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九十七話目 体育の授業を受けた日



 さて、歴史の授業を受けた後は、体育(武道)の時間。


 今までの体育の時間はストレッチや木登りなどをして、体の動かし方を学ぶって授業だったけど、今日は何だかいつもと趣が違う感じがするな…。



 体育の授業を担当するのはさっきA組にも顔を出した、ダリウス・フット先生。


 彼は元冒険者上がりの教師で、最終的にAランク冒険者まで登りつめた程の実力者だ。


 ここで冒険者について簡単に説明すると、冒険者には基本的に誰でもなれるけど、A~Eランクまで階級があって、そのランクに合った仕事しか受けられない。


 そんで、冒険者が受ける仕事の事を【クエスト】って呼ぶんだけど、クエストを何度も失敗すると階級が落ちたり、あんまり悪質だと冒険者の資格を剥奪されたりもするらしい。


 階級を上げるには、クエスト数をこなす事に加えて、階級試験を受けて合格する必要があるんだそうだ。


 とまぁ、簡単に説明するなんて偉そうな事言ったけど、1年生の僕達が教えてもらえたのはこれくらい。


 噂ではAより上のSランクもあるって話しだけど、ダリウス先生曰わく、これ以上は3年生になってからな!らしい…。


 何でも、3年生からしか解禁されない、出来ない情報ってのがあるんだそうだ。


 まぁ、中には無鉄砲なのも居るし、ビビりな僕からしたらそれくらい慎重な方が有り難いけどね?



「よし、準備が出来たから説明すんぞ~?今日君達にやってもらうのは、【体術】だ。勿論先生が手取り足取り教えるが、先ずは君達がどれくらい動けるかを見てみよう。体術は全ての武道の基本だから、体裁きが上手い奴は、他の武術の上達も早いはず。んじゃあ頑張っていってみよ~!」


「「「「「はーーい!」」」」」



 と、ここまでは良かったんだけどさ…。


「っしゃあ!シエロ、魔術の授業じゃあ遅れを取ってるが、体育は負けねぇぜ!!」


 何でこうなったし…。



 実は先生、これまでの授業の中で誰がどれくらい動けるかって言うのを観察していたんだそうだ。


 で、運動の苦手そうな子から順に、先生から教わった武術の【型】をやらせていたんだけど、ある程度動ける子の番になったら好きに組み手をしてみろって、急に無茶ぶりをしてきた。



 で、僕の相手って言うのが…。


「お手柔らかにね?ルドルフ…」


「おぅ!」



 そう、エルドレッドさんの弟で、僕の友人のルドルフ…。


 此処でルドルフのステータスを紹介するとさ…。


―――


ルドルフ・エルリック

性別:男

年齢:6歳

level:7

種族:ヒューマン族、兎族のハーフ

魔法属性:炎

所属:聖ホルド学園

スキル:魔力制御(Lv.3)、炎操作(Lv.4)、ヒューマン言語(Lv.4)、獣族言語(Lv.3)、鍛冶(Lv.3)


加護:


魔力量:A


体力値:500/500

魔力値:400/400


―――


 だよ?


 特に注目して欲しいのはココ!


 体力値:500/500←ココね!?


 僕の体力値が300なのに、ルドルフの体力値は500もあるんだよ?


 半分兎さんなのに、ズルくない!?



 スキル欄に武術系がないだけマシかもしれないけど、ただ攻め込んで行っただけではこっちのスタミナが先に切れるって事で…。


「何難しい顔してんだ?来ないならコッチから行く、ぜ!?」



 僕が考え込んでいる事に痺れを切らしたルドルフが不敵な笑みを浮かべながら突っ込んで来る。


 僕と彼の間合いは約2m。


 ルドルフなら、多くても3歩くらい踏み込めば僕に届く距離。


 そして、あっという間に距離は詰まり、握り拳を固めたルドルフはもう目の前…。


 もう次の瞬間には彼の拳が僕の体のどこかしらには当たるね。



「もし避けられなくても、手加減してやるからな!」



 そう言い放ったルドルフの拳が僕に迫る。


 あれ、当たったら痛いだろうなぁ…。


 ………。



 まぁ、避けられなければ、の話しだけどね?



 僕はルドルフの放った拳を軽く払い、その手を取って足払いをかける。


「うぉっ!?」


 後はルドルフの勢いを借りて、僕の横に転がすだけ。


《ドサッ》


 周りからは、僕が攻撃を避けて、そのままの勢いでルドルフが勝手に転んだだけに見えたかもね?



「そこまで。うん、2人とも良く動けていたね?ルドルフは相手の動きが読めれば完璧だったな。じゃあ次!アレックスと――――」



「ルドルフ何やってんだよ。足下気をつけろよな?」



「るっせ!」


「「「「「あはははは」」」」」


 先生に呼ばれたアレックス君が立ち上がりながらルドルフをからかい、他の皆の笑いを誘う。


 それに噛みついているルドルフに向かい一礼して、僕はマイペースに皆の列に戻った。


 慌ててルドルフも僕に礼の形を取ると、そのまま追いかけて来て、当然の様に僕の隣に腰を下ろした。



「シエロ、さっきの何だよ!?俺、気がついたら床に転がってたぞ???」


「え~?ルドルフが勝手に転んだだけだろ?」


 素知らぬ顔でしらを切ってみる。


「シエロ…?」


 はい、ごめんなさい。


 ちゃんと説明しますんで、そんなに怖い顔で睨まんといて下さい…。


「分かったよ…。君の手を取って足を引っ掛けて転がしたんだ。詳しい事は言いたくないから省くけど、ルドルフもうちのお祖父様に稽古つけてもらってたらこうなるってだけ言っとく…」


