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僕らの時間は指輪と廻る  作者: 高山 和義
第3章 「時間軸」 ~豊嶋義男の場合~
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その3

謎は結局謎のままで、そのまま昼休みになってしまった。

弁当を広げ、周りの友人と一緒に昼食をとる。

元々よくしゃべる面子ではないだけに、騒がしい昼時の教室でも静かだ。別に話す話題がないわけではない。ただ面倒くさいだけだ。

でも今日は金曜日、今週も終盤に近く、週末はなにするといった話題がぼちぼち聞こえた。

「なー、週末どーする?」

「よしおはどーすんの?」

「久々にカラオケでも行こうかな~、って言ったら行く?」

「おーいいじゃん。いこいこ。」

俺も俺もとなんだかんだと五人くらい集まり、じゃあ明日の十一時からいつもの店でなーと話がまとまった。

―そういや今放送してるアニメのオープニングがお気に入りなんだよなー

―まじか、CD持ってるぞ、貸そうか?

―お、ぜひとも!

カラオケから四方八方に話題が広がって話し込んでいるうちに、五限の予鈴が鳴った。

「次は面倒くさい日本史か~、もう寝るかぁ」

「安定の爆睡か~、よくそれで赤点取らないよな」

「もともと得意なだけだよ」

単純に授業が怠いというのもあったが、少し考える時間がほしかったのもある。

教師が教室に入ってきて、すぐに授業が始まる。

昼すぎの最初の授業はいつも眠く、怠い。それはクラスの誰でも言えることで、教室の雰囲気はいくらか弛緩しており、額が机につきそうになっている人も何人か見受けられた。

チョークの音に気づき、ちらっと黒板を見る。

見出しの内容を確認してから、視線を目の前のノートに戻す。


さっきの事と関係の無いことだが、ふと昔のことを思い出したのだ。

それはまだ自分が、幼馴染たちが小学生だった頃。

俺と、啓輝と、和葉と、―えっと、女の子

(夏美だ)

あれから何年経ったのだろう。

自分の人生の中での七年間なんて、ほんの僅かすぎないのだろうけれど、えらく遠い昔の事のように思えた。

もう、そういう事があった、くらいにしか覚えてなくて、当時どういった出来事があったかなんてそこまで細かくは憶えていない。

自分の中には今しかなくて、昔の思い出を細部まで憶えていることなんてあまりない。

とはいえ、なぜ今そんな昔の事―亡くなった幼馴染―の事を思い出すのだろうか。

思い出すきっかけなど無かったはずだが……。

(よくわからんなぁ)

さっきから何度目かもわからない「よくわからない」が、また出てくる。

そう、よくわからないのだ。

無視して大丈夫そうな事だったら、多分今頃には忘れて爆睡している頃だろう。

でも、現にそうなっていない。

そういう時は大抵、何か大事なことを忘れているのだ。

いつもで言えば、提出物とか、大事な予定とか、誰かに訊いておかなければならない事とか。

とはいえ、その辺りにはまったく心当たりが無かった。

(ま、いっか)

これ以上考えても出てこなさそうなので、ひとまず諦めることにした。

(大事な事なら、そのうち思い出すさ)

待っていたかように睡魔が訪れ、そのまま意識が途切れた。



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