表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/281

九十九話目 部活動見学の日



 マルクル先輩に連れられて、特別教室棟のスクルド先生のお部屋の前までやって来た。


 因みに兄さんとは、6年A組の前で別れている。


 兄様もこれから部活ですか?って聞いたら凄い誤魔化されたけど、アレは何だったんだろう?


 先輩も苦笑するだけで、何も教えてはくれなかったし…。


《コンコン》


「はい…」


「マルクルです。シエロ君をお連れしましたよ♪」


 先輩が扉をノックすると、スクルド先生の声が聞こえ、先輩が用件を伝える。


 すると…。



《ガチャバンッ!》


「コルト先輩の弟さんが来たって本当!?」


 物凄い勢いで部屋から女の子が出て来た。


 で、そのままの勢いで僕に抱きつく。


「いや~ん♪話には聞いてたけど、超絶可愛い~☆お肌スベスベ~♪」


「むぎゅう」


 良い匂いがするとか、ルーメン姉さんより胸が無いなとか、真っ青な髪にオレンジ色の目ってえげつない配色だな、とか色々頭を過ぎったりもしたけど、何故だか徐々に意識が薄れていって…。



――――――


「はっ!?」


 気がつくと、僕は見知らぬベッドに寝かされていた。


 何だろう、このベッドほんのり薬臭い…。


 ゆっくりと体を起こし、辺りを見回してみるけど、ほんのり薬の匂いがするベッドと、小さなタンスしか置かれていない殺風景な部屋には、誰の部屋かを示すヒントは見つけられなかった。


 って言うか僕どうしたんだっけ?


 えーと、確かマルクル先輩に誘われて…。


《カチャ》


「ん。目が覚めたか…?」



 うんうん唸りながら考えていると、部屋の扉が開き、スクルド先生が顔を出した。


 あ~、スクルド先生の部屋なら納得。


 じゃなかった。


 魔道具研究会を見学する為に、スクルド先生のお部屋を訪ねたんだった。


「あっ、はい。すいません、ベッドをお借りしてしまった様で…」


「気にしなくて良い…。そもそもリペアが悪い。立てそうか?」


「あっ、はい。今起きます!」


 【リペア】ってあの先輩の名前かな?とか思いつつ、慌ててベッドから下りようとするとクラッと目眩がした。


 あれぇ~?世界が回る…。



「あぁ、慌てなくて良い。大丈夫だから、ゆっくり…」


「すっ、すいません」


 先生に手を貸してもらいながら、今度はゆっくりと立ち上がる。


 うん、今度は平気そう。


「あの、先生。僕は何故ベッドに居たのでしょうか?」


「あぁ、その話しも含めて、詳しく説明するから、隣の部屋へ行くとしよう…」


 そう言うと先生は僕の手を引いて、隣の部屋へと進み出した。


 慌てて後を追う、と言うか引っ張られたから慌てた(笑)


《カチャ》


「シエロ君の目が覚めたぞ?」


「あぁ、良かった…。誰かさんのせいでプロクスに殺されるところだったよ…」


「マルクル先輩酷いよ~。不可抗力じゃ~ん!!」


 先生に続いて隣の部屋に入ると、安心した様な顔のマルクル先輩と、僕にさっき抱き付いた女の子が居た。


 部屋の中には作業スペースがあり、2人はそこでなにやら妖しげな箱に囲まれている。


 一人暮らし用の冷蔵庫くらいあるその箱には、メーターやらボタンやらがゴチャゴチャついていて、よく見ると一つ一つの箱は別の種類の機械の様だ。


 いつの間にかマルクル先輩も白衣を羽織っていて、機械に囲まれた様子は、さながら研究所の職員みたいだった。


 あれ?この部屋にはこの2人と先生と僕しかいないみたいだけど、もしかして研究会部員ってこの2人だけ?



