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九十六話目 歴史の授業と兄さんに殺意を抱いた日

12月24日の更新です。


久しぶりの主人公のキレッぷりをお楽しみ頂けたら幸いです(笑)


本日も宜しくお願い致します。



 次の日、僕が1年A組の教室へ入ると、あっという間に3人のクラスメイト達に囲まれた。


 えっと…。


 何でしょう…?




「シエロ君!妖精の姿を見る眼鏡を作ったって本当ッスか!?」


「シエロ君、僕は妖精が君の部屋で生まれたって聞いたんだけど!」


「妖精って寮の部屋の中で何か生まれるものなのかい?」



 いつもの様にグイグイ来るスミスさんと、アラン君…。



 そして珍しい事に、バレリーさんもその輪の中に混じっていた。


 あの~、質問するならせめて、僕に口を挟む余地を頂けないでしょうか(汗)



 ちなみに、バレリーさんはうちの祖父さんに憧れを持っていて、近衛騎士団に入るためにこの学園に来たっていう変わり種の女の子だ。


 だからか、いつも話してるのは筋肉馬鹿のアーノルドとか、アレックス君とかの武闘派衆とばっかりだったので、僕に話し掛けて来るなんて凄く珍しい。


 そりゃまぁ、初めの頃はよくバレリーさんが祖父さんの話しを聞きに来てたけどさ…。



 って話しは一旦置いておくとして。



「えっ…と、誰からその話しを聞いたの?」


 隠したい訳じゃないから別に良いけど、昨日の今日でこんなに噂が広がってるって可笑しくない?


 思わずブロンデの方を見るけど、ブロンデも首を捻っているし、どうやら彼じゃないらしい。


 じゃあ、誰が…?


「プロクス先輩が自慢してたッス」


「プロクス先輩が廊下で話してたよ?」


「私の敬愛する、君の兄上様がお話ししているのを聞いたのだ」


 わぉ…、綺麗な異口同音ありがとうございます…。


 よしっ!やっぱり兄さんは一度シメておこう…。


 ちょっとボコボコにしてくるから、兄さんが居た場所を教えて下さいませんか…?


「えっ…と、教室棟一階のラウンジに居た…よ?」


「そっ、そうッスね。あっしもラウンジで見たッス…」


「うっ、うむ…。2人の言う…通り、だ…」



 あれ?何で皆後ずさるの?



《カララララーン、カララララーン》


「お早うございます。皆さん席に…。おや?アラン君、ゾーイさん、シルヴィアさん。扉の前でどうしたんですか?あれ?シエロ君まで怖い顔してどうしました?」



 チッ。


 兄さんよ、鐘に救われたな…。


――――――


「――と言う訳で、この国は統一されました。戦乱の世に終止符が打たれた瞬間ですね。」



 今僕はランスロット先生による歴史の授業を受けています。


 先生は本当なら魔法薬・薬草学の担当なんだけど、社会と数学の授業も受け持っている。


 先生曰わく、社会、と言うか国の歴史は魔法薬・薬草学の歴史でもあるとかで、色々調べて行くうちに詳しくなったそうだ。



 そして、この国。


 今はモーント王国なんて名前の大国だけど、元々はヒューマン族、獣人族がいがみ合う小国だったんだそうだ。


 互いに互いの種族を馬鹿にして、小さな揉め事を理由に戦を起こす様な、みみっちい国。


 それがある日を境に戦何かしている場合じゃなくなって、終いには共存する道を選ぶ事になった。



 魔王の誕生…。



 それがこの国の転機となったそうだ。


 その時の魔王は伝承にも残っていないらしくて、詳しい事は何も分かっていないらしいけど、魔王とその配下達が暴れまくったからいがみ合ってた国が仲良く手を取ります、なんて皮肉にも程があるよなぁ~。


 まぁ、そのお陰で僕達は今、同じ教室で仲良く授業を受けられているんだから、ある意味魔王に感謝、なのかな?



