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苦悩の結婚問題。

作者: 安孫子太郎



結婚について舐めていた。

もっと簡単なことかと考えていた。


忌野賢治(29歳)は今とてつもなく苦悩している。


ここ2年間ほど付き合っていた女性、篠宮雪見子(25歳)との結婚について悩んでいる。


結婚というものはとても簡単なことだと考えていた。


とりあえず好き同士が、未来永劫共に暮らす約束をする行為であり、二人の同意さえあればそれにて全てオールオッケーだと考えていたのだ。


恋愛の延長線上に結婚がある。それだけのことしか考えていなかったのだ。


しかし、実際問題、お金のこと(結婚式の資金等)やら親同士の関係性について何も考えていなかった。

また、結婚して苗字が一緒になるということも、たいしたことは無いと思っていた。


ただ、単に名前が変わる。一昔前に一世を風靡ふうびしたテレビゲーム、ポケットモンスターの名前を付け替えるくらいにしか考えていなかった。


だが、女性側の苗字が変わるということは、我が忌野の住人になるということだったのだ。

それゆえ、忌野家の娘として生きていうことになる。


はあ、そうですねえ。と漠然とその事実は知っていたが、そのことに重みがあるなんて微塵も、一ミリも感じていなかったのだ。


まあ、忌野家の人になるといって、産みの親は変わらないわけで、そんなに気にしなくてもええんじゃーないですかねと軽い心持ちでいた。


しかしながら、その事実が男側の家に重い責任を与えるものであることについて、思い知らされた。


篠宮家から、正式に娘を受け入れる体制が整っているかとの問を受けたのだが、なんと答えればいいのやらとひどく狼狽してしまった。


軽い気持ちで篠宮家に挨拶に行き、あとは結婚式の予定、費用やらを策定したり、親同士の顔合わせ食事会を開けば、あとはもう万々歳との予定であった。


だが、そんな重い質問を受けて、なんと答えたらいいのかさっぱり分からなくなったのだ。


はい、大丈夫です。と一言だけ伝えることはできるが、実際に具体的行動となるとどうやって示せばよいのか。


お金で示すとなると、母親の爆裂な浪費癖&ネットワークビジネスにハマっての増え続ける借金。そして、お金の心配で夜も眠れる日々を過ごしている小心者の父を持つ家庭にいる、忌野賢治はどうしたら良いのか分からない。


さて、困った。困った。


結婚については、結納金というものがある。


これは、男側が女側に結婚費用としてこれをお使い下さいと手渡す物。

だが、現在においてこの風習はほぼ無くなり、そんなお金が有れば二人で結婚資金として遣いましょうの流れが出来ている。


手元にわずか2,30万ほどしか無い、賢治にとって、とても無理な話だ。


ここで、突然話が変わるが、賢治は現在、この篠宮雪見子とは同棲をしている。

同棲といって、非認可であり、コッソリと勝手に行っているのだ。

雪見子は一人暮らしをしていた為、そこの部屋に賢治が転がり込んだっていう訳だ。

元々、賢治は実家住まいだった。

ぼちぼちと、雪見子の部屋に遊びに行っている間に、泊まる日数が自然と増えてきた。

そうして、気付いてみれば、買った洋服やら仕事着を雪見子の部屋に置くようになった。

泊まった時に、そのまま雪見子の住まいから翌日、出勤できるようにとの計らいであった。


そうこうしている内に、こんなにも泊まる回数が増え、月の半分以上は一緒に寝ているのならば、家賃を折半し払ってやらねばとの流れになった。

家賃を払っているとなれば、もう同棲のようなものだ。


こうして、いつの間にか気付けば同棲生活をスタートさせてしまっていたのだった。


篠宮家の父、母はこのことを知らない。

それが故に、賢治は実家にいるので、しこたま貯金が溜まっているだろうとの見方をされている。

だが、本当のところは、二人で遊びほうけ、共に暮らしているので、少しも貯金なんか溜まっていない。

入った給料は綺麗さっぱり、毎月使い終わっているような感じとなっていたのだ。

付き合い始めてすぐに、一緒に暮らしだしたのでもう2年近く家賃を折半している。溜まるはずがない。



そんなことで、色々と事情が絡みあい、面倒な状況となっている。


そしてまた、結婚式のことに関しても、予定は何も立っていない。

正直なところ、賢治は結婚式に興味が無い。

まず、そんな通過儀礼的な行為をすることに何の意味があるのであろうかと、必要性を感じていない。

それがゆえに興味が無いのだ。

また、友の数も非常に少なく、いちおうは友の関係が続いている相手とも年に数回連絡を取るか、取らないかのレベルである。それでは結婚式に呼ぶかどうかも非常に悩ましいところである。


反して、雪見子は式に興味がある。それは女性ならば誰でもドレスが着たいものであるし、結婚式とは子どもの頃からの夢である場合が多い。

そして、友の数も膨大であるため、式に呼びたいと考えている相手はゴマンといる。


その差のギャップもとても苦しいところである。


指輪を手渡し婚約をした手前、いつまでも現状をダラダラと続けるわけにはいかない。


まだ、打開策は見つけることは出来ていないが、賢治は雪見子との結婚はしたいと考えている。


今、出来るところは何であるか。それを1つずつ見つけ出し、少しずつでも前進していかねばならない。


結婚なんて、どこの誰でもしているし、とても簡単なことなのだろうと考えていたのは浅はかだったようだ。



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