「お前んとこの爺さんって…。アーサー様だよな…?」



 そう、ステータスカードを貰ってから学園に入学するまでの1年とちょっと、祖父さんの時間がある時だけって制約はあったけど、何度も稽古をつけてもらってたんだよね。


 稽古の内容的には、見せられないよ!レベルで危ない事ばっかりさせられたし、マジで記憶にモザイクをかけたいくらい思い出したくもない事ばっかりだったから省くけど、ダンプカーかブルドーザーみたいな祖父さんに毎回立ち向かっていた僕からして見たら、いくらルドルフのスピードを乗せたパンチでも止まって見えたぜ…。


 あの岩砕きもそれの一環でやってたんだけど、初めはアレが主体だったのになぁ…。


 フフフ、ようはアレッスよ。


 某週刊少年漫画雑誌の主人公とかが、人知れず厳しい修行に明け暮れて、仲間の前に戻って来た時にはめちゃめちゃ強くなってるアレだと思ってもらえたら嬉しいよ…。



「俺、詳しい事はわかんねぇけど、シエロが一気に死にそうな目になったって事は、そんだけやべぇ修行だったんだな…」


 あっ、そんな目してた?


 いかんいかん、僕元気だよ~?OK~、うふふ~(壊)



――――――


「はぁ、腹へった~…」


「シエロ君、今日は何食べる?」


「ん~、そうだなぁ…」


 昨日はお肉がゴロゴロ入ったミートソース――ボロネーゼって言うんだっけ?――のスパゲティを食べたから~…。


「今日の日替わりランチの内容を見てから決めようかな?」


「あ~、日替わりランチも良いねぇ~?」



 しかし、昼食前の体育ってやつは骨身に染みて堪えるなぁ…。


 特にこの学園は1時限が2時間あるし、その分動き通しだから余計に堪えるのかもしれないね?


 とにかく早く食堂に行って、何か食べたい…。



「なぁ、君がシエロ君で合ってるかな?」


「はい?」


 はぁ、何でいつも昼食前に声を掛けられるんだろう。


 とは言え今回は子爵のバカ息子って訳じゃないみたいだけど…。


 声を掛けてきた人の方へ向き直る。


 其処には、アレックス君よりも犬よりの獣人さんが立っていた。

 って言うかまんま柴犬っぽい…。


「あの、僕は確かにシエロですが、何かご用でしょうか?」


「あっ、うん。実は同じクラスのマルクルから君に伝言を頼まれてさ」


 何故そこで顔が赤くなる?


「マルクル先輩から、ですか?」


「うっ、うん。放課後に、6年A組の教室まで来てほしい。だってさ?じゃあ伝えたよ?」


「あっ、先輩?」


 マルクル先輩と同じクラスだと言う獣人の先輩は、用件だけ伝えると凄い速さで走って行ってしまった。


 えぇ~!?


 言い逃げ…?僕行けるとも行くとも返事してないんだけど…。


◇◆◇◆◇◆


 マルクルに頼まれて、1年生のシエロって子に伝言を届けに行っただけだってのに、何でこんなに胸がドキドキするんだ?


 まさか、俺、変な病気なのかな…。


 考えてるうちに、いつの間にかA組の教室まで戻って来ていた。


《ガチャ》


「あれ?ラルフ、もう行ってきてくれたの?」


「あっ、あぁ…。ちゃんと行ってきたぜ?」


 まさか、伝言の相手があんなに可愛い女の子だとは思わなかったけどな…。


 俺がそう言うと、マルクルのやつ吹き出しやがった!


「くくくくく、ごっ、ゴメン、ラルフ…。いや、可笑しいな?ちゃんと伝えたと思ってたんだけど…」


「何をだよ?」


 しかし、可愛かったなぁ…。

 シエロさん(・・)…。


 光に当たるとキラキラと金色に輝く髪の毛に、あの深い深い青の瞳…。


 見つめられるだけで胸の辺りがキューっと締め付けられる様に感じた。


 はっ!これが恋!?


「ぷーー!」


 あっ、こいつまた吹き出しやがったな?


 まったく、失礼な奴だ…。


「あはははは、もう駄目だ!くっ苦しい。あはははは、あはははは」


「何だよ!他人事だと思って、からかいやがって…」


 せっかく俺が使いをしてきてやったって言うのに、あんまりにも失礼じゃねぇか…。


「ごっ、ゴメン。本当にゴメンって…。たださ?シエロ君は…」


「あれ~?シエロがどうかしたの?」


 マルクルの野郎が何か言いかけた時、教室の扉からプロクスが出て来た。


 ん?


 今こいつ、シエロさんを気安い感じで呼び捨てにしなかったか?



「おい、プロクス。お前シエロさんを知ってるのか?」


「えっ?シエロは僕の【弟】だよ?」



 は?



 おと、弟!?


 え?


 は?


「あぁ~あ。クク、どうするのさプロクス。ラルフの奴、うふふ、すっかり混乱しちゃってるじゃないか?」


「え~?僕のせいだって言うの?」



 プロクスとマルクルが、俺の周りで何かごちゃごちゃ言ってやがったけど、俺の耳には何1つ入って来なかった…。


 頭が真っ白になるのを感じながら、俺の人生初の恋は、始まる前から終わったのだった。





可哀想なラルフ君と天然プロクスでした(笑)


本日もお読み頂きありがとうございました。



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