「―――元小国からそれぞれ勇者が1人ずつ選ばれ、魔王討伐に向けて動き出しました。そして――」



 ランスロット先生が教科書を片手に、授業を続けていく。


 先生が読むと、ただの教科書の内容も戦記物の伝記を朗読してもらっているかの様な重厚感を感じるから不思議だね(笑)



 元小国から選ばれた勇者は全部で5人。


 それぞれ何族の人達が選ばれたのかも詳細な伝記は残っていないそうで、人数と魔王討伐が成功した事のみが伝わっているだけなのだそうだ。


 唯一残っていた一冊の書物から得られる情報として、この国の歴史が細々と伝わっているだけ。


 戦続きの国に有りがちな話しではあるけど、戦乱が終わった後の書物が何も残ってないって言うのはどういう事なんだろう…?



「先生、質問があります」


 僕が疑問に思っていると、スッと手が挙がった。


 手を挙げたのは、いつか席順表を見るのを邪魔しちゃったクレアさんだった…。


「はい、シャーロットさん。どうぞ?」


「ありがとうございます。戦乱の世が終わった後で書かれたはずの魔王討伐に関する書物が残っていないのは何故なのでしょうか?」


 おっ?クレアさんが僕と同じところに疑問を持ったみたいだ。


 だよねぇ?僕もそこスッゴい気になる。


「ふむ、良い質問ですね。実は、魔王討伐の後、統一された国はまた小国に別れ戦を始めた、と言われています」



《ザワッ》



 池○彰も真っ青な先生の口から飛び出したのは、まぁ予測の範囲内の出来事だった。


 前の世界でもよく聞いた話だ。


 あっち(魔王討伐)が解消したから元に戻る。


 戦を起こす。


 何処にでもある話し、と斬る事は簡単だけど…。




「しかし、魔王討伐を成し遂げた勇者達が、未だ続く小国同士の諍いを嘆き、自分達の国へ反旗を翻したのです」


《おぉ!?》


 どよめきが教室中を包み込む。


 真面目な顔から一転、ドヤ顔混じりの楽しげな表情になったランスロット先生は、更に熱弁を奮う。


「そして、自分達がそれぞれの国の玉座についた勇者達の手で、真の統一を果たしたのです」

《おぉー!》


 歓声が上がる。


 先生のドヤ顔も煌めきが強くなる(笑)



《ガチャッ》


「さっきからうるせぇぞ~。他のクラスも授業中何だから静かになぁ~?」



 歓声に沸く1年A組の教室の扉が急に開き、そこから大柄な男が姿を現した。


 あっ、ダリウス先生…。


 彼は、入学式の時に僕らを誘導してくれた2m以上の高身長を誇るB組の担任だ。


 あ~、まぁこれだけ騒げば何処かから苦情が来るわな(笑)


 さっきまでのドヤ顔から一転、申し訳なさそうにダリウス・フット先生に謝り続ける担任を見ながら、そんな事を思ったのだった…。



 あっそうそう、この国を統一した勇者の名前は残っていないけど、【始まりの王】って言われていた王様はヒューマン族だったんだそうだ。


 きっとこの人も3姉妹の女神絡みの人だったんだろうなぁ…。


 そこでふとブロナーの言葉を思い出す。


《「大丈夫。私の手、足の代わりに、動いてく、れてる子達もいるから…」》


 多分、彼女達の手足となる子達って言うのが、【勇者】と呼ばれる人達なのだろう。


 よくある勇者と魔王物の話しとか読むと、神の采配によって効率良く話しが進んだりする描写があったりするよね?


 きっとこの【始まりの王】()も女神の采配や指針によって動いていたんじゃないかな?



『ふむ。当たらずとも遠からず、だな…』


 ん?


 今誰か何か言った?


『ううん?クレイは此処にはいないし、私は何も言ってないわよ?』


 だよね?


 クレイは寮の部屋でフロルを見てくれてるし…。


 まっ、いっか…。


 そのうち分かる事もあるでしょ…。



 僕は改めて教科書の挿し絵を見る。


 そこには凛々しい壮年の男性の横に、深くフードを被った黒い人物の姿が描かれていて、説明書きとして、名も無き始まりの王と、常に彼の側にいた黒衣の女性の文字があった。





本日もお読み頂きありがとうございました。



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