九十五話目 久しぶりにやってみた日
これくらいで良いの?
『うん、おやかいっぱい』
満足そうなフロルを見つめ、僕は如雨露(自家製)の先端を持ち上げた。
急にお腹空いたって泣き出すから焦ったよ…。
ブリーズ達が対処法をスプラウトさんから聞いていてくれてたから何とか助かったけど、泣いてる妖精を手のひらに乗せて右往左往するくらいにはテンパった。
良く考えればフロルは文字通り生まれたてな訳だし、僕も配慮不足だったなと反省しているところ…。
まさか魔力を溶かし込んだ水がフロルのお乳代わりだったとは思わなかったけどねぇ…。
「妖精は泣き止んだみたいだね?」
「あっ、マルクル先輩、お騒がせしました」
「いやいや、僕としても興味深い1日だったよ…。それにしても本当にこのモノクル、貰っちゃって良かったのかい?」
先輩はモノクル(片眼鏡)を外しながら僕に、そう聞いてきた。
何だ、そんな事か。
「勿論ですよ。先輩にはいつも兄がご迷惑をおかけしていますし、僕もお世話になってますから」
「そうかい?そう言ってもらえるなら、有り難く頂いておくよ」
嬉しそうにモノクルを触るマルクル先輩。
うん、何か語呂が良いね(笑)
ってのは冗談だけど、モノクルを着けたマルクル先輩は何て言うんだろう…。
スッゴいシックリきたって言うか、何か雷に打たれた様な衝撃を受けたんだよね(笑)
兄さんが迷惑掛けてるのも事実だから、先輩には是非ともモノクルをはめていてもらいたいところだよ(力説)
――――――
「マルクル先輩、ランチャー先輩、ブロンデ、お休みなさい」
「お休み…」
「良い夢見ろよ~?」
「シエロ君、先輩、お休みなさ~い」
就寝の挨拶をそれぞれと交わし、二段ベッドに取り付けられたカーテンを閉めると、そこは僕だけのプライベート空間になる。
此処のベッドは大きさもさることながら、高さも結構あって、僕くらいなら立って作業しても全然平気。
寧ろ本当に一つの部屋くらいありそう(笑)
その空間を利用してって訳じゃないけど、毎晩カーテンを閉めてから、2人の妖精達にご飯…と言うか魔力の塊?を与えてたんだ。
妖精の数的には今日から1人分増えた訳だけど、フロルの方はまだ小さすぎて依代からは離れられないから、取りあえず今のところ用意するのは2人分かな?
とは言ってもそのうちフロルの分も必要になる訳で…。
ん~、久しぶりにやってみるか…。
『やってみるって、何を?』
ん?今君達がモグモグしてるやつの花樹属性版?を出してみようと思って…。
因みに、クレイが食べてるのは昔も今も変わらず泥だんごだけど、ブリーズのは扇風機だったでしょ?
それってどうやって食べるの?って疑問からちょっと改良を加えた結果、今は某忍者が使う○旋丸っぽい風の塊を与えてる。
前に妖精達から聞いた話しだと、僕の体から出してるこれは【魔法になる前の魔力の塊】って事だったから、別にコレって形がある訳じゃない。
要は気持ち次第でどうとでもなるらしい。
と言うおさらいをしがてら、いつものようにお腹の辺りに意識を集中させて、花樹属性の気を探る。
他の属性なら慣れもあってか、呼吸をするくらい簡単に出来るけど、今やってるのは始めての属性だからちょっと慎重になってるかも…。
まず何色になってるのかが分からないんだよなぁ…。
取りあえず、今までのと違う感じがするところを探ってみる事にする。
ん~。
ん~?
ん!?
おっ!キタっぽい♪
次は体の中で回転。
おぉ!スッゴい回る(笑)
んじゃあ出て来い!
回転が思ったよりも早くかかったので、胸を通って腕から放出してみる。
《シュポッ》
軽い音がして、次の後に手の中に何かが落ちてくる感覚がくる。
あら~…。
こりゃまた分かりやすいと言うか、何と言うか…。
このお久しぶりな感じを確かめながら、何が出て来たのか発表するとね?
積み木(三角形)だった…。
『あら、意外と硬いのね…』
『ん~、木の質感的には柔っこい部類だけっじょ、フロルが食べるには流石にまだ硬いかもしんにぃ~ない?』
いや、クレイさんや…。
まだ実験の段階ですぐ食事に持っていくのは才能ですか?
どっちにしても、フロルに与えるのは魔力水(お乳)を卒業してからだね。
あっ、そっか…。
今日はたまたま休日だったから直ぐにフロルに対応する事も出来たけど、明日からは授業もあるし、こんな風にずっと側に居られるわけじゃないんだ…。
ん~、かと言って教室に植木鉢持ち込んだら怒られそうだよね?
どうしたものか…。
『シエロ、あれだったら私が見でっかよ?』
えっ?クレイ、良いの?
僕は凄い有り難いんだけどさ…。
『良いよ~?むしろ植物さ育てるのは私の仕事だかんなぃ?お安い御用だべ』
「あぁ~…」
そうクレイに言われて、僕の家の領地内の大地に、彼女が栄養を分け与えてくれていたのを思い出した。
お陰で父さんが野菜とかの収穫量が増えたって喜んでたっけ…。
そのクレイがフロルの子守りを買って出てくれたんだ。
きっと立派な妖精に育ててくれる事だろう。
『そうだよぉ~。大船に乗ったつもりで私にど~んと任せてみっせ☆』
そう言ってふんぞり返るクレイさん。
う~ん、凄く頼もしい…。
じゃあ、悪いけどフロルの事を任せても良いかな?
その代わりと言っちゃあ何だけど、いつもより余計目に団子を出す様にするからさ?
『私から言い出したんだから、良いに決まってっぺした♪任せときなっしゃい』
うん、ありがとう。
宜しくね?
『合点承知の助左右衛門だぁ~☆』
……………。
時々クレイが僕と同郷な気がしてならない時があるけど、ここは有り難くお願いしておこう。
新しい仲間が増えた事で、これから嬉しい事も悲しい事も増えるだろうけど、それも含めて楽しめる様に過ごせたら良いな…。
後はスパーク君が戻って来てくれたらなぁ…。
『そうねぇ…。まぁ、あいつの事だからすぐ戻って来るわよ!あなただってプロクス君にそう言ってたでしょ?』
うん。
そうだよね?
『さっ、明日も授業があんだから、さっさと寝っせ?』
『そうよ。寝坊しちゃうわよ?』
ん~、何か寝かしつけられてる感じが半端ないけど、大人しく寝るとしますか…。
『そうそう、ほら。お休み』
『お休み~』
うん、お休み…。
大人しく布団に潜り込むと、2人の妖精達から子守歌みたいな柔らかい歌が聞こえてきた。
時々歌ってくれるのを聞くけど、子守歌は始めてだなぁ…。
心地よい眠りに誘われて、僕は目蓋を閉じた。
フロルの今後にご期待下さい(笑)
本日もお読み頂きありがとうございました。
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ご協力頂き、ありがとうございました。




