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僕らの時間は指輪と廻る  作者: 高山 和義
第2章 「時間軸」 ~澤本和葉の場合~ 
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その2

今日、九月二十三日は、一限目の数学A、二限目は数学Ⅰと、数学続きのとてもつまらない時間割だ。

ぼやいても仕方ない。いつも通り授業をこなしていく。

そして三限の物理の時だった。

「えーっと、突然の連絡で申し訳ないんだが」

授業もほとんど終わったところで、物理教師が何やら話し始めた。

「明日の授業は、自習になります!」

やったー、とクラス中が沸く。こういう反応は中学の頃から変わらない。

「いやー申し訳ないねー。急に他の学校で授業入っちゃってなー、……って聞いてるかお前らぁ」

この教師は非常勤なのだが、ほかの学校でも授業を受け持っているというのだ。

だから、基本的に職員室では見かけない。担当クラスもこの学年の一部クラスだけなので、週に三日いればいい方である。

とても自然体(?)な先生で、生徒からの支持はそれなりにあるものの、それと同じくらい扱いが雑だ。

チャイムが鳴り、「おっといけない」と物理教師が教室を出ていく。

クラスの雰囲気は落ち着くことはなく、さっきの休み時間の時に読んだ部分の続きが気になったので、すぐ手の届くところに仕舞っておいた本を取り出した。

周りはさっきの自習の話題でざわついているが、そんな場所でも本に意識を集中させるのは慣れている。

スッと本に意識が落ちたところで周りの音が少し、遠ざかる。


【寂しいよ】



【みんなが離れて行ってしまう。私から】


こんな文、この本にあったっけ?


【離れていかないで、気づいて。お願い】


違う。私が読んでいるからじゃない、これは私の頭の中で―


チャイムの音で、本の中から意識が引き戻される。


四限の英語の教師が入ってきたのを見て、しおりを挟んで本をそっと閉じた。

                  *

昼食を食べ終え、五限の授業は国語だ。

正直、国語は真面目に受ける気にはならない。極めつけ一番眠い時間帯の五限である。

席が後ろの方であるのをいいことに、ほぼ毎回読書か居眠りをしている。

よく本を読んでいるから、というだけで、初対面の相手からはよく真面目ちゃん扱いされるがそんなことはない。

読書家だと、眼鏡・真面目・勤勉・物静かみたいに、いろいろ付属品のように印象がつきまとって、こちらとしてはいい迷惑だ。

みんなアニメとかマンガの影響を受け過ぎではないだろうか?

見ての通り、授業中に読書はするし、眠けりゃ寝るし、女子同士カラオケなりなんなりで騒いだりもする。そんな型にははまった性格なんかあるかっつうの。

私は文学少女ではないが、小説はよく読む。もちろんラノベも。

そうして、今日はさほど眠くもなく、さっきまで読んでいた小説を出して、栞をたどってページを開く。

活字を目で追い始めてから、さっきの謎の出来事をふと思い出す。

(さっきの声……)

どこかで聞いたことがあったような気がするのだ。

知り合いなのか、テレビで見た誰かなのか、クラスメイトなのか。それはわからない。

声だけで、人をすぐ特定するのって難しいよね。わかる?

でも、正解は出かかってる、喉元まで出かかってる。この感覚は非常に気持ち悪い。

でも、出てくることはなく、腹の奥へ引っ込んでいった。

そして、珍しいことに、一向に本へ意識が向かない。

「―の読みを答えてください。え~と、澤本さん」

ゆるっとした雰囲気の国語の教師がまさかの私を指名した。

黒板には「過去との邂逅」と書いてある。

「かことのかいこう」

「はい正解。次は~」

危ない、気づけて良かった。

こうして一日は過ぎていった。


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