表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕らの時間は指輪と廻る  作者: 高山 和義
第2章 「時間軸」 ~澤本和葉の場合~ 
4/15

その1

「『グー』でしたー」

ああ、今日も負けた。

ちっ、とテレビに向かって悪態をつく。

朝のニュースのじゃんけんコーナーに最近はまっていて、朝起きてから登校するまで二回、日替わりでいろんな人が出てきて、ジャンケンポン。

昔はこんなコーナーがあっても画面に向かってホイして終わりだったろうけど、今はリモコンのボタンを押して実際に勝負できる。勝った回数に応じてポイントが貯まるなど、現代技術とはすごいものだ。

だけどここ三日くらい負け続けで、ちょっと悔しい。

おっと、もう家を出なければならない時間だ。

「いってきまー」

っと、今日は誰もいないんだった。

両親は共働きで、父親は出張、母親は「今日は早いから」とさっさと出かけて行ってしまった。

昔からなので慣れてはいるものの、たまに誰もいない家に向かって声をかけてしまうこともある。

玄関の施錠を確認し、今度は自転車の鍵を外してまたがる。

高校までは自転車通学だ。別に電車でもよかったのだけど、わざわざ二・三駅のために電車に乗るなんて、そっちの方が面倒に思えたのだ。

雨の日は二十分くらい歩くことになるけど、それはそれだ。天気が酷いときには電車を使うからいい。

鞄を前籠に突っ込み、ゆっくりと加速をつけて走り出す。

ここ二日間くらいは荒れ模様で、電車で通学から自転車に乗ったのはちょっと久しぶりだった。

「ひぇっ」

思わず変な声が出てしまった。

普通にハズかった。

そして、お尻がちょっと冷たい。

ああ、雨水がサドルに染み込んでいるのか。ちゃんと面倒くさがらずにカバーをかければよかった。

ちょっとサドルからお尻を浮かすようにして自転車を漕いでいく。

電車通学組とは違って、特に知り合いに会うこともなく、学校に到着。

空気も抜けてきているのか、いつもより余計に足が疲れた。

駐輪場の空いているところに適当に突っ込んで、校舎に向かう。

校舎の外では、早くも文化祭に向けて着々と準備が進んでいた。

各ブースに飾るのであろうベニヤ板を使った看板、中には四枚組み合わせて柱のようにしているのもある。あれは校門に置くやつだろうか?

ちょっと苦手な溶剤の臭いに顔をしかめつつも、上履きに履き替え、教室に向かう。

教室に入ると、川嶋が絡んできた。

「おはよーかずはぁ。ねぇ聞いてよぉ、あたしなぜか大道具係にされちゃったよー。やだースプレー塗料とか板切るのとかー」

「あ、いつのまに担当決まってたんだ」

昨日のホームルームでの話し合いは完全にスル―していたから、そもそも自分の役割を覚えていない。本読むほうが楽しい。

「というか、今朝『部活が被るからムリになった~』って交代させされちゃってさぁ。もうやだ帰りたい」

「まあまあ、誰かがやらないと終わらないんだし」

「だよねぇ。というか、かずはは自分の担当覚えてるの?」

「……なんだっけ?」

「おいおい……。かずはは当日の受付だろー。時間は級長に確認しとけぃ」

正直文化祭は乗り気ではなかった。言い訳ではないけれど、クラス自体もそんなに乗り気な雰囲気ではない。

「おっと、ティーチャーのお出ましだ」

担任が教室に入ってきて、朝のホームルームがはじまった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