プロローグ
【プロローグ】
辺りが炎の嵐に包まれる中で、俺は辛うじて息をしていた。
膝から崩れ落ちたあと、一体どれだけの時間伸びていたのだろう。仲間の手を借りてようやく立ち上がる。
『標的はここにいる』
その事実だけが、俺の残り少ない気力と活力を奮い上がらせる。
標的の名を叫び、血眼になりながらただひたすら施設の中を駆け抜ける。
次の瞬間、廊下一杯に張り巡らされたガス管に亀裂が入り、黒の煙を吐き出しながら爆発していく。
耳を劈く轟音、目を刺すような煙が蔓延する中、導かれるようにある一つのドアの元へと辿り着く。
そのドアを開けるのに躊躇などなかった。アイツはここにいる。確信まで至らずとも、直感でそう感じ取れた。
冷え込んだ外気が、そこを外だと気づかせるのにそう時間はかからなかった。強風が空から舞う白の結晶の着地をせかす。
俺の目の前には、黒のゴシックドレスを身に纏った少女がひとり。この場にはそぐわないドレスを翻し、彼女はくすりと微笑む。
『何故、このような事をしてまでこの娘を助ける』
俺はドレスの少女の足元にぐったりと倒れ込む少女を見やって、言葉を紡ぐ。
『そこに、俺の半身がいるからだ』
彼女は高らかに笑う。可笑しくて仕方が無いようだ。何せ俺の体は何一つ機能など失っていない。
向けた剣先に自分の姿が映るや否や、彼女は転がっていた鉄パイプを手に取る。
俺が走り出したその瞬間、彼女も遅れを取りながらも動き始める。
────キーーンッ。
甲高い金属音が響いた直後、その衝撃に耐えられず足場にはひびが入る。
バックステップで華麗に間を取ると、彼女は使い物にならなくなった鉄パイプを投げ捨て、口を開く。
『研究材料を失うのは惜しいことだ。だか、いい収穫でもあった。二度目はないぞ、少年よ。貴様の半身は常に手中に納めておきたい。次に会うときは立派な資料として、私の手元に…』
その顔は、悔しさとは裏腹にうすら笑みを浮かべていた。
彼女が身を翻すと同時に、熱風が俺を包み込む。
このままではいけない。
強くならなくては。前に進まなければ。
剣先が空を薙ぎ、割れた煙の間からは雪が舞い込む。
───これが彼、氷那寺冬織の物語りの始まりだった。
初めまして、達 悠遊と申します。
この作品が初投稿、初連載となります。
ざっと大まかなストーリーとしては高校生時代の頃から推敲しており、文字に起こすに至りました。
間違った言葉の使い方などあれば、逐一報告してくださるとありがたいです。
また拙い文章表現に関しては…スルーで(笑)
この作品を基盤として、沢山の人に読んでいって頂けたらと思います。精一杯悩んで悩んで、文字に起こして行こうと思います。
連載スピードは比較的遅いので、気長に待ってて下さい。
それではまた。のしのし。