帝国の本当の歴史②
ブロッサムの話は続く。「奴らは略奪、放火、婦女暴行などを帝国のあちこちで繰り返した。それは、言葉にすることが出来ないくらい、凄惨なものだったそうだ。」
「ほんとうにおぞましい。キロヌカ人が「大戦争」の後にこのような振る舞いをしていたのは、帝国の臣民として許すことは絶対に出来ませんね。」
ブロッサムは、そうだという風に頷く。「うむ。その頃の帝国は「大戦争」に負けたばかりで混乱していて、帝国軍や衛兵はキロヌカ人に対して何の手も打つことが出来なかった。そしてしまいに奴らは帝国に[特権]を要求するに至った。」
「当時の帝国は、キロヌカ人になす術は無かったのですね。」
「暴力で脅すキロヌカ人に帝国は屈するしかなく、泣く泣く[特権]を認めなければならなかった。[特権]はどんな内容かもちろん知っているだろう?」
「はい。キロヌカ人が帝国から生活に必要な金を受け取ることや、帝国風の名前を名乗ることなどですね。」
「その通りだ。その[特権]があるせいで帝国にキロヌカ人が未だに居座っているんだ。これは看過できる問題ではない。だが、それに声を上げる者は「大戦争」に敗れてから60数年間、ほとんどいなかった。」
「キロヌカ人を恐れたという訳ですか。」
「長い間、奴らの無法を批判したくても出来ない。そんな空気が、帝国には漂っていた。この現状を変えるために、私は立ち上がったのだ!」ブロッサムは、力強くそう言った。