ってくれたみたいで嬉しいのです!イドは手がちっちゃいので、他の人より小さな歯車も簡単に作れるのですよ!?エッヘンなのです♪」
なるほど、ヒューマン族の職人が作るよりも小さな歯車を作り出せるからこそ、より小さな時計を作る事が出来るのか…。
そう考えると、あっちの世界の腕時計って凄かったんだなぁ。
何にも考えずに使ってたけど、あれの中にどれだけの職人技が詰まってたんだろう…。
「イドっちのも良いけど、次は私のだよ♪見てみて!!きっと君もビックリするよ!?」
そう言ってリペア先輩が取り出したのは、筒状の金属製のブレスレットだった。
ちょっと僕の異空間リングにも似てる形状だけど、僕のはただの輪っかなのに対して、リペア先輩のは古代エジプト人がはめてそうな長さ、と言うか幅と言うか…?
「手にとって見てみても宜しいですか?」
「勿論♪私もシエロ君の好き勝手見させてもらったからね~♪心行くまで見たら良いわ☆」
「では、遠慮なく…」
リペア先輩がジャ○アニズムの継承者じゃなくて良かった(笑)
何て馬鹿な事を考えながら、リペア先輩の魔道具を手に取る。
僕のもそうだけど、こういう中に組み込めない系の魔道具は、大抵物の内側に【魔法文字】って言われる特殊な文字を刻み込んで作るんだよね。
と言うわけで、金属製の筒の内側を覗き込んでみる。
おっ、やっぱり魔法文字が複数刻まれてるな…。
えーと、何々?
「風が吹く…暖かい、冷たい…。切り替える…。あっ?」
えっ?これってもしかしてドライヤー?
「シエロ君はこれが何だか分かったみたいね?そう、これは【温風冷風ブレスレット】って言って、物を乾かすときに使う物なの!」
「確かにこれ、あると凄く便利なんだよね?物によっては乾く温度と時間が違うからさ?僕らみたいな物作りをする者には重宝する魔道具だよ」
ちょっと僕が考えてたのとは乾かす物の種類が違ったみたいだけど、それならドライヤーにだって使えるよね?
って事を簡単にリペア先輩に伝えてみたら、リペア先輩の瞳がキラキラと輝きだした。
「凄いわ!!なるほどね…。乾かす事に特化した魔道具何だから、温度を微調整すれば乙女の美容にも役立ってくれるって訳ね?ふふふ、何で気がつかなかったのかしら?これは売れるわよ…。今までみたいに工房の職人さんだけじゃなく、貴族のご婦人方にも販路が広がるのね…?ふふ、ふふふふ、ふふふふふ」
「あぁ~あ…。お金モードに入っちゃったら暫く戻ってこないのです…。コルト君、今日は門限ギリギリまで帰れないかもしれないですよ?」
「えっ?」
「大丈夫だよ。いざとなったら僕が止めてあげるから。さっ、次はエストラの魔道具だよ~?」
本当に僕は寮に帰れるんだろうか…。
若干不安になりながらも、魔道具発表会は続くのだった。
変なところで終わってしまってすいませんm(_ _;)m
昨日もお知らせ致しました様に、本日分の更新にて2016年最後の更新とさせて頂きます。
再開は1月4日からとなります。
ここまで筆者の稚拙な文章をお読み頂きまして、本当にありがとうございました。
来年もお読み頂けたら幸いです。
皆さんも良いお年をお過ごし下さいませ☆
ありがとうございました。




