九十八話目 部活の話しを聞いた日
僕は、マルクル先輩に呼び出されていた。
《「放課後に、6年A組の教室まで来てほしい。だってさ?じゃあ伝えたよ?」》
そう言って伝言を届けてくれた先輩の頬が、赤く染まっていたのも気になるけど…、遼に帰れば同じ部屋なのに、わざわざ呼び出す様な用事って、一体何だろう?
はっ!
まさかまた兄さんがやらかした?
昨日の件で兄さんを叱りつけたばかりなのに、まだ懲りないのか?
まったく…。
いや、だったら遼で愚痴を聞かされるのが常だし、また違う話しなのかな?
ん~?
僕は6年A組までの道のりを、ブツブツ言いながら進んで行った。
――――――
「………。はい?」
マルクル先輩の口から放たれた予想外の話しに、思わず思考が停止する。
「だから、部活だよ、部活動。シエロ君に、僕が部長をしている研究会に所属しないかい?って聞いてるのさ」
いや、あの、先輩?
僕はこの学園に部活動があった事も今初めて知ったのに、いきなり僕の部に入らないか?って聞かれても…。
僕が入学して約2ヶ月ちょっと経つ訳だけど、担任のランスロット先生からは部活動の部の字も出てこないよ…?
って言うか、そもそもマルクル先輩の部って何部?
確か研究会とか言ってた様な…?
「ちょっとマルクル。まずは何部何だか説明しないと、流石にシエロも答えられないんじゃないかい?」
「あぁ、それもそうだね…」
【偶に良いことを言う人】でお馴染みのプロクス兄さんが、僕が言いたかった事を代弁してくれる。
えっ?流石に酷い?
ごめ~んね(笑)
「僕の所属している部は、【魔道具研究会】って言うんだよ?既存の魔道具を調べたり、新しく作り出したりしているんだ。先日君から貰ったモノクルを他の部員に見せたら、皆興味津々でね?君を是非とも勧誘してこいと言うわけ何だよ…。どうかな?」
まっ、【魔道具研究会】!
うわぁ~、そそられるなぁ…。
でも…。
「お誘いは有り難い事なのですが、僕の様な何も分からぬ1年生がお邪魔したのでは、他の皆さんにご迷惑がかかるのでは?」
確かに僕は妖精達に色々教えてもらえている分、他の1年生達と比べたら1歩分くらいは進んでると思うけどさ?
勧誘してもらってるのが【賢人】と呼ばれるマルクル先輩が部長を務めている研究会だ。
きっと僕何かが所属したところで、他の人達の足を引っ張るだけだよ…。
『え~?そんな事無いと思うんだけどなぁ~?』
それはブリーズが僕の妖精さんだからだよ。
【自分の子には目口が開かぬ】ってやつさ。
『じぶ…、めくち?何それ?』
ん?
要はさ、自分の子は可愛いって事だよ。
贔屓目が出るくらいには、ね。
『ん~。自分の子は可愛い…、ねぇ?まぁ、シエロの事は赤ちゃんの頃から見てるし、あながち間違ってもないのかしら…?』
何か悩み始めちゃったブリーズは放っておくとして、何かやたらと楽しそうに笑ってらっしゃるマルクル先輩をどうにかしないと…。
「えっと…。先輩?」
「まぁ、急な話しだしね。君が困惑するのも分かるよ?でもさ、見学するだけなら損はないんじゃないのかな?」
ニッコリ笑いながらそう提案してくれるのは有り難いし、寧ろそこまで勧誘してもらえる事何て今までなかったから嬉しいんだけどさ…。
この学園に部活動がある事を、ランスロット先生が僕らに教えてくれてないってのが何か引っかかるんだよなぁ…。
「マルクル先輩、見学の件は凄く嬉しいのですが、1つだけお聞きしても良いですか?」
「ん?何だい?何でもお聞きよ?」
「僕、担任の先生から部活動のお話しを聞いた事が無いんですが、他に活動している部はどれくらいあるんですか?」
恐る恐る聞いてみる。
まさかとは思うけど、先輩の所属する研究会一択、何て事も考えられるし、もしかしたら部活自体が非合法的な活動だって事も考えられそうだと思ったりして…。
「えっ?あぁ。そう言えば、部活動が許可されるのって普通は3年生からだったっけね?それじゃあ分からないよね?ハハハ」
いや、アハハ~じゃないから…。
部活動をして良いのが3年生になってからって言うのなら、先生から何の説明も無いのも頷ける。
それもまだ【教えられない】事柄に含まれているんだろう…。
あれ?でも部活動なんかやってるなら、それ専用の棟とか有りそうなものなのに、この前の校内見学の時も、学園内の建物が記された地図にも、ましてやパンフレットにも記載が無かった様な…?
「あぁ、それはね?運動部は大抵外で演習だし、僕らみたいな研究会は先生のお部屋で活動させて頂く事が多いからだよ。だから、その部個々の部室は無いに等しいんだ」
あぁ~、なるほどなぁ…。
「あっ、じゃあランスロット先生のお部屋の半分が研究所みたいになってたのはもしかして…」
「うん、ランスロット先生のお部屋では【万能薬研究会】が活動してるよ?あそこは大分古参の部活でね?日夜新薬を生み出そうと研究してるのさ」
あ~、やっぱりそう言う事だったんだ…。
ん?じゃあ、あのデッカいトカゲの水煮みたいなのも薬の材料とかだったのかな?
………。
うん。
あんまり想像するの止めとこ。
背中がぞわぞわしてきた…。
「では、マルクル先輩の【魔道具研究会】は何処で活動をなさっているんですか?」
うっかり想像したグロ映像をかき消す為に、マルクル先輩に質問してみる。
「あぁ、特別教室棟の、スクルド先生のお部屋だよ?」
「あ~…」
思わず納得してしまう。
そうだよね?忘れがちだけどさ、ステータスカードって超高度な魔道具だもんね?
あんなスマホよりも薄いカードの中にどんだけの情報が入ってんの?って話しだし、カードの表面には個人情報が表示出来て、しかもそれを操作出来るんだから、身近なようだけど凄いハイテクノロジーな代物だよね?
「スクルド先生にお会いした事はあるでしょ?実は先生もシエロ君の作る魔道具に興味をお持ちでね?是非連れてこいと仰せなんだよ」
やれやれ、あの人にも困ったものだよ…。
と、マルクル先輩は肩をすくめたといたけど、スクルド先生が顧問ならちょっと行ってみてもいいかも…、何て心が動いてる(笑)
「本当に見学するだけでも構いませんか?」
「勿論だよ!まだ君はこの学園に入学したばからだからね?まだ不慣れだろうから、決めるのもゆっくりで構わないさ」
「でしたら、是非お邪魔させて頂きたく思います」
と言うことで、僕は部活動見学をする事になった。
あ~、スミスさんも興味ありそうだな…。
何て思いながら、僕はマルクル先輩に連れられて、特別教室棟へ向かって歩き出した。
部活動で出会った新たな先輩方とは!待て次回!!
スイマセン、調子に乗りました(笑)
本日もお読み頂きありがとうございました。