将兵記念墓地での事件①
ブロッサムたちが広場で開いた集会から、早くも数日が経過した、麗らかに晴れたある日の午前のことだった。
ここは、帝都ベルンハイムの東にある、将兵記念墓地。将兵記念墓地とは、帝国の過去の戦いで命を捧げた、数多くの帝国軍の将兵が眠っており、神聖で厳かな雰囲気の場所である。帝国の各地から将兵の遺族や、帝国軍の将兵などが墓地に訪れて花を手向けており、この日もそうした光景が見られていた。そして、墓地には静寂な空気が漂っていた。
だが、そのような静寂さを一瞬にしてぶち壊す、「ドーン」という轟音が突如として墓地全体に鳴り響いた。墓地を訪れていた人たちは、それに驚いて動揺を隠せない。中には、爆発のショックで泣き出す人もいた。轟音は、墓地の裏門の辺りから聞こえていた。
騒ぎを聞き付けた、墓地の警備に当たっている衛兵数人が馬で裏門に向かうと、フードで顔を隠している不審な男が絶叫している。
「エクスカリバー帝国の侵略戦争を正当化する、将兵記念墓地粉砕!」
衛兵が男のそばに近付き、取り押さえようとすると、男が狂ったように再び叫んだ。「裏門で手榴弾を爆発させた。我らキロヌカ人は、将兵記念墓地に反対する!」男はキロヌカ人だったのだ。すぐさま男は衛兵に捕らえられた。
将兵記念墓地での事件は、その日の夕方までには帝都中に広まっていた。それをギルドの本部で知ったブロッサムは、怒りに震えた。「将兵記念墓地の事件を起こした、キロヌカ人を断じて許さない!2日後に事件に抗議する集会をする!」