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帝国の本当の歴史①
集会が終わり、参加者たちがそれぞれ帰路につき始めた。ブロッサムも、家路につこうとしていると、集会に参加したブロッサムの協力者の、ケントがやって来てこう話しかけた。
「ブロッサムさんが[特権]廃止の活動を始められて、もう半年になります。帝国中にキロヌカ人の正体をさらけ出して、帝国を我ら臣民の手に取り戻すためには、まだ時間が掛かりそうですね。」
それに、ブロッサムが冷静に答える。「帝国を取り戻すための戦いはまだ始まったばかりだ。臣民の多くは、奴らの本性を知らない。そして、帝国の歩んできた歴史が歪められていることも、知る者はわずかしかいない。」ケントは黙って首肯した。
ブロッサムの話はなおも続く。「あれは、帝国が8年に渡って戦った「大戦争」に負けた後から始まる。戦いに敗れる前まで、帝国の領土は今の約10倍くらいの広さで、その中にはキロヌカも含まれていた。また、現在の帝国の領土にも、キロヌカ人が出稼ぎなどの目的で居住していた。「大戦争」に帝国が負けた後、それまで大人しかったキロヌカ人は次々と乱暴狼藉を働き始めた。」