《ガチャ》


「遅くなりました…。途中でイド見つけたから拾ってきましたよ…」


「拾ってきたは余計だと思うんですよね?いくらイドが小さいからと言って馬鹿にするのはいくないと思うですよ!」



 まさか廃部の危機だから僕を研究会に入れようと思った?まで考えた辺りで扉が開き、2人分の子供の声が聞こえてきた。


「あれ?新入りッスか~?」


「可愛い女の子なのです!?キャ~、おめめ大きいのです~☆」


 振り向くと、透き通る程白い肌に耳がピンと尖った黒髪の少年と、その肩の上に体長90cmくらいしかない小人さんが座っていた。


 ブリーズより少し大きいくらいのその人は、目をキラキラ輝かせながら恐ろしく失礼な事を言った。


「イド?シエロ君は男の子だよ?それとエストラ、シエロ君はまだ新入りじゃないよ?今日は見学に来ただけだからね?」



 僕がちょっとイラッとしたのが伝わったのか、マルクル先輩がサッと間に入って説明してくれた。


「ありゃ?そうだったのですか?それは失礼致しましたですよ。私はイド・ダッチマン。ホビットって種類の小人族なのです。魔道具研究会は楽しい所なので、入ってくれたら嬉しいのです!!」


「ちょっと、人の肩の上で暴れないでよ。俺はエストラ・ルガリア…。父親がドワーフ、母親がエルフのハーフだ。2人とも妖精種だから、ダークにはならなかった…。宜しくな、コルト先輩の弟…」


「えっ?この人がコルト先輩の弟さんだったですか?うわぁ!初めましてなのです!」


 だから暴れるな!と怒りながらエストラ先輩がイド先輩を肩から引き剥がす。


 あっ、そのまま床に叩きつけた!いくら何でも女の子相手にそれは如何なものでしょうか…。


「酷いのです!エストラ先輩!イドは女の子なんだから優しく扱って欲しいのです!!」


 えーー?


 あんだけビターンって音がしてたのに無傷?


 やべぇ、この学園の3年生以上は化け物揃いなのか?


「悪いな、シエロ…。騒がしくて…」


「あっ、いえ…。ただビックリしただけで…」


「まぁ、それも毎日だから、すぐ慣れるわよ☆後、さっきは本当にゴメンね?試験してた魔道具が誤作動起こしちゃって。あっ、私はリペア・ミルボン。君と同じヒューマン族よ?宜しくね?」


 アハハ~☆と笑いながらそう教えてくれるリペア先輩。


 あ~、さっきの急な眠気は魔道具の誤作動によるものだったのか…。


 聞いてみると、最近不眠症に悩まされている(ばく)に頼まれて作っていた催眠装置だったらしい。


 それが僕に抱き付いた時の衝撃で、作動してしまったのだそうだ。


 何で装置を持ってたリペア先輩じゃなくて、僕だけが眠くなったんだろう?


「あぁ、それはただ単に、リペアと私が眠らない様に予防していただけだ…。研究する度に寝ていたのでは進まないからな…」


「なるほど…。納得しました」


 あの時、マルクル先輩はさっと避けたからきっと無事だったんだろうな…。


 出来れば僕も助けて欲しかったです…、マルクル先輩…。


「アハハ、ごめんね?僕自分が避けるので一杯一杯だったもんだから…。プロクスやエルみたいに運動神経良くないんだ」


 ごめんごめんと言いながらすまなそうに頭を掻くマルクル先輩。


 まぁ、死にかけた訳でもないから良いか…。


 何かこの人達とこれから関わっていくとしたら、このくらいで目くじら立てていられない気がした。


「あっ、そうなのです!コルト君が作った魔道具について、色々聞きたい事が沢山あるのですよ!!」


「あぁ、俺もモノクル?について教えて欲しい事があったんだ…」


「シエロは今目が覚めたばかりだから、あんまり無理させない様に、な?」



 えっ?ちょっとスクルド先生!

 そこはちゃんと止めてくださいよ!?


 いや、何ワクワクしてるんですか??


 あっ!そう言えば…。


 マルクル先輩の言葉を思い出す。


《「スクルド先生にお会いした事はあるでしょ?実は先生もシエロ君の作る魔道具に興味をお持ちでね?是非連れてこいと仰せなんだよ」》



 そうだった…。


 冷静な顔して実は、先生も眼鏡に興味津々なんだった…。


 そう思い出した時には、僕は先輩方から質問攻めにあっていたのだった…。





学園で3年過ごすとある程度不死身になります(嘘)


本日もお読み頂きありがとうございました。



私事で恐縮なのですが、12月29日から1月3日まで更新をお休みさせて頂きたく思います。


毎日お読み頂いている方には誠に申し訳ございませんが、宜しくお願い致します。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